パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 袴田冤罪事件結審で、姉ひで子さんが最終意見陳述

2024年06月24日 | 平和憲法

  = 袴田巖さんの再審公判が結審 =
 ☆ 検察官は無実の巖さんに死刑を求刑!

 二〇二四年五月二二日、姉ひで子さんは最終弁論終了後の意見陳述で次のように読み上げた。全文を掲載する。前半は巖さんの手紙の引用後半はひで子さんの言葉である。

 ひとたび狙われて、投獄されれば、肉体深く食い込む虐待、あの虚偽虚構の覆われた部屋、あの果てしなく底知れぬ眩量(めまい)、最早正義はない、立ち上がって眩量む。火花、壁に飛び散る赤い血、昔の悲鳴のように、びくりとし、立ち上がっても投獄されれば最早帰れない。十三夜のお月さんが、南東に上った七時の獄である。
 息子よ、お前はまだ小さい、分かってくれるか、チャンの気持ちを、勿論分かりはしないだろう、分からないと知りつつ、声の限りに叫びたい衝動に駆られてならない。そして、胸いっぱいになった真の怒りをぶちまけたい。
 チャンが、悪い警察官に狙われて、逮捕された昭和四一年八月一八日、その時刻は夜明けであった。お前は、お婆さんに見守られて眠っていたはずだ。
 今朝方、母さんの夢を見ました。元気でした。夢のように元気でおられたら嬉しいですが、お母さん、遠からず真実を立証して帰りますからね。

 弟の手紙です。そして四七年七か月、投獄されておりました。
 獄中にいる時は、辛いとか哀しいとか一切口にしませんでした。
 釈放されて十年経ちますが、いまだ拘禁症の後遺症と言いますか、妄想の世界に居り、特に男性への警戒心が強く、男性の訪問には動揺します。玄関の鍵、小窓の鍵など知らないうちに掛けてあります。就寝時には電気をつけたままでないと寝られません。
 釈放後、多少回復しているとは思いますが、心は癒えておりません
 私も一時期、夜も眠れなかった時がありました。夜中に目が覚めて巖のことばかり考えて眠れないので、翌日の仕事に差し支えがあるため、お酒を飲むようになり、アルコール依存症のようになりました。今はと言うより随分前に回復しており
ます。
 今日の最終意見陳述の機会をお与えくださいまして、ありがとうございます。長き裁判で裁判長様はじめ、皆様には大変お世話になりました。
 五八年闘ってまいりました。私も九一才でございます。巌は八八才でございます。余命幾ばくもない人生かと思いますが、弟巖を人間らしく過ごさせてくださいますよう、お願い申し上げます。

 本来この法廷にいるはずの巌さんの姿は、無い。釈放から一〇年以上経過した今でも、四八年間ただひたすらに無実を叫び続けた巌さんの心は未だ私たちの世界には、無い
 昨年一〇月二七日から始まった再審公判は、すべて終了した。検察官はすでに語り尽くされた主張を繰り返してきただけであり、彼らの最大の根拠である一年二か月後に味噌タンクから出てきた五点の衣類の付着血痕の赤みについては、ただの可能性しか主張できなかった。
 これで袴田さんに死刑求刑を行ったのである。その瞬間、法廷内がどよめき、同時に弁護団席からバンバンバーンと激しく机ををたたく音がした。直ちに裁判長は休廷を宣言。傍聴人は外に出された。

 事件発生時この世に存在すらしていない検察官が改めて死刑を求めたのである。しかしその声は弱々しかった。
 弁論で弁護団は改めて無罪を主張した。そして法廷で以下のように訴えた。

 巌さんは10年前に釈放されました。しかし、心は全く閉ざされたままの状態なのです。いつ死刑になるかもしれない恐怖に固く覆われているのです。恐怖を打ち消すだけの生活をしていると言ってもよいのです。
 誤った裁判は、取り返しがつかないということです。誤った死刑判決は一層重大です。死刑が執行されなくても、巌さんのように、誤って死刑囚にされること自体が、国家の重大な犯罪行為です。実際、死刑判決が、巌さんの五八年の人生を完全に奪ってしまったのです。
 検察官は、裁判が間違っていたことも、自分たちが隠し持っている証拠によって、間違いが明らかになることも知っていたということです。(以下略す)

 ちょうど五六年前、一九六八年五月三〇日、巌さんは同じ静岡地裁の法廷で、次のように最終意見陳述を行っている。

 警察はさも私がやったようにし、又公判においても不当に事実を無視して無実の者を罪にけ落とし偽りにみちています。社会に白を黒と言いくるめようとしました。これらの不当が許されてよいでしょうか。これがとおるならば世の中は真っ暗であります。権威ある法廷で天地に誓って言います。私はこの事件の真犯人では絶対にありません

 今回再び死刑求刑を行った検察官に、そして判決を下す裁判官にこの言葉を突きつけてやりたい。
 判決公判は九月二六日(木)午後2時から、ぜひ静岡地裁に駆けつけていただきたい。

(袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会事務局長 山崎俊樹)

『月刊救援 第662号』(2024年6月10日)


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