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夜行高速バス事故:低賃金を補う時間外労働が温床

2014年03月29日 | 格差社会
 ◆ 夜行高速バス事故 なぜ繰り返すのか
   慢性的な要員不足


 3月3日午前5時10分頃、富山県小矢部(おやべ)市の北陸自動車道上り線の小矢部川サービスエリア(SA)で、仙台発加賀温泉(石川県)行きの夜行高速バスが駐車中の大型トラック2台と相次いで衝突した。
 この事故で、バスの運転士(37歳)と乗客の高校教諭(48歳)の2人が死亡した。他にバスの乗客とトラックの運転手ら計24人が病院に搬送される大惨事だ。
 夜行バスは、SAに入る直前からガードレールに接触する異常な状態でSAに進入したとみられる。
 29人乗り3列シート最前列左側に着席していた乗客が運転士の異常に気づき、シートベルトを外して「起きろ、起きろ」と立ち上がって声をかけたが、バスが衝突した衝撃で乗客は車外に放り出され死亡した。
 事故を起こした夜行高速バスは、宮城交通と北陸鉄道が共同運行している「エトワール号」(営業距離537キロ)。仙台駅を21時45分に出発し、金沢駅(6時15分)などを経由して加賀温泉駅(石川県)に7時20分に到着する。
 ◆ 新制度導入
 夜行高速バスの運行形態は、2012年の関越自動車道ツアーバス事故を機に「旅行会社に安全確保責任」を課した高速バスの新制度が導入された。
 ①過去1年に重大な法令違反事故や事故がないこと、
 ②3年以上のバス事業の経験があることなどの条件で、
 停留所の設置やバス購入等により3分の2以上の会社が事業撤退した。
 さらに乗り合いバス会社は、運転士の点呼や車両の整備といった安全管理を適切に実施しているか、年1回調査をしなくてはならない。
 乗務距離の上限は、昼間の便で「実車距離500キロまで」「運転時間9時間以内」、夜間の便では「実車距離400キロまで」「運転時間9時間以内」「連続乗務は4夜まで(ただし400キロ超は連続2夜まで)」
 これらの条件を上回る運行と運転士を2人以上配置することが義務付けられた。
 当日の運行会社は宮城交通。運転士2名が配置され、山形・北陸自動車道などSAの4カ所で運転交代をする。小矢部川SAは最後の運転交代場所だった。
 交代する運転士は、運転席の横にはいない。トイレに降りる階段途中のドアを開けた床下に仮眠室がある。事故当時も交代運転士は床下仮眠室で待機しており、交代要員なので運転操作のフォローはできない。
 ◆ 時間外労働
 事故を起こした運転士は、睡眠時無呼吸症候群の簡易検査で「要経過観察」と診断されていた。警察は事故時に、「居眠り運転」か「体調の急変」などの可能性を調べているという。
 また、事故当日まで11日間連続で勤務していたことも明らかにした。長時間労働による過労も考えられる。
 厚労省が1月にまとめた「業種別の違反割合」で、違法な時間外労働のトップにあるのが「運輸交通業」だ。
 その根底に慢性的要員不足がある。
 体調不良でも休暇取得もままならず、低賃金を補う時間外労働が温床となっている。時間外労働が運輸交通業の宿命ではすまされない。
 (宮川敏一)

『週刊新社会』(2014/3/25)

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