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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 2025年度使用開始の中学校公民教科書は、軒並み軍拡肯定で検定合格

2024年05月10日 | 暴走する都教委と闘う仲間たち

教育出版公民教科書に掲載の、"中国の脅威"を強調する"逆向き地図"

  =月刊『紙の爆弾』から=
 ★ 2025年度中学教科書 防衛省の広報誌化
  ~改憲派2社以外も〝軍拡肯定〟

取材・文責 永野厚男

 文部科学省が三月二十二日に公表した、二〇二五年度使用開始の中学校教科書の検定結果で社会科公民分野教科書は、東京書籍(東書)・教育出版(教出)・帝国書院・日本文教出版と、改憲政治団体のメンバーら執筆の育鵬社・自由社の計六社が合格した。
 公民教科書で懸念するのは、四月の日米首脳会談で合意した”自衛隊と米軍の指揮・統制の向上、二四年度中の統合作戦司令部創設”等を”是”と考える将来の有権者を大量生産しないかだ。
 一方、公民以外で注目すべきは、初申請した一八年度検定から四回不合格だった保守系政治評論家・竹田恒泰(つねやす)氏執筆の令和書籍・歴史分野教科書二点だ。同氏は文科省の検定調査審議会の審査終了前、検定申請に関し情報漏洩して前代未聞の”合否決定未了”となったが、同省は「本人に二回聴取した結果、審議会の審議等に重大な影響を及ぼしたとは認められない」とし、四月十九日に合格を決定してしまった。
 歴史分野で改憲派教科書が増えた今、公民教科書の”防衛”と称する大軍拡で、政府・保守政党の政策に偏重した記述=首相官邸・防衛省の広報誌化が、改憲派の二社以外にも目立つ。紙幅の関係で東書(占有率一位)・教出(二位)に絞り、記述を分析する。


 ★ 東書の“インド太平洋に軍拡”正当化

 東書は「第2章 個人の尊重と日本国憲法」の「平和主義の意義と日本の役割」の冒頭、「日本は太平洋戦争で多くの国々、中でもアジア諸国の人々に対して多大な損害を与え、日本国民も大きな被害を受けた」(以下、引用は一部抜粋・要約)と記述後、憲法第九条の平和主義・戦力不保持・交戦権否認を書き、「国を防衛するために自衛隊を持っている。自衛隊が憲法第9条に反しないのかという問題は、長く議論されてきた」との違憲論らしき文言(具体的内容は記述なし)に触れるも、その後は政府の合憲論を続けた。
 集団的自衛権については、一四年の”行使容認”の閣議決定と一五年の”安保法制”を記述後、「しかし、憲法第9条で認められる自衛の範囲をこえているという反対の意見もあります」と短く記述。
 一方「沖縄と基地」では、①一九九六年の住民投票で縮小賛成が多数を占めた②辺野古の新基地建設工事に反対する住民も多くいる③人々は現在も米軍の訓練中の事故等の危険の中で生活している、の三点を明記。ただ、九五年の沖縄の米兵三名による少女強姦事件等への言及はない。
 この後、「第5章地球社会と私たち」の「平和な世界に向けて」の「軍縮」の項で「核兵器禁止条約」に触れたものの、次の「世界と協力する日本」の項では、「現在の国際社会の中で、日米安全保障条約に基づく日本と米国の同盟は、日米両国だけでなく、アジアを始めとする世界の安定にも影響します。また日本は2021年から、『自由で開かれたインド太平洋』という政策を掲げ、関係国との国際協調の取組みを進めています」と、政府の軍拡政策を受け売り(反対意見は記述なし)。
 ただしこの後、「経済分野で国際的に活動できる仕組み」の下りでは「東アジアや東南アジアの国々との関係を深める上で、第二次世界大戦で大きな被害とたえがたい苦しみを与えたことを忘れてはなりません」と明記。さらに「『沖縄復帰50年』と、日本と世界の平和」のコラムでは、以下二つの平和教育に役立つ記述をしている。
 ①糸満市の「平和の礎(いしじ)」の写真とともに、「沖縄は太平洋戦争末期の大規模な地上戦で軍人ばかりでなく多くの民間人が犠牲となった。20万人以上の人々の氏名が、国籍や軍人・民間人の区別なく刻まれている。基地を巡っては騒音や事故等の問題がある」等記述。
 ②「沖縄はベトナム戦争の際には米軍の重要な攻撃拠点としても使用された」という説明書きで、「沖縄からベトナムに向け飛び立つ米国の爆撃機、69年」の写真を掲載。その横に、「安全保障上重要な位置にある沖縄に基地があることは必要である、と国は説明している。一方、沖縄に基地が集中していることは、日本全体で負担するものの多くを沖縄が担っているとも考えられる。/日本と世界の平和や安全を確保していくのに伴う負担を誰がどのように負うのか、全ての人が納得する合意に至ることは極めて難しいが、共に生きる社会の実現のために、話し合いを続けていく必要がある」と記述。
 ①は生徒が「沖縄戦で民間人の犠牲者が多い」のは、「日本軍による住民虐殺事件や集団自決強要のため」という史実を知り、近年の陸上自衛隊員による五ノ井里奈さんへの強制狸褻事件等とも関連付け、「自衛隊は国家体制を守る軍隊であり、一般市民を守らない」と気付くことは可能だ。②も「日米安保条約は米国の起こす戦争に加担する」等、真実を知ることができよう。


