日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(133)「漢文・訓読・音読」について。

2019-01-08 18:23:49 | 訓読
―「昨日の記事(132)」を、書き直します。―
(01)
発音に関しては、John Pasdenと言うアメリカ人の言語学者が書いた通り、日本語と中国語の学習曲線は逆です。日本語を使って、「お寿司食べますか」と「忍者はどこですか」等を日本人が分かるように言い出すのが誰でも出来そうです。これに反して、中国語の場合、母国で数年間勉強した事があるのに、中国人に通用できない欧米人が多いです。中国語は四つの声調だけではなく、発音し難しい子音も多いです。ピン音で言えば、学習者によって、zhu, ju, qu, chu, shu, xu等のような音を正しく区別するのが大変です(【コラム】欧米人にとって、中国語と日本語のどちらが難しい)。
(02)
音読になると、特別に北京語に依頼する必要がない。北京語に依る音読が他の音読と比べて優れた正確性を有するわけでもない。その他に広東語、上海語、台湾語、ベトナム語、韓国語に依る音読も皆同じく重要視しなければならない。また言うまでもなく、 日本呉音漢音に依る音読も極東の他の音読と平等な地位を占める。古典中国語の文章を原文のまま、文法的な変化を加えないで直接に読む限り、どんな音読でも同じぐらいの価値がある。また厳格に言えば、北京語に依る音読は他の発音に依る音読と比べると、古典中国語の正しい理解のためには特別な欠点をいくつか示す。その欠点発音や文法に関するものである(二十一世紀の漢文-死語の将来)。
従って、
(01)(02)により、
(03)
例へば、
① 近塞上之人、有善術者。
② 馬無故亡而入胡。
③ 人皆弔之。
④ 其父曰、此何遽不爲福乎。
⑤ 居數月、其馬將胡駿馬而歸。
⑥ 人皆賀之。
⑦ 其父曰、此何遽不能爲禍乎。
⑧ 家富良馬。
⑨ 其子好騎、墮而折其髀。
⑩ 人皆弔之。
⑪ 其父曰、此何遽不爲福乎。
⑫ 居一年、胡人大入塞。
⑬ 丁壯者引弦而戰、近塞之人、死者十九。
⑭ 此獨以跛之故、父子相保。
⑮ 故、福之爲禍、禍之爲福、化不可極、深不可測也。
といふ「漢文」に対する、
① Jìn sāi shàng zhī rén, yǒu shàn shù zhě.
② Mǎ wúgù wáng ér rù hú.
③ Rén jiē diào zhī.
④ Qí fù yuē, cǐ hé jù bù wèi fú hū.
⑤ Jū shù yuè, qí mǎ jiāng hú jùnmǎ ér guī.
⑥ Rén jiēhè zhī.
⑦ Qí fù yuē, cǐ hé jù bùnéng wèi huò hū.
⑧ Jiā fùliáng mǎ.
⑨ Qí zi hǎo qí, duò ér zhé qí bì.
⑩ Rén jiē diào zhī.
⑪ Qí fù yuē, cǐ hé jù bù wèi fú hū.
⑫ Jū yī nián, hú réndà rù sāi.
⑬ Dīng zhuàng zhě yǐn xián ér zhàn, jìn sè zhī rén, sǐzhě shíjiǔ.
⑭ Cǐ dú yǐ bǒ zhī gù, fùzǐ xiāng bǎo.
⑮ Gù, fú zhī wèi huò, huò zhī wèi fú, huà bùkě jí, shēn bùkě cè yě.
といふ「中国語の発音」と、
① キンサイジョウシジン、イウゼンジュツシャ。
② バ、ムコボウ、ジニュウコ。
③ ジュンカイチョウシ。
④ キホヱツ、シカキョ、フツヰフクコ。
⑤ キョシュウゲツ、キバショウコシュメジキ。
⑥ ジンカイガシ。
⑦ キホヱツ、シカキョ、フツノウヰカコ。
⑧ カ、フリョウバ。
⑨ キシコウキ、ダジセッキヒ。
⑩ ジンカイチョウシ。
⑪ キホヱツ、シカキョ、フツヰフクコ。
⑫ キョイチネン、コジンタイニュウサイ。
⑬ テイソウシャインゲンjセン、キンサイシジン、シシャジュウキュウ。
⑭ シドクイハシコ、フシソウホ。
⑮ コ、フクシヰカ、カシヰフク、クワフツカキョク、シンフツカソクヤ。
といふ「日本漢字音」とを「比較した場合」、
「 日本漢字音 」の方が、「中国語の発音」よりも、「簡単」であり、尚且つ、
「中国語の発音」の方が、「 日本漢字音 」よりも、「(原文に対する)優れた正確性を有するわけでもない」。
然るに、
(04)
私自身は、既に、
① 近塞上之人、有善術者。
② 馬無故亡而入胡。
③ 人皆弔之。
④ 其父曰、此何遽不爲福乎。
⑤ 居數月、其馬將胡駿馬而歸。
⑥ 人皆賀之。
⑦ 其父曰、此何遽不能爲禍乎。
⑧ 家富良馬。
⑨ 其子好騎、墮而折其髀。
⑩ 人皆弔之。
⑪ 其父曰、此何遽不爲福乎。
