【金曜アンテナ】
★ 尾道・校長自殺問題の損賠訴訟
広島県教職員組合が逆転勝訴
広島県尾道市立高須小学校に民間人校長として赴任した慶徳和宏さん(当時56歳)が2003年3月に自殺した問題で、広島県教育委員会と尾道市教育委員会が公表した調査報告書において、「教職員との対立」が自殺の原因と指摘され名誉を傷つけられたとして、当時同校に勤務していた教員の若井達也さん(51歳)と広島県教職員組合(広教組)が県や市などに損害賠償を求めた控訴審判決が16日、広島高裁であった。
廣田聰裁判長は「校長の自死は業務上の疾病であるうつ病に起因すると認めるのが相当」とし、「両報告書の摘示事実は、自死の主要な要因が控訴人(教職員)らとの対立にあるという、その重要な部分において真実とは認められない」と名誉毀損を認定。1審判決を破棄し、県と市にそれぞれ110万円の支払いを命じた。判決後、原告と支援者らで埋まった法廷では喜びの声と拍手がわき、感極まって涙する姿も見られた。
広島銀行に勤務していた慶徳さんが校長に登用されたのは02年3月。たった2日間の研修で、学校用語すら知らないまま大規模校の高須小学校に配属された。片道1時間30分の通勤時間に加え、連日の長時間労働によって赴任してわずか1カ月でうつ病と診断される激務を強いられた。5月中旬、慶徳さんは「抑うつ状態。1カ月間の休養を要す」との診断書を持って、市教委に病気休暇を申し出たが「あなたには(地元の)経済界がついている。がんばってください」と認められなかった。2人の教頭が相次いで病気で倒れるなか、うつ病が悪化し自殺につながった。死の直前の超過勤務時間は1日平均7時間以上に及んだ。
しかし、事件後、県教委は記者会見で「組合の組織率がほぼ100%で難しい学校」「運動会での国旗掲揚・国歌斉唱で教職員から異論がでていた」などと発言、調査報告書でも「教職員との対立」が自殺の原因と印象づけて公表した。それが報道されると、教職員に対する嫌がらせ、誹謗中傷、脅迫が多発。広教組の尾道支区執行委員長の若井さんには「人殺し」と心ない言葉が投げつけられた。そして、03年6月には広教組本部が右翼団体に銃撃される事件に発展した。
若井さんと広教組は03年12月、両教委による虚偽報告書で名誉を毀損されたとして、700万円の損害賠償を求めて提訴した。1審判決は「両教委は(損害賠償に対する)当事者能力はなく、訴えは不適法」とし、報告書も「教職員の責任を一方的に強調するものではない」と原告側が敗訴した。
だが、控訴審では教委が隠していた「慶徳校長の公務災害認定資料」が、裁判所の文書提出命令で公開された。主治医の所見では、慶徳さんが「多忙で通院できない」「休暇を認めてくれない」などと教委への非難を多く口にしており、自殺の原因が「教職員との対立」ではなかったことが明らかになった。
勝利判決を受けて、広教組は「名誉を回復するとともに、学校現場の管理強化、組合への不当労働行為を是正するために全力をあげる」との声明を発表。広教組では高裁判決で得た教訓を生かすため、11月15日に尾道市公会堂で「『高須小事件』真相報告集会」を開く予定だ。
(平舘英明・ジャーナリスト)
『金曜アンテナ』(2008/10/24)
http://www.kinyobi.co.jp/KTools/antena_pt?v=vol724
★ 尾道・校長自殺問題の損賠訴訟
広島県教職員組合が逆転勝訴
広島県尾道市立高須小学校に民間人校長として赴任した慶徳和宏さん(当時56歳)が2003年3月に自殺した問題で、広島県教育委員会と尾道市教育委員会が公表した調査報告書において、「教職員との対立」が自殺の原因と指摘され名誉を傷つけられたとして、当時同校に勤務していた教員の若井達也さん(51歳)と広島県教職員組合(広教組)が県や市などに損害賠償を求めた控訴審判決が16日、広島高裁であった。
廣田聰裁判長は「校長の自死は業務上の疾病であるうつ病に起因すると認めるのが相当」とし、「両報告書の摘示事実は、自死の主要な要因が控訴人(教職員)らとの対立にあるという、その重要な部分において真実とは認められない」と名誉毀損を認定。1審判決を破棄し、県と市にそれぞれ110万円の支払いを命じた。判決後、原告と支援者らで埋まった法廷では喜びの声と拍手がわき、感極まって涙する姿も見られた。
広島銀行に勤務していた慶徳さんが校長に登用されたのは02年3月。たった2日間の研修で、学校用語すら知らないまま大規模校の高須小学校に配属された。片道1時間30分の通勤時間に加え、連日の長時間労働によって赴任してわずか1カ月でうつ病と診断される激務を強いられた。5月中旬、慶徳さんは「抑うつ状態。1カ月間の休養を要す」との診断書を持って、市教委に病気休暇を申し出たが「あなたには(地元の)経済界がついている。がんばってください」と認められなかった。2人の教頭が相次いで病気で倒れるなか、うつ病が悪化し自殺につながった。死の直前の超過勤務時間は1日平均7時間以上に及んだ。
しかし、事件後、県教委は記者会見で「組合の組織率がほぼ100%で難しい学校」「運動会での国旗掲揚・国歌斉唱で教職員から異論がでていた」などと発言、調査報告書でも「教職員との対立」が自殺の原因と印象づけて公表した。それが報道されると、教職員に対する嫌がらせ、誹謗中傷、脅迫が多発。広教組の尾道支区執行委員長の若井さんには「人殺し」と心ない言葉が投げつけられた。そして、03年6月には広教組本部が右翼団体に銃撃される事件に発展した。
若井さんと広教組は03年12月、両教委による虚偽報告書で名誉を毀損されたとして、700万円の損害賠償を求めて提訴した。1審判決は「両教委は(損害賠償に対する)当事者能力はなく、訴えは不適法」とし、報告書も「教職員の責任を一方的に強調するものではない」と原告側が敗訴した。
だが、控訴審では教委が隠していた「慶徳校長の公務災害認定資料」が、裁判所の文書提出命令で公開された。主治医の所見では、慶徳さんが「多忙で通院できない」「休暇を認めてくれない」などと教委への非難を多く口にしており、自殺の原因が「教職員との対立」ではなかったことが明らかになった。
勝利判決を受けて、広教組は「名誉を回復するとともに、学校現場の管理強化、組合への不当労働行為を是正するために全力をあげる」との声明を発表。広教組では高裁判決で得た教訓を生かすため、11月15日に尾道市公会堂で「『高須小事件』真相報告集会」を開く予定だ。
(平舘英明・ジャーナリスト)
『金曜アンテナ』(2008/10/24)
http://www.kinyobi.co.jp/KTools/antena_pt?v=vol724
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