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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

法規類の最終的な解釈(決定)権は、担当行政部局ではなく、裁判所にある

2020年02月27日 | 平和憲法
 ◆ <家永訴訟に学ぶ>
   「検事長の定年延長をめぐる法の解釈変更は『職権濫用』で違法」
   とする最高裁判決があります!

   皆さま     高嶋伸欣です


 新型肺炎騒ぎにかこつけて幾つもの政治的問題がうやむやにされそうですが、東京高検検事長の強引な定年延長問題の議論を、歯がゆい思いで見つめています。
 安倍首相や森法務大臣が「解釈を変えた」と答弁した件について、野党は「文書記録にしていない」「日時が合わない」などとどちらかと言えば些末なことばかり突ついているように見えます。
 本来、法規類の解釈の変更は合理的な根拠と公正な手続きによらなければならず、時の政治状況などで勝手に、気ままに変更してよいものではないというのが法治主義の大原則のはずです。
 その大原則を根拠に、家永教科書裁判では検定の違法性を主張し続けていました。
 そうしたところ、第3次訴訟の東京高裁(川上裁判長)判決(1993年10月20日)と最高裁第3小法廷(大野裁判長)判決(1997年8月29日)で、そのような恣意的便宜的な法規の解釈や運用があればそれは職権乱用で違法であるとの判断が示されているのです。
 その結果、国(文部省・当時)が法的拘束力があると主張していた「学習指導要領」に基づく検定において、恣意的便宜的な法規(学習指導要領等)の解釈と運用職権濫用があり、それは違法であると判断され、高裁では8件の争点の内3件、最高裁では4件に違法な行政行為(検定)があったとして、40万円の賠償金支払いが命じられ、判決が確定しています。
 通常は、法規類の解釈と運用の第1義的な権限は担当行政部局にあるとされていますが、関係者などの間で解釈と運用をめぐって争いが生じた場合、法規類の最終的な解釈(決定)権は裁判所にあるというのが、三権分立の大原則であると、東京高裁の川上裁判長は確認しています。
 その上で、さらに学習指導要領やそれに準拠している検定規則・検定基準実施細則等についても、「法規の解釈に準じて厳格になされるべきで恣意的、便宜的な運用は許されない」と、具体的に示した判断基準をに基づいて、争点8件中3件に恣意的、便宜的な解釈と運用があるとの判決を出したのです(添付判決文参照)。
 これに対して、執筆者に検定意見を強制できるという主張の論拠としていた学習指導要領の法的拘束力を逆手に使われてしまった形の文部省は、全く反論できず、最高裁への上告もできませんでした。その時点で争点8件の内の3件で家永さんの勝訴は確定していたことになります。
 最高裁では、家永さんが残りの5件についても違法検定であることを認めるようにと主張する上告審になり、第3小法廷でも高裁と同様の判断基準(添付新聞記事の右下B参照)によって、さらにもう1件の検定において違法が認められたのでした。
 こうして、家永教科書裁判は、最終の第3次訴訟の高裁と最高裁の判決で国側の違法行為が確認され、賠償金40万円が国庫から支払われ“勝訴”で終わったのです。
 けれども、文部省は「検定は検閲に当たり違憲だ」という家永さんの主張は認められなかったのであるから国側の勝訴で、「最終的には原告が敗訴している」などと、今も主張し続けています(寺脇研著『危ない「道徳教科書」』宝島社、2018年、212p)。
 そうした主張に影響されてか、家永教科書裁判で国側が賠償金の支払いを命じられて終わったという事実も、一過性の報道で忘れられ、さらには国側の行為を違法と認定した司法の論理のことなど、全く忘れ去られている観があります。
 けれども、この司法の論理を判決に導きだしたことは、家永教科書裁判が教育分野以外でも民主主義強化に結び付く成果を挙げたことを実証するものだと、私は認識しています。
 事ある毎に、このことを主張し、紹介してきました。

 森法務大臣や内閣法制局や人事院の幹部などどれだけこの判決を承知しているでしょうか。文科省内はどうでしょうか。
 そして野党の皆さんも。野党の議員の方々にも家永教科書裁判のレガシーに今一度の関心を向けていただいたいです。
 以上、今回の検事長の定年延長問題についても気になりながら、目下抱えている数件の裁判の対応に追われて、傍観していましたが、やはり声を挙げるべきと考え、長いメールを打つことになった次第です。
 家永教科書裁判に関わった多くの方々、とりわけ弁護団に参加されていた法律家の皆さんに意見を伺うことなく、高嶋の私見として表明しているものです。
 誤り等がありましたら、ご指摘をお願いいたします。

   ※転送・拡散は自由です


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