《リベルテ(東京・教育の自由裁判をすすめる会ニュース)から》
◆ 「日の丸・君が代」ILO/ユネスコ勧告実施市民会議の活動報告
吉野典子
◆ 2・28文科省・外務省との対話集会(於参議院議員会館)
市民会議は「セアート勧告の日本語訳を公表し、10・23通達の廃止を東京都に勧告すること」を求めて、文科省との対話集会を繰り返している。しかし、1年ぶりとなる今回も、文科省は日本語訳を拒んだ。
「政府の主張と異なるセアートの認識や勧告だけが広がっていくおそれがあるから」という理由づけは情けない。
「政府の主張も併せて公表すれば良い。我々がセアートに送った文書を提供するから、経過が分かるようにすべて公表してはどうか」と提案したが、どちらの主張に理があるか国民に知られてしまうのを、文科省は最も恐れているはずだ。
外務省の回答も酷い。自由権規約委員会第7回日本審査の総括所見が公表されてから1年3ヶ月経っても日本語訳は完成せず、完成時期を訊いても「なるべく早く」としか答えない。
その上、第6回総括所見の時は「関係省庁、地方自治体等に和文仮訳も付して配布した上で、これらの機関が下部機関も含む関係者に広く周知するとともに、人権の一層の保護・促進に向けた施策を実施するに当たって参考として活用するよう要請」していたのに、今回の第7回総括所見は配布する予定が無いと言う。
翻訳の遅れも含めてあまりにも不自然だ。国旗国歌強制問題が初めて正面から取り上げられたこととの関連が疑われる。
参加した3人の国会議員が、両省に強く是正を求めたことは心強かった。たとえゼロ回答であっても「だから、さらに踏み込んだ勧告が必要だ」と説得する材料になるので、早速フオローアップ・レポートをセアートに送った。
◆ ブックレット出版記念4・7集会
「国際人権から考える『日の丸・君が代』の強制」出版記念の集会に、100人近い方々が参加してくださった。皆様のご協力に心から感謝している。
文芸評論家の斎藤美奈子さんは「それってどうなの主義で行こう!2024」と題して、芸能界のハラスメント、無自覚な植民地主義が生み出すアイヌ民族差別、問題だらけの大阪万博を小気味よく斬っていく。
講演の最後に推奨されたあ(呆れる)い(怒りを表明する)う(捻る「うぅむ」)え(えっ?聞き返す)お(オウム返しをする)を、軽やかに実践していこう。
佐々木亮さん(聖心女子大)は講演「教育専門職の権利・責務と思想・良心・表現の自由」で、「囚われの聴衆としての児童生徒には、対抗言論に接する機会が重要で、彼らの思想良心の自由を擁護することは教育専門職の責務の一部。職務命令の必要性・合理性を認めた判例は、人権制約に関する国際規範から外れている」と論じた。
これは、東京「君が代」裁判で裁判所が未だ応答していない論点だ。紙幅が尽きて紹介できないが、五次訴訟原告田中聡史さんのアピール、ブックレット版元の同時代社川上隆代表の発言等々、中身の濃い話がギュッと詰まった3時間だった。
『リベルテ(東京・教育の自由裁判をすすめる会ニュース) 74号』(2024年4月24日)