☆ 第1回「杉並区の都市計画道路を見直す会」学習会
~住民の力が区政を動かす!~
1、「まちづくり基本計画骨子案」への意見募集後の動き
7月に岸本聡子さんが新区長になった杉並区は、10月1日に「まちづくり基本計画骨子案」への意見募集を開始しました(締め切り10月17日)。「骨子案」への意見募集などはこれまでなかったことでした。これに対し締め切りまで549件の意見が寄せられ、そのすべてが開示されました。その多くは都市計画道路に関して反対の意見でした。
これを踏まえ区は、11月10日「骨子案」に対する修正案を発表しました。しかしこれに対しては、区民の意見を取り入れ修正したところがあるが、まだ不十分と言う意見が住民から出されました。
12月1日、区は「区報すぎなみ」で「杉並区実行計画等の一部修正案」を、岸本区長の<ぜひ、皆さんの声を聞かせてください>とのメッセージと、「一部修正案のポイント」をも示し、第二弾の意見募集を始めました(締め切り2023年1月4日。第一弾より伸びました)。これも初めてのことです。
そうした中、12月4日、「杉並区の都市計画道路を見直す会」と「杉並コモンズ」の共催で、第1回「杉並区の都市計画道路を見直す会」学習会が開かれました。
2、第1回「杉並区の都市計画道路を見直す会」学習会
この学習会には、会場に55人、ズーム(zoom)に46人(計101人)が参加しました。講師は伊藤久雄氏(都庁建設局OB、長年に渡り道路・公園事業に関わる、NPO法人まちぽっと現理事、公益社団法人東京自治研究センター元理事)。
伊藤氏は『都市計画道路のどこが問題か』と言うテーマで 極めて具体的に問題点を指摘してくれました。以下、レジュメに沿って概略を紹介します。少し読みにくいかも知れませんが、内容豊かで具体的です。是非お読みください。
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1,国土交通省の方針
(1)都市計画道路の見直しの手引き(各論編)
ここには以下のような記述がありました。
・平成29年3月末時点で、・・計画延長6.4万km nのうち、整備に未着手である区間は約2.0万kmであり、割合にして31.7%・・長期間が経過しているものもあり、・・再検証に積極的に取り組むことが求められている。
・その結果によっては、廃止や幅員変更などの都市計画変更を行うことを助言してきた。
・都市の再構築を踏まえた都市計画の内容の精査という観点等をも鑑みれば、地方公共団体による更なる対応が望まれる。
また、平成12年12月以降の都市計画道路の変更・廃止状況(平成29年3月末現在)の表を示してくれ、全国ではかなりの路線数になっている(大阪347、京都133、愛知43、千葉28、埼玉64、神奈川41など)に対し東京はわずか「2」でしかないことを指摘され
ました。
(2)都市計画運用指針(令和4年4月1日一部改正)
ここでは、改正で以下のような部分が追加されていることを指摘しました。
・関係市町村からの意見聴取に当っては、その意見を十分に尊重する・・
・あらかじめ都道府県と市町村との間で相互に十分な意思疎通を図るよう、取り組むことが望ましい。
そして、「区市町村の意見が一層重要になった」(伊藤)と述べています。
2,東京都の動向
ここでは、<第三次事業化計画における着手状況>、<第四次事業化計画>(優先整備
路線の選定)、<見直し路線>、<計画内容再検討路線>などが示されたが、「23区部」より「多摩地区」の方が「廃止」になっているところ(調布、立川、町田、青梅、あきる
野など)が多いことがわかりました。
3,都の都市計画の見直し(特に廃止)はなぜすすまないか
これについては、伊藤氏は以下の4点を挙げられました。
①都市整備局の権限が強い
国土交通省はすでに「社会経済状況の変化を踏まえて、変更の必要性が加味されるべき」という流れになっており、自治体でも「財政状況も加味されて、廃止を含む大幅な見直しがすすめられてきた」。にも拘わらず東京が遅れているのは、都市整備局の権限が強いこと。石原知事時代の2001年4月に策定した「首都圏メガロポリス構想」をいまだに維持しているのがその典型。
②都の財政規模は大きく、都施工(都道)が多い)(区施工は区道)
建設局の令和4年度の予算は約5900億円、うち道路橋梁費は約3740億円。他の道府県と比較すれば巨額。バブル絶頂期の1989年度の「都市整備」は全体の1位で約24%(2021年度は14.5%)を占めていた。
③沿道まちづくりより街路事業が優先されること
都の役割(とりわけ都施工事業)は街路事業優先であり、沿道のまちづくりは市町村の役割と考えられ、都と市区町村の一体性に乏しいこと。特区別区の都市計画税は都税であり、都が課税・徴収して区に配分している。配分にあたっては区側の意見は全く聞いていないといわれている。
④杉並区まちづくり条例などとの関係
