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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

豊かな国の子どもたちの孤独(2)

2010年08月09日 | 人権
 子どもの権利委員会が勧告した
 ◆ 豊かな国の子どもたちの孤独(2)
DCl(子どもの権利のための国連NGO)日本支部に聞く

 ◆ 国連の審査と勧告-最終所見の特徴

 関係性が貧困化した理由として国連が指摘し、懸念を示した主な項目は以下の通りです。決して家庭の責任だけに原因を求めているのではないことに注目してください。
 ● 貧困問題
 社会支出がOECD諸国の平均より低く人口の15%が貧困であること。子どもの福祉および発達を保障する予算配分が明らかになっていない。
 民営化政策や労働規制緩和給与力ツト、男女間賃金格差、子どもの保育・教育にかんする私費負担の増加をもたらし、とくに母親家庭に影響を与えでいる。
 ● 財界支配
 子どもとその家庭に民間企業巨大な影響を与えている親の労働条件、資本による教育、保育支配、政府諮問委員会等への財界の支配とこれを通しての子ども支配)。
 ● 家庭の崩壊
 学校における競争、仕事と家庭の非両立性、片親家庭を直撃している貧困。
 ● 教育制度の崩壊
 競争する子どもの数が減少しているにもかかわらず、過度な競争への不満が増加し続けている。また高度に競争主義的な学校環境がいじめ、精神的障害、不登校・登校拒否、中退、自殺に寄与している。
 ● 児童福祉の崩壌
 救済手段としての児童相談所が機能していない。

 同時に懸念を解消するためとして主に以下のような勧告が日本政府に出されました。

 ● 子どもの権利の優先性を反映した戦路的な予算線を決定すること。
 ● 貧困削減戦略の策定を含めて、子どもの貧困を根絶するために適切な資源を配分すること。
 ● 過度に競争的な環境が生み出す否定的な結果を避けることを目的として、学校制度および学力に関する仕組みを再検討すること。
 ● 児童相談制度の抜本的な見直し
 ● 子どもおよび思春期にある子どもの満足度の問題に対応するための実効的な措置を取ること。
 ● 学校および児童養護施設、家庭、地域、裁判所、行政組織、政策策定過程を含むすべての場面で、子どもに影響を与えるすべての事柄について、子どもがその意見を十分に表明する権利を促進するための措置を強化すること。
(国運子どもの権利委貝会第3回政府報告審査に基づく最終所見から)

 ◆ 「ねえねえ」「なあに?」
 国連が指摘した貧困、企業社会、家庭と教育の崩壊、児重福祉の崩壊は、社会全体が*新自由主義に基づいて再編されていくなかで起こっている弊害にほかなりません。
 私たちは報告書を「豊かな社会日本における子ども期の喪失」(97年)「豊かな社会日本における子ども期の剥奪」(03年)、そして今回は「新自由主義社会における子ども期の剥奪」と名付けましたが、タイトルの変化はこの10数年におきた子どもの実態の変化を集中的に表現しています。
 新自由主義下における子どもの発達のゆがみの拡大と深化は、受容的で応答的な人間関係を子どもが奪われていることに起因しています。
 身近なおとなに「ねえ、ねえ」と呼びかけ(意見表明権)、無条件でおとなに「なあに?」と応答してもらう(誠実な応答義務)とき、人には自分らしく生きる精神的なエネルギーの根源である「自己肯定感」と他者のことを考えられる道徳の根源である「共感能力」を育むことができます。
 いいかえれば、ありのままの自分をそのままで認めてもらえる受容的な人間関係を通してはじめて、子どもは
  ①1人の人間としてみずからの尊厳を案感し
  ②今の自分を豊かに生き
  ③自己肯定感と共感能力を体得するのです。
 意見表明権とは「子どもがみずから受容的な人間関係を形成する権利」です。この力を行使することで自律的で道徳的なおとなへと成長・発達することが可能になります。
 国連で発表した子どもたちは、他者と関係性が結べない苦しさを伝える一方で、「わかってもらえるおとながいたことで成長できた」「話を聞いて。信頼してほしい」とも述べました。
 子どもたちはあきらめてもいないし、逃げてもいません。「人間的なつながり」があってこそ、1人のおとなとして成長できるのだ、という彼らのメッセージは、子どもの権利条約の本質であり、教育の原点なのです。
 (完)

『女性のひろば』(2010年9月号)

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