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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

根津公子の都教委傍聴記(2018年11月8日)寛容さが学校からなくなった

2018年11月13日 | 暴走する都教委
 ● 現実から目を背ける「いじめ対策」 (レイバーネット日本)

 公開議案は①「第3期都教委いじめ対策委員会への諮問について」、公開報告は②「英語『話すこと』の評価に関するフィージビリティ調査の実施について」、③「『学びの基盤』プロジェクトの設置について」、④「来年度教育庁所管事業予算見積について」。
 今回も、非公開議案・報告のいずれにも懲戒処分案件がある。

 ① 3期都教委いじめ対策委員会への諮問について
   ――起きてしまった重大な事実から目を背けた「いじめ対策」って!

 議案は、「都は2014年6月に『東京都いじめ防止対策推進条例』を制定して以降、都教委・地教委との緊密な連携の下、すべての公立学校において、校長をはじめとした教職員と保護者・地域住民・関係機関等が一体となり、組織的にいじめ防止等のための取り組みを推進してきた。
 都教委は、第2期都教委いじめ対策委員会から、見逃しがちな軽微ないじめの積極的な認知や、組織的対応を通して、多くのいじめを解消に導いてきた実績が明記された答申を得た。更に、いじめ防止に係る取り組みの推進状況の検証、評価及びいじめ防止等の対策を一層推進するための方策について諮問する。」というものであった。
 折しも6日には、八王子の中学生がいじめを苦に8月末に自殺した(2週間後に死亡)との報道(新聞報道は7日)がされたばかり。
 部活の先輩からいじめを受けた昨年8月以降、学校に行けなかった彼女の遺書には、「無視はつらい」「誰も助けてくれなかった」とあった。
 学校側が「いじめによる自殺」と認識したのは、中学生が死亡した後のことという。この間、教員の誰一人、彼女と向き合わなかったということか。
 亡くなってから2ヶ月近くが経っての報道であったことも、死を軽視した、「いじめ対策」とは間逆な対応だ。
 議案を提案した指導部長からも教育委員からも、申し合わせたかのように、実際に起きてしまったこの件に引き寄せての発言は皆無。心ある者ならば、避けて通ることはできないはず、と思うのだが。
 前回の定例会(10月27日)でも今回のこの提案でも都教委は、「いじめ件数が増えているのは、軽微ないじめに対しても子どもも教員も問題にするようになったからであり、いじめ対策の成果」と言った。10月27日段階で都教委には八王子の件が報告されていただろうに、話し合いが持たれた跡はない。
 いじめを根絶するために、いじめ調査を年に3回やっても教員研修をやっても、いじめは根絶できない。いじめの要因は強度のストレスに依るもの、そして、同調圧力だ。
 小学校1年生から5時間授業、ドリルができなければ居残り勉強。体力テストの平均値を上げるための練習等々、子どもたちは詰め込み・過剰な競争にさらされ続け、ストレスを溜めている。
 そして、「日の丸・君が代」の強制に見られる同調圧力、横並び。ここから子どもたちを解放し、ゆったりと勉強ができる環境をつくることがいじめの解決につながると思う。
 この中学生は遺書に、「もっと不登校にやさしい世界だったら」と書いていた。
 寛容さが学校からなくなったのは、上記したことに加え、都教委の教員に対する管理・評価や残業しなければ成り立たない働かせ方が大きく影響していると思う。
 時間をかけて生徒に向き合う精神的・時間的余裕が教員になく、また、校長による業績評価(勤務評定)が悪くならないよう、見て見ぬふりをしたり、通り一遍の「指導」で済まそうとしたりしているのではないか。
 教員に余裕があれば、学校空間がゆるやかになり、子どもたちも寛容になれる。都教委が、指示命令で教職員を動かす学校運営をやめ、かつてのように、職員会議を最高決定機関とする学校運営に戻せば、教職員は働きがいを取り戻し、学校に自由な空気が流れるようになること間違いなし。
 そうすることが子どもたちの自立的人格形成を促し、いじめ根絶につながると、体験を通して思う。
 ② 英語『話すこと』の評価に関するフィージビリティ調査の実施について
   ――「撤退」しかないだろう


 フィージビリティとは実現可能性、フィージビリティ調査は事業の実現可能性を検証すること、という。
 都教委はなぜ誰もにわかる日本語ではなく、カタカナ文字を使うのか。
 来年度の都立高入試から英語は「話すこと」の評価を導入することになった。
 そこで、設問や評価のあり方、実施・運営方法等について検証するために、都内公立中8校に在籍する3年生を対象に、8月末から9月にかけてテストを実施したとの報告。
 問題なく実施できたとのことだった。

