日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(175) 「百獸之見我而敢不走乎」の「述語論理」について。

2019-04-16 09:20:38 | 訓読・論理学

―「昨日の記事(174)」の「続き」を書きます。―
従って、
(17)
③ 以吾從大夫之後。不敢不告也。
③ 吾れは大夫の後に従える以て、敢へてて告げずんばあらざるなり(論語、憲問第十四 22)。
に於ける、
③ 不敢不告也。
の場合も、
③ 必ず、告げるのだ。⇔
③ 告げないことは、決してしないのだ。
といふ、「意味」になる。
従って、
(17)
① 不敢不走。
の場合も、
① 必ず、走る。⇔
① 走らないことは、決してない。
といふ、「意味」になる。
然るに、
(18)
反語
とは、表現されている内容と反対のことを意味する言い方で、多くは疑問形同じ形であり、日本語でも、「そんなこと誰が知ろうか」と言う場合、「誰が知っているか」とたずねているのではなく、逆に「誰も知ってはいない」ということを言っているのである。けっきょく、肯定している場合は否定に、否定している場合は肯定の内容になる。
(旺文社、漢文の基礎、1973年、45頁)。
然るに、
(19)
② 敢不走乎。
は、「反語」である。
従って、
(17)(18)(19)により、
(20)
② 敢不走乎。
は、「疑問形」ではなく「反語」であるが故に、
① 不敢不走。
② 敢不走乎。
に於いて、
①=② である。
従って、
(17)(20)により、
(21)
② 百獸之見我而敢不走乎=
② 百獸之見(我)而敢不(走)乎=
② 百獸の(我を)見て敢へて(走ら)ざらんや。
に於ける、
② 敢不走乎。
といふ「反語」の場合も、
① 不敢不走。⇔
① 必ず、走る。⇔
① 走らないことは、決してない。
といふ、「意味」になる。
然るに、
(22)
1    (1)  ∃x{我x&∀y(獸y→見yx& 走y)} A
 2   (2)∃x∃y(我x&狐y&獸y&見yx&~走y)  A
  3  (3)     我a&∀y(獸y→見ya& 走y)  1UE
  3  (4)     我a                 3&E
  3  (5)        ∀y(獸y→見ya& 走y)  3&E
  3  (6)           獸b→見ba& 走b   5UE
   7 (7)  ∃y(我a&狐y&獸y&見ya&~走y)  A
    8(8)     我a&狐b&獸b&見ba&~走b   A
    8(9)        狐b              8&E
    8(ア)           獸b           8&E
    8(イ)                  ~走b   8&E
  3 8(ウ)              見ba& 走b   6アMPP
  3 8(エ)              見ba       ウUE
  3 8(オ)                   走b   エUE
  3 8(カ)               ~走b&走b   イオ&I
  3  (キ)          ~獸b           アカRAA
  3 8(ク)       狐b&~獸b           9キ&I
  3 8(ケ)    ∃y(狐y&~獸y)          クEI
  37 (コ)    ∃y(狐y&~獸y)          78ケEE
 23  (サ)    ∃y(狐y&~獸y)          27コEE
12   (シ)    ∃y(狐y&~獸y)          13サEE
12   (〃)    ある狐は獸ではない。          13
従って、
(22)により、
(23)
(1)あるxは我であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、yはxを見て、yは走る。 と「仮定」し、
(2)あるxは我であって、あるyは狐であって獸であり、yはxを見ても、yは走らない。 と「仮定」すると、
(3)あるyは狐であって獸でない。 といふ「結論」を得る。
然るに、
(24)
(1)すべての獸は、私を見れば、必ず走る。然るに、
(2)ある狐は、私を見ても走らない。   従って、
(3)ある狐は、獸ではなく(百獸の長である)。
といふ「推論」は、「正しい」。
従って、
(21)~(24)により、
(25)
② 百獸之見我而敢不走乎=
② 百獸之見(我)而敢不(走)乎=
② 百獸の(我を)見て敢へて(走ら)ざらんや=
② すべてのけだものたちは、わたし(の姿)を見れば、必ず(おそれて)逃げだすにちがいありません(旺文社訳、1973年)。
といふ「漢文訓読」は、
② ∃x{我x&∀y(獸y→見yx&走y)}=
② あるxは我であって、すべてのyについて、yが獸であるならば、yはxを見て、yは走る。
といふ「述語論理」に、相当する。


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