この条例は基本理念として、区、区民、事業者が、
・協働の理念の下に、それぞれが役割及び責務を担いながら地域のまちづくりに取り組む
・まちづくりに関する必要な情報を共有し、対話を進め、区民の意思が孫登されるまち
づくりに取り組む
・住宅を中心とした都市としての環境に配慮し、地域の発想を大切にしながらまちづくりに取り組む
と定められている。この理念が杉並区のまちづくりにいかされているだろうか。せっかく策定した条例がいかされていないのも1因であると思う。また、「都市計画法」には、「都市計画決定手続きの条例による付加」があり、公聴会の開催等や都市計画の案の縦覧等が定められている。この規定も生かされているとは言い難い。
4,杉並区の動向
(1)杉並区内の第四次事業化計画(優先整備路線)
ここでは、優先的に整備する重要な10路線、そのうち区施工の優先整備路線は4路線、であることが詳しく示されました。
(2)4路線の現在地と課題
これについては以下のように書かれていました。
〇132号線(区施工)
・優先整備路線区間 1070m うち事業認可区間 606m
・用地取得の状況(面積ベース):13.3%(2022年3月末時点)
〇133号線(都施工)
・測量説明会 書面開催
・令和4年1月 事業概要及び測量作業の案内
〇221号線(区施工)
・延長287メートル
・令和4年7月1日、事業認可
〇227号線(区施工)
・事業認可はされていない
そして、それぞれの<課題>として次のようなことが示されました。
・事業認可されていない区間で測量説明会も開催されていない区間(227号)
第四次事業化計画中は「検討期間」とし、第五次整備計画の検討時期につなげることが必要。
・測量説明会が終了した区間
説明会を是認するか、測量や境界立ち合いにどう対応するか。第四次事業化計画中に事業認可されない取組みができるかどうか。(立ち合い測量拒否がある)
・認可され、事業が開始されている区間
(別の自治体の路線では事業認可はされたが、約半数が反対を継続しているという情報がある。立川市、国立市など)
仮に用地交渉に応じるとしても、「生活再建」が最も重要であり、「生活再建の見通し」ができるまでは契約できないことを強調すべき。
(3)杉並区まちづくり基本方針について
ここでは、以下のようなことが述べられました。
・「骨子案」に関するパブリックコメントや「対話集会」の開催などが取り組まれている。都市マスに関する区長との対話集会は、都内では初めての試みだと思われる。
・道路整備方針や地域別の方針など、区民の合意形成がすすみ、区民の意見が集約されるよう期待したい。
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この後、休憩中に参加者に「質問」などを書いてもらいました。休憩後「杉並の問題をみんなで考える会」の世話人・Uさんから、<追加資料>「西荻窪の132号線工事は税金のムダ遣い」についての説明がありました。そこには次のように書かれていました。
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区が公共工事を決める前には、まず「費用対効果」を調査します。工事による経済効果が費用より大きければ、効果÷費用=1.0以上になります。逆に効果が費用より小さければ1.0未満となり、赤字事業になってしまいます。
・・132号線の調査結果は、なんと0.5でした。・・専門家によると「0.5で着手するのはありえない」とのこと。
それなのに区は田中前区長時代に、工事の事業認可を強行してしまいました。工事は完成までに約250億円かかると言われています。
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その後、会場とズーム参加者の「質問」(20人以上)に対し、伊藤氏は全部に丁寧に答えてくれました。その中には以下のような答えがありました。
・測量に応じない、境界線立ち合いはしない。
・買収価格は59%などあり得ない。取引価格が基本だ。
・認可された道路事業を中止しても、区や個人が損害賠償を請求されることはあり得ない。
・認可させない取り組みが必要だ。
・認可されれば取り消しは非常に難しい。だが絶対ではない。
・用地買収は10年で終わることは考えられない。
・最短でも15年はかかる。
・立川市、小金井市の反対運動の経験が参考になる。
・区に働きかけることが重要だ。
・契約は慎重に。「代執行」などと脅すが、道路事案ではこれまでない。話し合いが原則だ。そんなことをすればぶち壊しになる。
・「書面説明」はやってはならない。
・東京都の第五次事業化計画に載せないためには反対の意見をまとめ粘り強く区に働きかけることだ。
・区に廃止しろということだ。
・都は区との一体性を強調するが、区長会は別だ。区の権限の拡大を求めている。
