3000m級の山々が連なる日本アルプス。
8月、岡大ワンゲル一過酷な山岳合宿が行われた。
岡山大学ワンダーフォーゲル部夏合宿。
日本アルプスの峰々を自らの足だけで越えていく天空の合宿だ。
コースは上高地からスタート。
明神、徳沢、そして横尾を経てゴールの涸沢カールまで全長(往復)40㎞、フルマラソンおよそ1回分、登りの高さを合計すると富士登山1回分、これを2日以内で踏破しなければならない。
挑むのは岡大ワンゲルから選りすぐられた8人の超人たち。
鍛え上げられた肉体と山岳技術を駆使してひたすらゴールを目指す。
だが、アルプスの大自然が立ちはだかる。
疲労、怪我、そしてくじけそうになる心。
己の限界を突き付けられる。
それでも自らの力で乗り切るしかない。
この合宿に賞品や賞金はない。
ある者は何年もの歳月をかけ、ただ完走を目指す。
そしてある者は過去の自分に打ち勝つため記録に挑む。
限界を超えることはできるのか。
限界に挑め!天空の超人たち
2日間に渡る熱い戦いの日々を追った。
8月、早朝の上高地
ぞろぞろとBIGなザックを背負って現れた8人の若人
名付けて
「ザックーズ」
いい名前だ。
すぐに出発するというので慌てて朝ご飯用に買った黒糖ふかしを口に詰め込む。
坂を駆け上がって、肩で息しながら、強い日差しの中を登っていく。
しばらくすると大きな立派な橋が見えてきた。
横尾大橋だ。
ここから本格的な登山道が始まる。
傾斜もきつくなる。
対向の人が多く思うように進まない。
しかし、彼らは至って冷静だ。
ものすごい集中力だ。
そして登山開始から6時間半、涸沢カールに到着した。
到着しても安心はできない。
すぐにテント場を確保する。
幸い今日は比較的テントの数が少ない。
それにしても見渡す限り大きな山々に囲まれている。
大きな壁とでも言うべきだろうか。
涸沢名物のおでんやソフトクリームなどを食べるメンバーたち。
山で食べればなんでもうまい。
納得できる。
日も沈み、夜になると涸沢カールは私たちに違う顔を見せてくれる。
モノクロの闇の世界にテントの明かりが浮かび上がる。
そして、満天の星空。
一番きれいな色ってなんだろう?
一番ひかってるものってなんだろう?
僕は探してた 最高のGIFTを
山からのGIFT
翌朝、名物のモルゲンロートを見るために待機する。
光はどこにある?僕を照らしてくれよ
太陽よ 太陽よ 連れ出してくれるのか?
朝日が見えてきた
山々がオレンジ色に燃えはじめる
それは一瞬だった
この瞬間を無駄にはしない
帰りは来たルートを戻る。
しかし、帰り道は遠回りしたくなる
どこを行けばどこに着くか
過去の道なら迷うことはないから
雪渓が見えるルートへ行くことにした。
その後も黙々と歩き続け、全員無事に上高地に到着した。
全員疲れて何も言えなかった。
しかし、その思いの答え全員が知っている。
メンバーたちは口を揃えて言う。
「私たちはスイミーにならなければいけない」と。
どういうことか。
その真意を聞くことはできなかった。
またあるメンバーは言う。
「どういう結果が待っていようともこんなに夢中になれることなんてこれからの私にあるだろうか」と。
もしかすると彼らが本当に欲しかったものは山の絶景ではなく、山を一緒に登る仲間だったのかもしれない。
次に山に登るのは……
あなたの番です。
To be continued Senta