 各教育委員からは、「表現方法はいろいろあるので、相手に伝えられたかが大事なこと。表現によって採点に違いが出ないように。」「裕福な家庭の子どもは英語に接する機会が多い中、家庭環境によって受験する生徒たちに不利が出ないように。」「機器によるトラブルが起きないように。」「時間と手間をかけてまでやるべきことなのか。撤退も考えてもいいかも。」など、批判的ともとれる発言があったが、予定調和的に承認となった。
 都立高入試では、これまでも採点ミスが続出したことを考えれば、「話すこと」の評価では、採点ミスの倍増・倍々増どころか、破綻は必至
 都教委はその点をどう考えているのか、理解できない。都教委は新しいことに飛びつくことばかり考えているのではないのか。
 ③ 『学びの基盤』プロジェクトの設置について
   ――都教委の介入が「学びの基盤」を壊している

 「読解力の向上、自ら学ぶ力を高めることを通して、将来、社会人として自立できる力を育成する」。
 このことを目的に、「社会生活を送る上で最低限必要となる読解力を高める教育プログラム」を検討する「読解力ワーキンググループ」と、「生徒の多様性に着目し、その生徒に合った学び方で基礎学力を高める教育プログラム」を検討する「自ら学ぶワーキンググループ」を設け、有識者を含めた検討委員会をつくる。
 11月19日に第1回を開催する。また、研究協力校(高校)を指定するとの報告だった。
 都教委は、「日の丸・君が代」をはじめとして、自分の頭で考えさせずに指示命令に従うことを教え込ませ、子どもたちから自己決定権を奪っておきながら、「自ら学ぶ力」「自立できる力」なんて、恥ずかしげもなくよく言えたものだ。まったく腹立たしいかぎり。
 「自ら学ぶ力」「自立できる力」というのであれば、まずは、「日の丸・君が代」を含めて卒業式・入学式を子どもたちに返上すべきだ
 返上すれば、子どもたちは知恵と力を寄せ合い、企画・実行する。その過程で、「自ら学ぶ力」や「自立できる力」は十分に身につけていくものだ。
 高校入試の英語の評価もこの件もそうだが、新しいことを始めれば、企画者(都教育課職員)の評価・出世につながるということなのかと疑りたくもなる。
 ④ 来年度教育庁所管事業予算見積について

 中高一貫校での「理数アカデミー」、医学部等への現役合格に向けた進学指導体制の充実」などのエリート育成や、全都立高校で一泊二日の宿泊防災訓練等、これまでと同じく問題が多い事業ばかり。
 〈新規事業〉として書かれたものから2つ紹介する。
 「オリンピック・パラリンピック教育の推進」では、「東京都オリンピック・パラリンピック教育の集大成として、子供たちが東京2020大会で競技を直接観戦したり、大会に関連したボランティアに参画したり、子供たち一人一人に、人生の糧となるかけがえのないレガシーを残して行くための取り組みを実施」が新規事業として加わった。
 東京2020大会に興味を持たなくても反対でも、チケットを買わされたり、ボランティアに動員させられるということか(当初の説明では、高校生はボランティアが必修ということだった)。
 「学校の教育環境整備」では、「国産木材の利用推進に資するため、都立学校において内装や備品等に国産木材を積極的に活用するとともに、区市町村学校施設の改修や整備等における国産木材の活用を支援」が新規事業に計上されている。
 これについて、「数年前までは学力向上の教員加配があったが、なぜ、国産木材が環境整備なのか」(遠藤教育委員)と疑問が出されたが、担当者からはまともな説明はなかった。
 ネットで検索したところ、「国産木材活用プロジェクトチーム」というのが目に止まった。7月26日の全国知事会議で小池都知事がこの設置を提案し了承されたというもので、小池知事がプロジェクトチームリーダーとのこと。42都道府県の知事がチームメンバーとして名を連ねる。6県(千葉県、山口県、佐賀県、長崎県、沖縄県)はチームメンバーに名を連ねていない。
 小池都知事の要求もしくは忖度による事業と疑ってしまう。

 「福島第一原発の除染作業との関係で、放射能汚染された木材を、汚染土と同様に全国にばらまくのではないか。とても気になる」と、一緒に傍聴していた友人が言った。十分ありえること、と私も思う。
『レイバーネット日本』(2018-11-12)
http://www.labornetjp.org/news/2018/1108nedu
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