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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

外国人参政権反対の動き

2010年06月25日 | 平和憲法
 《ルポルタージュ 駅頭の演説を聴く》
 ▼ 外国人参政権反対の動き


 日本で永住権を取り、日本人女性とと家族を構成しているアメリカ人のジョン・ネルソンさん(仮名)が、外国人参政権に反対する動きを批評したルポルタージュを掲載する。
 ▼ 「日本解体」の警告をしている扇動的な旗
 労働者を分裂させる運動に参加する労働者の姿ほど情けないことはないなと、強く盛じる出来事があった。
 それは、東京・田無駅の改札口で、祖父母の家から東京に戻ってくる妻と娘の二人を待っていた時だった。
 その近くに、中高年の男性がハンドマイクで「外国人参政権」の危険性を訴えていた。彼の両側に、日本の「解体」とか「沈没」の恐れを警告する扇動的な旗が立っていた。
 注意を払わず本を読もうと思ったが、あまりにも騒々しく馬鹿げた主張だから、なかなか無視することはできなかった。
 この憎しみに満ちた運動を近くに見ることは初めてではなかった。その数日前にも、新宿駅を通り過ぎた時に、一つおきの言葉が「外国人」の若い街頭演説者を見た。その言葉を、混入物を吐き出ゆように、「ゲーごくじん!」と粗雑に発音した。
 渋谷の数百人が参加した外国人参政権反対デモにもはまり込んでしまった経験があった。デモ参加者のうぬぼれが強そうな表情とヒステリックな旗のスローガンを見るだけで、その運動の心の挟さとけち臭い精神がよく感じられた。
 その"愛国者"に、「永住外国人はそれほど怖いのか」と聞きたかったが、どうせ無駄だなと考えて、何も言わなかった。
 ▼ 排外主義の危険性
 しかし、今回は我慢できなかった。「外国人の犯罪」をべらべらと喋っている、その中高年の男性が私を挑発しているような印象を受けた。というのは、駅にいる外国人は私一人だったみたいだから。とりあえず、彼と話してみようかなと決意した。
 「私も永住外国人の一人だが、犯罪者でもなんでもないですよ。私のような人が地方選挙に参加するだけで、本当に日本の国家を解体させる結果になる?
 「いや、誤解しないでください」、と彼は弁解がましく言った。「まず、これを読んでみてください」指さしたA4サイズの貼り紙に、「我々は、一切の排外主義の考え方を持っていない」みたいな説明が小さな文字で書かれていた。
 その「ていねいな」一枚の小さな紙と周りの「失礼な」数枚の大きな旗との滑稽なコントラストを見て、思わず笑ってしまった。
 「今の演説を聞いて、排外主義的に聞こえますよ。だって、外国人犯罪の話ばかりです」
 私の国籍が「米国」だと聞いたときに、彼が嬉しそうに「日本とアメリカは同盟国だから、アメリカ人が問題ではないです」と安心させようとした。「問題は、在日の中国人と韓国人ですよ」と、この排外主義者ではないはずの男が話した。
 「アメリカ人であっても、アメリカ政府の外交を無条件に支持はしないし、あなたみたいに中国人と韓国人に対する偏見はない。世界の人々がより仲良くすることは大事ではないか」と隠やかに反論した。
 ▼ 「犯罪と偏見」煽り危険視する
 彼と話すことによって、奥さんは中国人だというちょっと意外なことも分かった。それにもかかわらず、中国人を中傷する運動に参加している、という。不思議な行動をするなと思った。
 この男に腹を立てても意昧がないと思った。悪人というより、彼は単なるカモだ。
 卑劣な人物は、このようなだまされた男ではなく、彼らをだます反動的な政治家にほかならない。
 このみすぼらしい男の生活と、彼の「ヒーロー」である石原慎太郎らの豪華な生活の間に共通点は一つもないだろう。
 両者が振りまく排外主義のイデオロギーは、実際に、後者の利益になるだけだ。
 駅で出会った人の「我々対彼ら」(us versus them)の狭い民族的なロジックは、少しも彼の人生にプラスにならないと思う。
 でも、その日、私がその男を「万国の労働者、団結せよ!」という新たな立場に転向させたことはもちろんなかった。まだまだ、反動政治家にだまされそうな男だ。
 ▼ 大不況での社会問題外国人のせいにする
 改札口に戻ったとき、家族が到着した。娘達の明るい目と表情は、先ほどの重い苦しい右翼の雰囲気をふき飛ばす気晴らしとなった。
 でも怖いのは、この大不況が続く限り、社会の様々な問題(失業、犯罪など)を外国人のせいにする人々が増える可能性が高い。
 日本人と在日外国人の労働者が直面している問題の根本的な原因を隠すことは、右翼デマゴーグの役割である。それによって、彼らの思想こそが日本を「解体」と「沈没」の道に導くことになってしまう。
 (在日アメリカ人ジョン・ネルソン)

『週刊新社会』(2010/6/22)

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