JWCHR『UPRジョイントレポート』から
◎ 10、「日の丸・君が代」の職務命令は規約違反
「UPR結果文書」パラグラフ60の勧告の筆頭にある「自由権規約の第1選択議定書の早期批准」を、教育現場の人権侵害の立場から要望する。
2003年10月以降、東京都教育委員会は、都立高校教員全員に国旗国歌への起立斉唱を命ずる個別職務命令を発し、従わなかった教員400名以上に反復継続的かつ累積加重的に懲戒処分を科してきた。これに対し、処分撤回を求める訴訟が20件以上提起され、内11件に最高裁判決が出た段階である。
最高裁の判断は、公権力による「起立斉唱命令」は「敬意の要素を含む」から思想・良心の「間接的制約」にはあたるものの、「儀礼的所作」だから思想・良心への「直接的制約」にはあたらず、職務命令には秩序維持等の「必要性・合理性」があるから思想・良心の自由(憲法19条)の侵害には当たらない、というものである。
しかし、最高裁は、日本も批准して自動執行力もある『自由権規約』の人権制約条項に適正に照らすことなく人権制約を正当化する結論を導いている。
自由権規約18条3項及び19条3項に示された「正しい目的」・「必要性」・「立法化」の条件に適正に照らすなら、国旗「日の丸」に向かって起立し国歌「君が代」を斉唱せよという公権力の懲戒処分を伴う「職務命令」は、規約違反の疑いが極めて濃いものと言わなければならない。
加えて、最新の「自由権規約一般的意見34(意見及び表現の自由)」(2011年7月21日採択)の「パラグラフ38」には、「旗やシンボルに敬意を払わないこと」を禁止したり処罰することは、自由権規約19条3項違反に当たると具体的に例示している。
しかもかねてよりわが国は、定期的政府審査において、公権力が「公共の福祉」名目で個人の権利を制約していることに対する懸念と改善の勧告を受けている(2008年日本政府審査総括所見パラグラフ10)。
即ちわが国が批准した規約を裁判規範として適切に適用しておらず、国際的義務に反する判決となっている。
そうしているうちにも、教育現場では権利の侵害が進行しており、起立斉唱の強制が、教員にとどまらず、生徒にまで及ぼうとしている。
一例を挙げるなら、卒業式で不起立が多かったクラスの担任は、処分を受けた。事前に「内心の自由」を説明した教員も処分を受けた。その数は合わせて、一斉個別職務命令が発せられた最初の年だけで67人に及んでいる。
A高校では、坐っている生徒に教頭が手をかけて立たせようとした。B高校では、生徒会主催の「国旗国歌についての討論会」を行ったところ、管理職も含めて関係教員が処分された。
このような上意下達の命令による画一的な教育統制は、卒業式の日だけにとどまらず、日常の教育活動全体が、多様な価値観を認めない、1つの価値観で序列化する硬直したものになりつつある。
東京の状況は、大阪で加速されようとしている。最初の最高裁判決(2011/5/30)が出た後、大阪府では、国歌演奏時に教員に対して起立斉唱を義務付ける「君が代起立条例」が制定され(2011/6/3)、さらに同一職務命令に3回違反すると分限免職とする「職員基本条例」も追加可決成立した(2012/3/23)。もはや教員の思想・良心・意見表明に対する人権抑圧は、法令として明文化されるところまできており、自由権規約18条3項、19条3項違反は明白である。
本来教育は、生徒一人一人の人格の完成を目指して行われるはずのものが、子どもの個性に応じた弾力的な教育など許されない、息苦しい雰囲気が広まりつつある。
この事態は、教育権の国際基準に抵触する。世界人権宣言26条(教育への権利)、社会権規約13条(教育への権利)、子どもの権利条約12条(意見表明権)、同14条(思想・良心・宗教の自由)、同28条(教育への権利)、29条(教育の目的)、に掲げられた国際的な「教育」の理念に反している。
この事態の中で、教員の「職務」とは、単に校長の命令に無条件に従うことではなく、それ以上に、生徒の人格形成の自由、思想良心の自由、学習権を守り、侵害行為があればそれを排除することにこそ、より本質的な「職務」が求められている。
教員の思想・良心に対する権力的介入は、教育現場の学問の不自由や教育への権利の侵害をもたらし、子どもたちの思想・良心や学習権をも侵害する。この意味では、わが国は、「教育への権利」に関する国際条約にも違反している。
わが国は、素晴らしい国際人権条約を批准しており、その国際水準の人権が学校でも保障されるよう、教育現場から強く訴える。
※第2回UPR日本審査ジョイントレポート(英文)
http://jwchr.s59.xrea.com/x/shiryou/201204jointreport.pdf
※第2回UPR日本審査ジョイントレポート(和文)
http://jwchr.s59.xrea.com/x/shiryou/201204jointreport_japanese.pdf
◎ 10、「日の丸・君が代」の職務命令は規約違反