 ★ 教出は戦闘下の自衛隊派兵隠蔽

 自衛隊・日米安保条約について、「第2章個人を尊重する日本国憲法」の「第3節 私たちと平和主義」において、計六ページにわたり二つの柱プラスアルファで詳述している教出は、防衛省の広報誌化がひどい。
 一つ目の柱「憲法に定められた平和主義」の一項目「平和主義を掲げる憲法」では、平和的生存権に当たる全文と九条を定めている理由を、「侵略戦争への深く厳しい反省から」と明記。「可能な限り武力行使を避け外交交渉など平和的手段により、国際社会の紛争の解決を目ざす平和主義」を「多くの国が支持しているが、日本国憲法は第9条にみられるように、特に戦力の保持と行使に厳しい制約を課している。徹底した平和主義は、近代憲法である日本国憲法にとって、とても重要な考え方」と記述している(側注等で軍隊廃止のコスタリカ憲法の条文も紹介)。
 しかし二項目の「自衛隊とその役割」に進むと、「他方で、主に国の防衛と、日本も含めた国際社会の安全を保つために、自衛隊が設置されている」と書き出し、自衛隊合憲論と違憲論を併記してはいるが、分量は前者が後者の倍。この前後を含む次の四つの記述等からも、生徒を自衛隊合憲論や軍事力増強肯定に誘導する危険性が高い。
 ①直前に「自衛隊は国連の平和維持活動に派遣されるようになった。また国内外の災害時の支援活動においても活躍している」と記述し、「自衛隊は役立つ」と印象付け。
 自衛隊海外派兵は二つ目の柱「日本の安全保障と平和主義のこれから」でも、「各国の平和維持や復興支援のため、国連の活動に協力している。国外の戦争や紛争時には、米・英軍などの平和維持活動を後方で支援するため、政府が『非戦闘地域」とする現地に派遣されることもあった」と記述後、”安倍晋三氏流の積極的平和主義”的賛成意見と、「本来の目的を超えて戦闘に巻き込まれる可能性もあるのではないかという不安の声」とを併記はしている。
 しかし一六年七月、「戦闘」状態だと明記していた『日報』が存在していたのに、いったんは「破棄した」と隠蔽した上に、当時の稲田朋美防衛大臣が翌年二月の衆院予算委員会で「法的な意味での戦闘行為ではない。武力衝突だ」と強弁した、南スーダンPKO派兵が「殺し殺される」寸前だった真実を、生徒から隠蔽しごまかしている。
 また「自衛隊の海外での主な活動」と題し、九二年のカンボジア以降十五の派兵先を示した世界地図は、南スーダンについて”駆け付け警護”を隠蔽し、「司令部要員派遣、道路補修」とだけ記載。戦闘地域でないと教え込む。
 ②「55年(自衛隊発足直後)の1300億円から22年の5兆3700億円まで増額した防衛関係費の推移のグラフ」に、「防衛力の水準は、周辺にどの程度の脅威が存在するかによっても、決められるべきという意見もある」と、他国の”脅威”に応じ軍拡するのが当然という説明書き。これは「必要最小限の基盤的な防衛力を保有」というハト派・三木武夫首相当時の考え方を転換させてきた、近年の政府の「動的防衛力」と称する軍拡政策の受け売りだ。
 ③②のグラフの上に、「20年・英国際戦略研究所の、米・中・サウジアラビア・印・英・仏より少ない日本の防衛費のグラフ」も載せ、日本の軍事費があまり多くないように装う。

