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『男たちの大和』

2005-12-30 23:23:52 | 美術館・博物館・シネマ。
映画男たちの大和を鑑賞



素晴らしい作品だった、それに尽きると思う。
海外映画はスケールこそ大きいが、エンターテイメント性を高めるために偽りや矛盾が多くウンザリ…、一方の国内映画は期待に応えられない製作規模でガッカリ…、だったけど『男たちの大和』は見事に「良かったぁ~」の感想を持たせてくれる作品だった。
原作者をガッカリさせまくりの最近の映画…『13階段』の解説で宮部みゆき氏も述べられているが―、物足りなさを感じる昨今のシネマで、この『男たちの大和』においては辺見じゅん氏も満足されているのではないだろうか?! もちろん原作愛読者の方々も。

大和たちの大和』を観て―。

戦艦「大和」が製造されたのは広島の呉港。「広島」は東京や大阪、他の大都市のように大空襲を受けることはなかった。なぜなら、米国は原爆の威力を調査するために、広島の街並みを8月6日まで破壊することなく残していたのだという。まさにモルモット都市だ…(広島原爆資料館より)。 そんな広島の呉港で、極秘に製造された戦艦「大和」。
日本は真珠湾奇襲攻撃で戦闘機の有用性、つまり「飛行機時代の幕開け」を世界に自ら証明しておきながら、「戦艦」に固執し莫大な経費を使って「大和」を製造した。当然、時代遅れの巨艦「大和」は活躍することなく、沖縄特攻で海底へと沈むことになる。しかし、そこには60年経ってもなお人々を惹き付けるドラマが―。

確かに「大和」は戦時に活躍することがなかったとしても、戦後、現在でも、いや未来にかけても大いに活躍しているのだ!!
「大和」が装備していた技術から多くの企業が活躍し、測距儀は現代のカメラにも利用され、バルバス・バウは乗物の空気抵抗などに利用、サーチライトのガラス板においては現代日本の技術でも製造できないとか…当時の技術者は凄い…、つまり日本復興、そして現代日本の繁栄は「大和」の下にあるといって過言ではない。モノ造りの企業の方々は戦艦「大和」の装備技術を見れば、きっと楽しめるはず笑。「大和」は目に見えるカタチで生き続けているのだ―。

作品内のセリフにもあるが、「特攻の意義」に悩む乗員たち―。臼淵磐大尉の言葉は…顔を上げさせるね、戦後の日本を見た上で述べられたような、驚きの言葉。けど、10歳代の青年たちにとっては、「」を懸けて守りたいモノ…それこそを「死」の意義だったんだろうね。「青年乗員」と「守りたいモノ」との別れのシーンが多々あるが、自然と涙が出てくる。しかし、ここには誇張性・エンタメ性はない。1つ1つのセリフが重く、重く、重く、深い―。多大な調査のもとに製作されていることが、そのセリフから窺い知ることができる。

自分は森脇庄八(反町隆史)が窓の外を見ながら内田守に向けて発する、
    「桜がきれいに咲いとるのぅ…
というコトバが好きであり、非常に深いコトバであるように思う。
この短い文章で、彼が想い描いている情景が思い浮かぶ。 まさに「CLOSE YOUR EYES」だ。瞳を閉じれば風景が鮮やかに広がる。
窓の外には桜が咲いているのだが、森脇が見ているのはその桜ではなく、日本の美しき風景であり、また特攻に向かう青年たちの姿であるように思う…。深いシーンが流れる―。これは自分の勝手な想像。

題は『男たちの大和』であるけど、注目すべきは《女性》である。
作品内には、数人の女性が登場するが、彼女たちの言葉にこそ人間の本音の想いが描かれているように思う―。


     きれいでのどかな海の底に
     大和は沈んでいったのだと思うと、
     悲しくていたたまれない気持ちになります。
                   (鈴木京香さん)

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