「UPR結果文書」パラグラフ60の勧告の筆頭にある「自由権規約の第1選択議定書の早期批准」を、教育現場の人権侵害の立場から要望する。
2003年10月以降、東京都教育委員会は、都立高校教員全員に国旗国歌への起立斉唱を命ずる個別職務命令を発し、従わなかった教員400名以上に反復継続的かつ累積加重的に懲戒処分を科してきた。これに対し、処分撤回を求める訴訟が20件以上提起され、内11件に最高裁判決が出た段階である。
最高裁の判断は、公権力による「起立斉唱命令」は「敬意の要素を含む」から思想・良心の「間接的制約」にはあたるものの、「儀礼的所作」だから思想・良心への「直接的制約」にはあたらず、職務命令には秩序維持等の「必要性・合理性」があるから思想・良心の自由(憲法19条)の侵害には当たらない、というものである。
しかし、最高裁は、日本も批准して自動執行力もある『自由権規約』の人権制約条項に適正に照らすことなく人権制約を正当化する結論を導いている。
自由権規約18条3項及び19条3項に示された「正しい目的」・「必要性」・「立法化」の条件に適正に照らすなら、国旗「日の丸」に向かって起立し国歌「君が代」を斉唱せよという公権力の懲戒処分を伴う「職務命令」は、規約違反の疑いが極めて濃いものと言わなければならない。
加えて、最新の「自由権規約一般的意見34(意見及び表現の自由)」(2011年7月21日採択)の「パラグラフ38」には、「旗やシンボルに敬意を払わないこと」を禁止したり処罰することは、自由権規約19条3項違反に当たると具体的に例示している。
しかもかねてよりわが国は、定期的政府審査において、公権力が「公共の福祉」名目で個人の権利を制約していることに対する懸念と改善の勧告を受けている(2008年日本政府審査総括所見パラグラフ10)。
即ちわが国が批准した規約を裁判規範として適切に適用しておらず、国際的義務に反する判決となっている。
そうしているうちにも、教育現場では権利の侵害が進行しており、起立斉唱の強制が、教員にとどまらず、生徒にまで及ぼうとしている。
一例を挙げるなら、卒業式で不起立が多かったクラスの担任は、処分を受けた。事前に「内心の自由」を説明した教員も処分を受けた。その数は合わせて、一斉個別職務命令が発せられた最初の年だけで67人に及んでいる。
A高校では、坐っている生徒に教頭が手をかけて立たせようとした。B高校では、生徒会主催の「国旗国歌についての討論会」を行ったところ、管理職も含めて関係教員が処分された。
このような上意下達の命令による画一的な教育統制は、卒業式の日だけにとどまらず、日常の教育活動全体が、多様な価値観を認めない、1つの価値観で序列化する硬直したものになりつつある。
東京の状況は、大阪で加速されようとしている。最初の最高裁判決(2011/5/30)が出た後、大阪府では、国歌演奏時に教員に対して起立斉唱を義務付ける「君が代起立条例」が制定され(2011/6/3)、さらに同一職務命令に3回違反すると分限免職とする「職員基本条例」も追加可決成立した(2012/3/23)。もはや教員の思想・良心・意見表明に対する人権抑圧は、法令として明文化されるところまできており、自由権規約18条3項、19条3項違反は明白である。
本来教育は、生徒一人一人の人格の完成を目指して行われるはずのものが、子どもの個性に応じた弾力的な教育など許されない、息苦しい雰囲気が広まりつつある。
この事態は、教育権の国際基準に抵触する。世界人権宣言26条(教育への権利)、社会権規約13条(教育への権利)、子どもの権利条約12条(意見表明権)、同14条(思想・良心・宗教の自由)、同28条(教育への権利)、29条(教育の目的)、に掲げられた国際的な「教育」の理念に反している。
この事態の中で、教員の「職務」とは、単に校長の命令に無条件に従うことではなく、それ以上に、生徒の人格形成の自由、思想良心の自由、学習権を守り、侵害行為があればそれを排除することにこそ、より本質的な「職務」が求められている。
教員の思想・良心に対する権力的介入は、教育現場の学問の不自由や教育への権利の侵害をもたらし、子どもたちの思想・良心や学習権をも侵害する。この意味では、わが国は、「教育への権利」に関する国際条約にも違反している。
わが国は、素晴らしい国際人権条約を批准しており、その国際水準の人権が学校でも保障されるよう、教育現場から強く訴える。
※第2回UPR日本審査ジョイントレポート(英文)
http://jwchr.s59.xrea.com/x/shiryou/201204jointreport.pdf
※第2回UPR日本審査ジョイントレポート(和文)
http://jwchr.s59.xrea.com/x/shiryou/201204jointreport_japanese.pdf
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