 ★ 1 少女強姦事件や辺野古に触れず「米軍人と住民の交流」を掲載

 二つ目の柱「日本の安全保障と平和主義のこれから」は、一項目の「日米安全保障の役割と影響」において、「米国が日本防衛のために共同し対処する義務を負い、日本は米軍に基地を提供する」とお決まりの説明。そして「日本の防衛の強化と東アジアの安定が図られる一方で、基地の存在は、周辺住民の暮らしに様々な影響を及ぼしている」と、一見両論併記。
 しかしこの前後は、①「住宅地や小学校の上空での低空飛行や、落下物の危険性を指摘する声が多くある」と説明書きした「体育の授業時、学校の上空を飛ぶ米軍の軍用機、17年宜野湾市」の写真②オスプレイと思われるヘリが約十機、整然と駐機している「住宅街に隣接する普天間飛行場、22年宜野湾市」の写真を載せるだけ。
 一方で、③「各地の米軍基地周辺で、在日米軍関係者や家族と基地周辺の住民が、スポーツや文化等を通じ交流」と説明書きし、佐世保基地で笑顔の米軍人が日本の子どもたちと会食する写真を掲載。
 これでは、沖縄以外の全国の中学生に、米軍基地・軍隊による被害・犠牲の深刻さが実感を持ってしっかりと伝わるか疑問だ。①②で言う「危険性」を本当に伝えたいなら、③の偽善的な写真ではなく、前記強姦事件や〇四年の沖縄国際大学への米軍用ヘリ墜落事件等の発生件数や、抗議大集会を報じる地元紙の写真等を載せるべきだ。
 また、県民投票で反対票が七割超にもかかわらず政府・防衛省が辺野古新基地建設を強行している事案を一行も記述しない。これでは、前後にせっかく記述している「小指の痛みは全身の痛み」という訴え(復帰前の六九年、衆院予算委員会・公聴会で沖縄祖国復帰協議会会長)の重みが薄まる。


 ★ 2 軍拡論者好みの“逆向き地図”を使い「南西諸島等軍拡正当化」に誘導

 ところで先に「プラスアルファ」としたのは、「なぜ、沖縄に米軍基地が集中しているのだろう」と大書きしつつ、見開き三分の一近くもの分量で、”集団的自衛権行使容認”賛成に誘導しているからだ。
 その手口は、「ユーラシア大陸から日本列島を眺めてみると、日本の南西諸島は中国大陸と太平洋に挟まれていて、不安定化する東アジア地域においては、重要な地域となっている」と三行弱説明書きし、「南東を上にして日本海周辺を描いた地図」を掲載。この種の地図は改憲論者が”中国の脅威”を強調する際に用いるものでもある。
 その横に、「現在、日本の平和主義は、相次ぐ地域紛争や国際的なテロ活動の多発等により、極めて不安定な状況。特に東アジア地域においては、せめぎ合う米中、北朝鮮の動向、ロシアの極東・シベリア開発の動き、そして今もなお歴史的な課題を抱える日露、韓中との関係のもとで、日本の平和主義の考え方やあり方に注目が集まっている。その一つが集団的自衛権行使についてだ」と記述。続けて一四年”集団的自衛権行使容認”の閣議決定と一五年”安保法制”成立も明記し、ここまでで八行強分に膨れ上がっている。
 一応、「これに対しては、平和的生存権や憲法第9条の意義を重視する立場などから、批判の声もあがっています」と一行書くものの、集団的自衛権行使の危険性の中身に触れない薄っぺらな記述。「3+8=11行 vs 1行」では、”軍拡が是”の主張だけが、生徒に刷り込まれる危険性が大だ。
 教出はこれらとは別の「第6章 国際社会に生きる私たち」の中の「なぜ、外交の役割は重要なのだろう」の項でも、岸田文雄首相の二二年の国連総会演説の写真とともに、「自衛に必要最小限の防衛力の保持、米国などとの同盟関係の維持」を繰り返している。
 こうした教科書の右傾化の中、希望はむしろ生徒たちの側にある。
 奈良市役所が二三年二月、高校生等の住所・生年月日等、個人情報の名簿を自衛隊に提供し、自衛隊が募集案内を自宅に郵送した事案で、十八歳の高校生が「プライバシー権を定めた憲法十三条等に違反」と、奈良地裁に国家賠償請求訴訟を起こした。
 こういう勇気ある若者が今後も出てくるよう、今夏採択に関わる全国の教育長・教育委員らは、”防衛省の広報誌化”した教科書には警戒してほしい。

※ 永野厚男(ながのあつお)
文科省・各教委等の行政や、衆参・地方議会の文教関係の委員会、教育裁判、保守系団体の動向などを取材。平和団体や参院議員会館集会等で講演。

『紙の爆弾』2024年6月号

 


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