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パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

☆ パブコメへの大量投稿を非難する政府

2025年07月03日 | フクシマ原発震災

 ☆ 市民の意見を反映させる機会が少ない現状
   ~多くの意見が集まるのは民意を無視するからだ

2025年5月23日 山崎久隆(たんぼぽ舎共同代表)

 ☆ はじめに

 中日新聞は5月14日に『数を競うものじゃない パブリックコメント、大量投稿にどう対応?国民が政府に意見を伝える貴重な機会』との記事を掲載した。
 「近年、国や自治体が政策決定の過程で国民から意見を募るパブリックコメント(意見公募)制度において、大量の投稿が相次いでいます。これにより、行政側の負担が増加し、制度の運用や市民参加のあり方について議論が活発化しています。」と、「パブゴメ大口投稿」に端を発したパブコメ問題についての記事だ。
 記事の元にあるのは、環境団体や国際協力団体などが5月13日に国会内で開催した院内集会「政策決定プロセスに幅広い市民参加を」での市民の声。報道やSNSで意見の数の多さを問題視する論調が目立つことへの懸念の声と、パプコメ自体に内在する問題点を掘り下げている。
 以下、記事の要約を紹介する。

 ☆ 1.大量投稿の背景と懸念

 2024年度に実施されたパブコメの内、政府が閣議決定した「第7次エネルギー基本計画」に4万件を超える意見が集まった。
 また、原発事故の除染で発生した汚染土の再利用に関する環境省令案には20万件以上の意見が寄せられた。
 そのために職員の負担が増加し、報道やSNS上では投稿制限を求める声も上がっているが、市民団体からは、意見表明の機会を制限する動きに対する懸念が示されている。

 ☆ 2.政府の対応と市民の声

 総務省は、意見の整理作業の省力化に向け、人工知能(AI)の活用を検討しているが、投稿数を制限する仕組みの導入については「今のところ検討していない」としている。
 一方で、市民団体や専門家からは、パブコメ制度の形骸化や市民参加の制限に対する懸念が表明されている。
 大阪大学の大久保規子教授は、市民の意見の反映を重視する国としては、「パブコメは最低限の権利と捉えられている。他の手段を取った上でじゃないと制限に手をつけないと思う」と述べる。

 ☆ 3.パブコメ制度の課題と改善の方向性

 パブコメ制度は、政策立案過程の最終段階で実施されるため、一般市民が意見を述べる余地が少ない。また、提出された意見は「十分考慮する」とあるだけでどう扱うかは最終的には政府の判断に委ねられる
 南山大学の樽原秀訓教授は、英国の制度では専門家に限って意見を聞く仕組みがあり、透明性が高いと指摘している。

 ☆ 4.市民参加の拡充に向けて

 NPO法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長は、大量投稿が起こる背景には、他に意見表明の機会がないことがあると述べている。政策形成のさまざまな段階で市民参加の機会を保障し、意見を反映させる仕組みが必要であると訴えている。
 パブリックコメント制度の運用においては、市民の意見をどのように政策に反映させるかが重要な課題となっている。制度の改善には、意見の整理方法の見直しや、市民参加の機会の拡充など、多角的なアプローチが求められている。

一記事要約終わり一

 ☆ 5.問題をそらす国は新たな規制を設けるのか

 大量投稿が見られるパブコメは、ほとんどが市民の意見が国の政策と乖離しているか、大きな議論になっているケースだ。
 多くは、決定までの間に議論が尽くされていなかったり、一方的な政策決定がなされていたりと、パブコメに至る前に問題点が数多く指摘されている。
 特に記事に取り上げられているエネルギー基本計画は、福島第一原発事故の反省から、第4次から第6次では「原発依存からの脱却」としてきた政府の方針を、全く正反対の方針に転換して「原発の利活用推進」に変えたことでパブコメの意見が激増した。
 典型例として「投稿合戦になっている」かの指摘については、国が「異常な数の投稿が組織的に行われたケース」として問題視したことに端を発している。具体的に指摘する。

 ☆ 6.「エネルギー基本計画」のパブコメの場合

 最初のケース、エネルギー基本計画のパブコメについて背景を見てみよう。
 日本の原子力政策は震災以後、これまでは「原発依存からの脱却」を掲げてきた。
 福島第一原発事故により大勢の被災者が今もふるさとに戻れず、広大な土地が利活用も不可能な「帰還困難区域」にされたままであることから、再び原発事故が起きれば国が滅びることさえ否定できない。そんな恐怖も含めての市民的コンセンサスを経ての、依存度低減方針だったはずだ。
 ところが、さしたる根拠もなく、合理的理由も示さず、「脱炭素と安定供給」など真偽の程も疑わしい理由を付け震災前よりもさらに老朽原発を長期間運転する。また、世界では、ほとんど終了している再処理を推進し、使うあてもないプルトニウムを取り出す。原発事故などなかったかの政府の方針転換に対する怒りが反映したものである。
 本来ならばこうした方針転換を図るのならば、国民的議論を経て、数多くの公聴会を開催し、事故の被害を最も強く受ける原発立地点の住民と電気を使う都市部の消費者でも意見を交わし、あるべきエネルギーの生産と消費、需給バランスなどを論じることから議論を尽くすべきだ

 ☆ 7.「汚染土再利用」のパブコメの場合

 「原発事故の除染土の再利用に関する環境省令案」では、そもそも原子炉等規制法で放射性廃棄物として厳重に管理すべき「キロ当たり100ベクレル」を80倍も超える「キロ当たり8000ベクレル」までの除染土を再利用と称して道路の基盤や農地や講演の基礎地盤に使う(「放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」に根拠をもつ)というのだから、反発が広がるのは当たり前である。
 現在、廃炉作業が進められている東海原発や浜岡原発では、キロ当たり100ペクレルを超える放射性廃棄物をどうするかが問題になっており、現状では敷地内に仮埋めするという方針が事業者から示されているが、一般市民が暮らす環境に持ち出して埋め立てするなど、不可能なことである。原発からの100ベクレルを超えない「クリアランスレベル」でも、人の目に触れない場所に限定的に使われているに過ぎない。
 パブコメで8000ベクレルまで利用可能などとする案が突然提起されれば、誰だって整合性を問う意見を出したくなる。こうした行政側のおこなう異常としか言えない政策が、パブコメ激増の根本原因なのである。

 ☆ 8.総務省の的外れの対応にも問題がある

 総務省は、AIを活用して同種の意見をまとめて労力を減らす案などは、「激増した意見をどうやって捌くか」の視点しかない。そもそも施策に問題があるから激増していることが全く理解されていない。
 パブコメは意見を述べることは出来る制度だが、反映させる制度ではない。本来は、国会において責任のある議論を積み重ね、必要ならば公聴会や住民投票などで民意を問い、その上でパブコメにより政策への意見を募集するべきである。

『たんぽぽ舎 金曜ビラ』(2025年5月23日)

 


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