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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ 報道各社による報道加害はなくならない

2023年08月01日 | 平和憲法

 ☆ 陸自のヘリ墜落・銃乱射で取材自粛する企業メディア(月刊救援)

浅野健一

 六月二九日、横浜市の大学生が交際していた男性に殺害された事件で、テレビ・新聞は翌日、遺族が代理人弁護士を通して発表したコメントの全文を報じた。
 遺族は「誤った情報がまことしやかに報道されていること。悪意のある情報操作。私たちの住まいはもちろんのこと、○○の祖父宅にまで押しかける報道陣のモラルのなさ。この全てのことに疑問悲しみ憤りがあります」などと訴えた。
 「無念でしかない」という心情を綴ったコメントは「好奇心を満たすための憶測や誤った情報で娘をこれ以上傷つけないでください。どうかそっとしておいてください。お願いします」と結ばれていた。

 私は半世紀前から、メディア・フレンジー(集団的人権侵害取材)を批判してきたが、報道各社による報道加害はなくならない。
 この女性の場合も、海外で被害に遭っていたら、外務省が遺族に「実名・匿名」希望を確認し、メディア取材も抑制できたが、国内の場合、警察が記者クラブに個人情報を「広報」するので、被害者も晒し者にされてしまう

 一般市民の被疑者・被害者はメディアによって派手に報道されるが、政治家・公務員や企業メディア社員の場合、取材・報道はかなり自粛される。

 今年一月一六日に東京・高島平警察署のトイレで巡査部長が拳銃で自殺。一月二七日には、国会に近い永田町のビルで、機動隊員がトイレの個室で拳銃による自殺をした。
 五月五日には首相官邸守衛所のトイレで二五歳の機動隊員が拳銃自殺した。三月二四日には、成城署で実弾入りの拳銃の銃口を向けて、警官が警官を脅した事件もあった。政治の中枢で起きた警察官の銃刀法違反による事件なのに、関係者への取材はほとんどなかった。
 警視庁は米ブルームバーグ通信の取材に、警官の拳銃自殺を「広報していない」と答えた。この「広報」とは、庁内にある「七社会」など三つの記者クラブへの広報(公表ではなく記者クラブ限定の便宜供与)のことだ。

 市民を守るはずの自衛隊員による深刻な事故と事件も相次いだ。
 四月六日午後、沖縄県の宮古島付近で十人が搭乗した陸上自衛隊UH60JAヘリコプターが行方不明となった。と
 陸自は事故の発生の後、第八師団(熊本市に司令部)師団長の坂本雄一陸将の氏名、肩書を公表しただけだった。
 陸自トップの森下泰臣陸上幕僚長は四月一三日の会見で、一〇人のうち九人の氏名が公表されていないことに関し、「隊員の家族を守るのも私の責務。総合的に勘案し、その都度判断したい」と述べた。

 陸自は四月二十日、五人を海中で発見し、死亡を確認し、二人の身元が判明したと実名、肩書を公表した。坂本陸将に関しては、二一日に死亡が公表された。五月三一日には行方不明の四人について、生存の可能性は低いなどとして死亡と判断し、氏名などを公表した。
 四月一七日の沖縄タイムスは「異例の事態に、防衛省は搭乗員の家族感情にも配慮し、捜索状況の説明などに慎重な姿勢を示すが、情報公開が不十分な面も否めない」(東京報道部・新垣卓也記者)と指摘した。

 坂本師団長は三月下旬に就任したばかりだった。第八師団は有事の際、沖縄などにも緊急展開する。「台湾有事などに備え、島嶼防衛を主な任務としている。中国の人民解放軍と対峙する師団と言っても過言ではない」(四月二四日のデイリー新潮)。ネット上では、中国軍の攻撃を疑うデマが溢れた。
 ヘリは事故の直前、百五十メートル前後の低空を飛行していた。対中戦争を想定して、無理な軍事訓練をしていたのではないか

 六月一四日、岐阜市内の陸自日野基本射撃場で、一八歳の自衛官候補生の男性が小銃を乱射し、三人の隊員が撃たれ二人が死亡した
 岐阜県警が殺人未遂容疑で現行犯逮捕したのは今年四月に入隊したばかりの自衛官候補生の男性(一八)=殺人容疑で送検=だった。
 男性は昨年四月に施行された改正少年法の「特定少年」に当たる。六月一六日の朝日新聞は「検察が起訴すれば、実名報道ができる」と書いた。
 陸自は事件直後、死傷した隊員三人の氏名を公表していなかったが、一五日、三人の実名を公表した。

 テレビ、新聞が男性を仮名にしている中、「週刊新潮」六月二九日号(二二日発売)が「陸自3人殺傷『18歳』の実名と全履歴」と題した記事で、男性の実名や顔写真を掲載した。
 日本弁護士連合会(小林元治会長)は六月二二日、「週刊新潮」記事について、「違法であり、到底許容できない」とする会長声明を発表した。
 メディアは隊員の顔写真も載せず、遺族、友人への取材もほとんどしていない。

 陸上自衛隊幕僚監部広報室は死亡者の実名公表についての質問に、七月三日、

「陸自HPにおいて、正式に公表している。防衛記者会、市ヶ谷記者クラブ、在日外国報道協会(FPIJ)に対し、メールでもお知らせしている。ヘリ事故では六回、発砲事案では一回公表した。公表に際しては、家族支援を担当する隊員を通じて、確認作業を行っている。確認作業については、担当者がご家族のところに赴いた上で、対面にて公表資料等を確認頂くことを基本としている」

 と回答した。陸自はHPに広報資料を載せており、警察・検察とは全く違うフェアな方法だ

 警察・自衛隊は、戦前の特高、帝国陸軍の封建的体質を引き継ぎ、構成員の人権を守っていないと思う。
 岸田政権とメディアが煽る「外敵」よりも、日本国の暴力組織の方が現実の脅威だ。

『月刊救援 651号』(2023年7月10日)

 


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