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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

第9回最高裁要請行動要請文

2011年04月18日 | 板橋高校卒業式
  ★ 立川、葛飾に続く「言論表現の自由」圧殺を許すな! ★
  最高裁は「表現そのものを処罰すること」の憲法適合性を判断せよ!

  ■□■ 4月13日(水)第9回最高裁要請行動を行いました ■□■

「イスカ」 《撮影:佐久間市太郎(北海道白糠定、札幌南定、数学科教員)》

最高裁判所 第一小法廷 裁判官殿
2011年4月13日
藤田先生を応援する会一同
◎ 都立板橋高校卒業式事件について、口頭弁論を開き
人権の世界標準に基づいた公正な判断をされるよう要請します

 藤田勝久さんは、都立板橋高校の卒業式が始まる前のわずかな時間、保護者に語りかけたことが、威力業務妨害罪として刑事責任を問われております。
 貴法廷におかれましては、本事件に対し、以下に述べる理由から、人権の根本原則に則り、冷静かつ公正な判断をお願いいたします。
 1,人権の国際水準に立脚して
 私たちは、この事件を、藤田さんが行使した「表現の自由」の権利に対する、公権力による「刑事弾圧」の問題と理解しています。そして人権は人類普遍の原理ですから、国際的な人権基準にも注目しています。
 (1)国連自由権規約委員会『一般的意見34』の重要性
 国連自由権規約委員会は昨年10月、自由権規約19条(表現の自由)に関する54項目に及ぶ『一般的意見34』を公表しました。これは先の『一般的意見10』(19条)以来28年間蓄積されてきた先例や審査を整理して、条文の解釈と運用の指針を改めて詳細に示したものです。
 わが国が32年前に批准済みの『自由権規約』は、自動執行的(self-executing)で直接適用可能であり、また間接適用により憲法判断が導かれた判例(2008国籍法違憲大法廷判決)も既に存在しています。貴法廷におかれましても、ぜひこの文書に対し関心を持って注目していただきたいと思います。〔添付資料.1.2〕
 (2)フォルホーフ教授『鑑定意見書』との共通性
 これに先立って2010年4月に、当法廷にはフォルホーフ教授の『鑑定意見書』が提出されています。教授の結論は「藤田さんの訴追及び有罪判決は表現の自由の権利に対する不当な介入と見なされる」と言うものでしたが、検討に際して引用された自由権規約委員会先例11件中10件が『一般的意見34』でも引用されていたことが今回分かりました。
 このことは、フォルホーフ教授の分析が、判例解釈において自由権規約委員会と同じ枠組みでなされ、そこから導かれた結論は国際水準に照らして妥当であることが、本文書により裏付けられたことを意味すると考えています。
 2,本事件への『一般的意見34』の当てはめ
 『一般的意見34』によるなら、原審の「威力業務妨害罪」の認定は、以下の点で『自由権規約19条3項』に違反していると言えます。
 ① 校長の「財産権・管理権」で「表現の自由」を制限するのは、権利と制限との関係の逆転となります。
    「委員会は、権利と制限との関係、および規範と例外との関係が逆転してはならないことを想起する。」(パラグラフ22)
 ② 校長の「卒業式を円滑に執り行う職務」は、「公共の福祉」と同義ではなく、絶対無制限に保障されるものではありません。
    制限する場合の規範は、明文化・公表・周知されていなければならず、「法律は表現の自由の制限に対する無制約な裁量権をその実行担当者に与えるものであってはならない。」(パラグラフ26)
 ③ 表現内容が「(校長には)とうてい許容できない内容」だから「『威力』に該当することは明らか」(一審p20)との認定は、「保護」と「制約」の利益衡量を誤った規約違反です。「日の丸・君が代強制」をめぐる社会的関心は高く、意見表明を禁止することは許されません。
    「表現の自由に対して規約が認める価値は、民主的社会における公的および政治的領域の人物に関する公の場での論議においては特に高いのである。」(パラグラフ35。Voorhoof引用先例=Angola/1128,Australia/1157)
 ④ 制約の「緊急の必要性」は証明されていません。急迫性があったなら、なぜICレコーダ録音者の指導主事は止めなかったのか。また教頭による「制止行為」は、後に述べるように偽証です。
    「締約国は・・・特に、その表現と脅威の間に直接的かつ切迫した因果関係を証明することによって、明らかにしなければならない。」(パラグラフ36。Voorhoof引用先例=Republic of Korea/926)
 刑法の適用は最も深刻な事件においてのみ容認されるべきであり、刑事訴追には慎重でなければなりませんでした。
    「いかなる場合でも、批判の内容に対する公共の関心は抗弁として認められるべきである。締約国は行き過ぎた刑罰的措置や処罰を避けるために注意を払わなければならない。」(パラグラフ49)
 3,原審は「制止行為」が行われたとの立証に失敗しています。
 大阪地検特捜部の証拠改ざんを受けて設置された「検察の在り方検討会議」が、3月31日に江田法相に提出した提言には「取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方を抜本的に見直し」以下、再発防止策が並べられていました。〔添付資料.3〕
 そもそも本件における本人への取り調べは「黙秘調書」だけで、起訴に持ち込まれました。唯一の物的証拠「ICレコーダ」には証拠能力に大きな問題があります。
 第1に、改ざんの形跡の疑いです。「ICレコーダ」にない文言が、『起訴状』及び最初の『解析一覧表』に記載されていた不整合は、音源改ざんへの根本的疑問を生じさせます。
 第2に、原審中の時間認定の不一致です。「ICレコーダ」の一見緻密な分析から割り出された「教頭による制止行為の存在の時間証明」は、教頭の校長室出発時間と体育館での制止実行時間が逆転するという非科学的な矛盾を生んでしまっています。検察提出の物的証拠を無批判に採用した結果の誤りです。
 第3に、このいい加減な物的証拠が、実際には存在しない教頭による制止行為という「威力業務妨害罪」を成立させる重要な証拠として扱われているということです。
 この一連の矛盾と混乱は、「有罪判決の獲得のみを目的」とした検察と都教委が一体となったなりふり構わぬ不正行為の存在を疑わせるものです。
 疑惑を解明し、公正なご判断をお願いします。

