○ 土佐の国「修行の道場」は室戸岬にある24番札所の最御崎寺から宿毛市にある39番札所の延光寺までの19ヶ寺ですが、その間の里程は約400キロです。この道は、南国の温暖な気候に育まれた自然の植生や美しい海の景色が、厳しい行程を辿る遍路を慰め、勇気づけてくれると思われます。
とりわけ、高知市から西の道は海岸線を通りますが、曲がりくねった道を進むに連れて、新しい風景がパノラマとなって広がります。黒潮の恵みは路辺の植物などあらゆるものに及んでおり、菜の花、ツバキ、桜、海岸線に繁るウバメガシなどの照葉樹は南国の豊かさを感じさせてくれます。
○ この道を歩く遍路の方々は、一人で或いは2・3人でただ黙々と歩いておられます。どんな理由で1400キロを歩こうと決意されたのか、歩きながら何を考えておられるのか?とお聞きしたくなるほどです。歩き遍路の方々の中には、宵闇が迫っても人気の無い道を歩き続けておられ方もあります。札所で出会った歩き遍路の方にお聞きしましたが、寒い時は歩くことによって体を温め、暑い時は深夜や早朝も歩くとのことでした。このような修行に耐えた末に、悟りに近づけるのでしょう。
○ いろいろの方々とお会いして話しましたが、多くの方々は車で廻っておられます。家族や知人と乗用車で、或いは団体を組んで貸し切りバスで、またタクシーで廻っておられる方もあります。私は愛用のベンツではなく乗用車のカーナビに誘導されての旅ですが、1億400万円のハイテクキャンピングカーの方にもお会いしました。車の装備を見せていただきましたが、一般家庭2戸分の能力がある発電機、無線機器等のあらゆるI Tシステムを備え、屋根の上には2000万円のパラボラアンテナも装備されていました。NHKの中継車のような仕様とのことでした。
○ 今回の巡礼は、天候に恵まれた楽しく価値ある一人旅でした。遍路は白衣やすげ傘、金剛杖、ずた袋などを着けて、いわゆる「巡礼姿」で廻ります。白衣や傘、金剛杖には「同行二人」「南無大師遍照金剛」と書いてあり、金剛杖を「弘法大師」の身替わりと心得、ひとり旅でも常に携帯します。
○ 次の40番札所からは愛媛県に入ります。伊予の国は「菩提の道場 」といわれ、26ヶ寺の札所があります。今回の旅を顧みながら、近い将来に行こうと思っております。