『別姓反対』増えたって本当?
■内閣府調査の内実は…
「夫婦別姓 反対派増える」「賛否が拮抗(きっこう)」-。先月、内閣府が発表した夫婦別姓に関する世論調査結果に対し、「実感と隔たりがある」と疑問視する声が出ている。
調査データを精査してみると、回答者の年齢層が熟年層に偏っているうえ、別姓を名乗る夫婦にかつてなく寛容な“もう一つの世論”が見えてきた。 (井上圭子)
■未婚者、若年層少なく、回答者に偏り
「賛否が拮抗? 嘘(うそ)でしょ。私の周りでは結婚後も仕事で旧姓を名乗る人は増え続けてるよ。『法改正にブレーキ』とは何か作為を感じる」
一児の母でもある会社員(38)はこう驚いた。
夫婦別姓を認める法改正について女性の意識をみると、「必要ない」という反対派が31・7%、「改めてもかまわない」という容認派は36・2%。男性の意識では反対派が少し増えるが、女性に限っても差は4・5ポイントで、拮抗しているとも言える。
だが“落とし穴”は回答者の年齢層にある。反対派が熟年層にかなり偏っているのだ。一方、夫婦別姓問題に直面したり、直面してきた二十-四十代の女性の反対派は20%に満たず、逆に容認派は40%を超える。
しかも、回答者の年齢構成を国の人口構成と比べると、二十代、三十代は少なく、五十代、六十代は多いことが分かった。二〇〇一年の前回調査の方がまだ現実の人口構成に近かった。
また「旧姓を通称として使えるようにする法改正は構わない」は三十代で四割にも上っている。
内閣府は「面接調査をしているが、若い層は不在や拒否が多くて…」と説明するが、この調査の目的は「今後の施策の参考とするため」だ。なのに、若年層や日中仕事などで出ている人が少ない「世論」でよいのだろうか。
京都大学法科大学院の二宮周平教授(家族法)は「『ためにするための調査』だね。回答者の86・6%が既婚者、92・9%が子どものいる人という比率もいびつ」と指摘し、こう話す。
「結婚制度づくりの資料にする気があるのなら、これから結婚する人の意見をきちんと反映できる調査にしないと」
■通称使用定着、法改正あきらめムードも
夫婦別姓問題に詳しい榊原富士子弁護士も「結婚に最も関係の深い二十代、三十代の有効回収率が低くては世論を表していない。回収率アップの工夫をするべきだ」。
返す刀で報道の在り方にも疑問を投げかける。「法改正以外の項目では別姓を名乗る夫婦(事実婚と通称使用)に寛容な結果が出ているのに、ほとんど報じられていない」
確かに、「改姓で不便を生ずることがあると思う」や「結婚しても仕事上不便を生じないようにした方がよい」、「実家の名前を残すために結婚しにくくならぬようにした方がよい」、「名字が違っても、家族の一体感には影響がない」などの項目は過去最高を記録した。
にもかかわらず、法改正に対する賛否の差が前回よりも縮まった。その理由を、二宮教授は「法改正すべきだという答申が出たのは十一年前。その後、やむを得ず使い始めた通称が定着し、一方で『法改正は難しそう』というあきらめムードもあるのでは」とみる。
榊原弁護士は「通称使用を合わせると何らかの法改正が必要と考えている人は、反対派の倍もいる。一方、いまだ通称使用を認めない職場もあり、困っている女性は多い。法改正は必要です」と話している。
『東京新聞』(2007/2/10暮らし)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20070210/ftu_____kur_____000.shtml
■内閣府調査の内実は…
「夫婦別姓 反対派増える」「賛否が拮抗(きっこう)」-。先月、内閣府が発表した夫婦別姓に関する世論調査結果に対し、「実感と隔たりがある」と疑問視する声が出ている。
調査データを精査してみると、回答者の年齢層が熟年層に偏っているうえ、別姓を名乗る夫婦にかつてなく寛容な“もう一つの世論”が見えてきた。 (井上圭子)
■未婚者、若年層少なく、回答者に偏り
「賛否が拮抗? 嘘(うそ)でしょ。私の周りでは結婚後も仕事で旧姓を名乗る人は増え続けてるよ。『法改正にブレーキ』とは何か作為を感じる」
一児の母でもある会社員(38)はこう驚いた。
夫婦別姓を認める法改正について女性の意識をみると、「必要ない」という反対派が31・7%、「改めてもかまわない」という容認派は36・2%。男性の意識では反対派が少し増えるが、女性に限っても差は4・5ポイントで、拮抗しているとも言える。
だが“落とし穴”は回答者の年齢層にある。反対派が熟年層にかなり偏っているのだ。一方、夫婦別姓問題に直面したり、直面してきた二十-四十代の女性の反対派は20%に満たず、逆に容認派は40%を超える。
しかも、回答者の年齢構成を国の人口構成と比べると、二十代、三十代は少なく、五十代、六十代は多いことが分かった。二〇〇一年の前回調査の方がまだ現実の人口構成に近かった。
また「旧姓を通称として使えるようにする法改正は構わない」は三十代で四割にも上っている。
内閣府は「面接調査をしているが、若い層は不在や拒否が多くて…」と説明するが、この調査の目的は「今後の施策の参考とするため」だ。なのに、若年層や日中仕事などで出ている人が少ない「世論」でよいのだろうか。
京都大学法科大学院の二宮周平教授(家族法)は「『ためにするための調査』だね。回答者の86・6%が既婚者、92・9%が子どものいる人という比率もいびつ」と指摘し、こう話す。
「結婚制度づくりの資料にする気があるのなら、これから結婚する人の意見をきちんと反映できる調査にしないと」
■通称使用定着、法改正あきらめムードも
夫婦別姓問題に詳しい榊原富士子弁護士も「結婚に最も関係の深い二十代、三十代の有効回収率が低くては世論を表していない。回収率アップの工夫をするべきだ」。
返す刀で報道の在り方にも疑問を投げかける。「法改正以外の項目では別姓を名乗る夫婦(事実婚と通称使用)に寛容な結果が出ているのに、ほとんど報じられていない」
確かに、「改姓で不便を生ずることがあると思う」や「結婚しても仕事上不便を生じないようにした方がよい」、「実家の名前を残すために結婚しにくくならぬようにした方がよい」、「名字が違っても、家族の一体感には影響がない」などの項目は過去最高を記録した。
にもかかわらず、法改正に対する賛否の差が前回よりも縮まった。その理由を、二宮教授は「法改正すべきだという答申が出たのは十一年前。その後、やむを得ず使い始めた通称が定着し、一方で『法改正は難しそう』というあきらめムードもあるのでは」とみる。
榊原弁護士は「通称使用を合わせると何らかの法改正が必要と考えている人は、反対派の倍もいる。一方、いまだ通称使用を認めない職場もあり、困っている女性は多い。法改正は必要です」と話している。
『東京新聞』(2007/2/10暮らし)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20070210/ftu_____kur_____000.shtml
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