 4,藤田さんの呼びかけに違法性がないことは、国内判決からも明らかです。
 本年3月10日「東京『君が代』一次訴訟控訴審判決」(大橋寛明裁判長)は、不起立等の教員に対する懲戒処分を取り消しましたが、その中で起立斉唱の「強制」に関して、「本件通達も、上記のような参列者(注:保護者・来賓等)にまで起立を強制することを考えていないことは明らかである」と、都教委・校長とも当然ながら教職員以外の参列者に起立を強制できる立場にないと認定しています。〔添付資料.4〕
 藤田さんは、式が始まる15分ほど前に保護者に着席を呼びかけましたが、それは何ら内容的に違法でもなく、都教委・校長の管理権を侵害するものでもないことが、同種事案により明らかにされたと言うべきです。
 さらに「威力業務妨害罪」による刑事訴追についていうなら、懲役8月を求刑された他種事案において類例を見ず、また学校行事等における同種事案において刑事罰の例を見出すことが出来ない、比例原則に違反する裁量権の逸脱濫用としか言いようのないものです。
 高裁における曽根威彦教授の『意見書』に引用された、明治の「たばこ一厘事件」のように、日本においても大審院時代から、「刑法は,零細な反法行為などまでを当然の適用対象とするべきではなく」(大審院明治43年10月11日判決 刑録6-1620頁)、刑罰は、必要やむを得ない範囲においてのみ科せられるべきであり、刑法の解釈適用は謙抑的に行われなければならない、とされてきたのです。
 5,最後に
 社会的関心事についての開かれた議論は、民主主義の基本です。教育の場ではなおさら、民主主義が大切にされ、一つの価値観による画一的な強制がなされることがあってはなりません。貴裁判所の公正かつ賢明な判断をお願いいたします。
 なお、当事件の弁護団は『一般的意見34』に基づく「上告趣意補充書(5)」の提出を、4月下旬を目処に準備している、と聞いております。上記書面もお読みいただいた上で、判断下さることをお願いいたします。
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