・区長がいえば「区施行」は(取り消し)できるのでは。
・事業を開始させないことだ。
最後に、「見直す会」と「杉並コモンズ」参加の斉藤さんが、次のように締めくくってくれました。
「講演に勇気をもらった。何が問題か、どう闘うかが明らかになった。住民はそこで生活している。移転させられたら街の中で生きていけなくなる。その原点から考えていかなければならない。『まちづくり条例』が生かされていない。これは私たちの弱さでもある。住民自治と民主主義を取り戻す闘いだ。そして条件はある。岸本さんが当選し、意見を聞き、550もの意見が出された。多くが反対し、自分の目を通してまちづくりに関わろうとしていた。これが区民の力だ。次は1月4日までの意見書提出、またやらなければならない。やりましょう!」
今回の学習会で学んだことをもとに、どんどん意見を上げましょう。
全体を通して、「住民の力が区政を動かす!」ことが改めて明らかになった学習会でした。
3、演劇「The VOICE」の公演
11月24日から30日にかけて演劇ユニット「ブス会*」が、杉並区の道路拡張問題を題材にした「The VOICE」という演劇を、西荻窪にある「遊空間がざびぃ」で上演しました。この劇は、道路拡張で庭にある切り倒されるかもしれないアケボノスギが主人公です。
案内のチラシにはこんなことが書いてあります。
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こんにちは。東京都と杉並区が進めようとしている補助〇〇〇号線の道路建設用地のど
真ん中に住んでいる〇と申します。本日は私の庭にあるアケボノスギの代理としても参加
いたしました。我が家のアケボノスギは図体ばかりはでかいのですが無口なので―――
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また「ブス会*」については次のように紹介しています。
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杉並区在住の劇作家ペヤンヌマキが2010年に立ち上げた演劇ユニット。ペヤンヌマキとその友人たちが集って愚痴や自慢をぶちまけ合う会を「ブス会」と呼んでいたことに端を発する。「自分ごと」を起点として現代日本に生きる女性のリアルをシニカルさと優しさが共存する視点で描き続けてきた。2022年、ペヤンヌマキは杉並区長選に立候補した岸本聡子に密着し、ドキュメンタリ―『〇月〇日、区長になる女。』を撮影・編集。地域の問題を「自分ごと」として地域社会に根ざした創作を模索していく。今作では杉並区の人々と対話しながら創作する「地域共生型演劇」を目指す。
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今回の公演は9回行われ、どの回も定員50人が満席となり、計450人が観劇したそうです。杉並区民が約半数、区外からも多数来場したそうです。この劇はよく練られた劇でこの間の杉並区の住民たちの闘いが、主人公アケボノスギの周りで展開される様子がよく描かれていました。
杉並新時代は「草の根」演劇という新しい文化も作り出しました。
なお、ドキュメンタリ―『〇月〇日、区長になる女。』は、「岸本聡子公式YouTubeチャンネル」でご覧になれます。https://www.youtube.com/channel/UCJ9vQwbreBbBGWkuIjiaJRQ
4、今後の予定
12/12(月)10:00~ 都市環境委員会
(杉並区まちづくり基本方針骨子案についての質疑がありそう)
12/26(月)10:00~ 都市計画審議会
※前回の都市計画審議会の最後に委員に通知された予定日程であり、まだHPに記載がないため、変更されるかもしれません。
R5年1月4日までのパブリックコメントの募集が3件出ています。
いずれも重要な意見募集となりますので、できるだけ意見を書いて出しましょう!
▼杉並区実行計画等の一部修正案についてご意見をお寄せください(4年12月1日)
https://www.city.suginami.tokyo.jp/news/r0412/1078108.html
▼「(仮称)杉並区性の多様性が尊重される地域社会を実現するための取組の推進に関する条例(骨子案)」について区民意見を募集します(4年12月1日、5日更新)
https://www.city.suginami.tokyo.jp/news/r0412/1078063.html
▼「(仮称)杉並区パートナーシップ制度(骨子案)」について区民意見を募集します(4年12月1日、5日更新)
https://www.city.suginami.tokyo.jp/news/r0412/1078076.html
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