⑫ 居一年、胡人大入塞。
⑬ 丁壯者引弦而戰、近塞之人、死者十九。
⑭ 此獨以跛之故、父子相保。
⑮ 故、福之爲禍、禍之爲福、化不可極、深不可測也。
といふ「漢文(塞翁ガ馬)」を、
① キンサイジョウシジン、イウゼンジュツシャ。
② バ、ムコボウ、ジニュウコ。
③ ジュンカイチョウシ。
④ キホヱツ、シカキョ、フツヰフクコ。
⑤ キョシュウゲツ、キバショウコシュメジキ。
⑥ ジンカイガシ。
⑦ キホヱツ、シカキョ、フツノウヰカコ。
⑧ カ、フリョウバ。
⑨ キシコウキ、ダジセッキヒ。
⑩ ジンカイチョウシ。
⑪ キホヱツ、シカキョ、フツヰフクコ。
⑫ キョイチネン、コジンタイニュウサイ。
⑬ テイソウシャインゲンjセン、キンサイシジン、シシャジュウキュウ。
⑭ シドクイハシコ、フシソウホ。
⑮ コ、フクシヰカ、カシヰフク、クワフツカキョク、シンフツカソクヤ。
といふ風に、「日本漢字音」で「暗唱」出来る。
従って、
(03)(04)により、
(05)
「中国語」ではなく、「漢文」にこそ「興味」がある私としては、今さら
① キンサイジョウシジン、イウゼンジュツシャ。
② バ、ムコボウ、ジニュウコ。
③ ジュンカイチョウシ。
④ キホヱツ、シカキョ、フツヰフクコ。
⑤ キョシュウゲツ、キバショウコシュメジキ。
⑥ ジンカイガシ。
⑦ キホヱツ、シカキョ、フツノウヰカコ。
⑧ カ、フリョウバ。
⑨ キシコウキ、ダジセッキヒ。
⑩ ジンカイチョウシ。
⑪ キホヱツ、シカキョ、フツヰフクコ。
⑫ キョイチネン、コジンタイニュウサイ。
⑬ テイソウシャインゲンjセン、キンサイシジン、シシャジュウキュウ。
⑭ シドクイハシコ、フシソウホ。
⑮ コ、フクシヰカ、カシヰフク、クワフツカキョク、シンフツカソクヤ。
といふ「日本漢字音による音読」を止めて、
① Jìn sāi shàng zhī rén, yǒu shàn shù zhě.
② Mǎ wúgù wáng ér rù hú.
③ Rén jiē diào zhī.
④ Qí fù yuē, cǐ hé jù bù wèi fú hū.
⑤ Jū shù yuè, qí mǎ jiāng hú jùnmǎ ér guī.
⑥ Rén jiēhè zhī.
⑦ Qí fù yuē, cǐ hé jù bùnéng wèi huò hū.
⑧ Jiā fùliáng mǎ.
⑨ Qí zi hǎo qí, duò ér zhé qí bì.
⑩ Rén jiē diào zhī.
⑪ Qí fù yuē, cǐ hé jù bù wèi fú hū.
⑫ Jū yī nián, hú réndà rù sāi.
⑬ Dīng zhuàng zhě yǐn xián ér zhàn, jìn sè zhī rén, sǐzhě shíjiǔ.
⑭ Cǐ dú yǐ bǒ zhī gù, fùzǐ xiāng bǎo.
⑮ Gù, fú zhī wèi huò, huò zhī wèi fú, huà bùkě jí, shēn bùkě cè yě.
といふ「中国語による音読」を始める気にはなれない。
然るに、
(06)
私の場合は、
① 近(塞上)之人、有〔善(術)者〕。
② 馬無(故)亡而入(胡)。
③ 人皆弔(之)。
④ 其父曰、此何遽不〔爲(福)〕乎。
⑤ 居數月、其馬將(胡駿馬)而歸。
⑥ 人皆賀(之)。
⑦ 其父曰、此何遽不[能〔爲(禍)〕]乎。
⑧ 家富(良馬)。
⑨ 其子好(騎)、墮而折(其髀)。
⑩ 人皆弔(之)。
⑪ 其父曰、此何遽不〔爲(福)〕乎。
⑫ 居一年、胡人大入(塞)。
⑬ 丁壯者引(弦)而戰、近(塞)之人、死者十九。
⑭ 此獨以(跛之故)、父子相保。
⑮ 故、福之爲(禍)、禍之爲(福)、化不〔可(極)〕、深不〔可(測)〕也。
といふ「漢文」を、
① 塞上に近き之人に、術を善する者有り。
② 馬、故無くして亡げ而胡に入る。
③ 人皆之を弔す。
④ 其の父曰はく、此れ何遽ぞ福と爲ら不らん乎。
⑤ 居ること数月、其の馬、胡の駿馬を將い而歸る。
⑥ 人皆之を賀す。
⑦ 其の父曰はく、此れ何遽ぞ禍と爲る能は不らん乎。
⑧ 家良馬に富む。
⑨ 其の子、騎を好み、堕ち而其の髀を折る。
⑩ 人皆之を弔す。
⑪ 其の父曰はく、此れ何遽ぞ福と爲ら不らん乎。
⑫ 居ること一年、胡人大いに塞いに入る。
⑬ 丁壮なる者、弦を引き而戦ひ、塞に近き之人、死する者十に九なり。
⑭ 此れ独り跛之故を以て、父子相保てり。
⑮ 故に、福之禍と爲り、禍之福と爲るは、化極む可から不、深測る可から不る也。
といふ風に、「訓読」で「暗唱」出来る。
然るに、
(07)
① 近塞上之人、有善術者(塞上に近き之人に、術を善する者有り)。
に対して、「口語訳」は、例へば、
①(ある国境の)砦の付近に住んでいる人で、占いの術の上手な者があった(旺文社、漢文の基礎、1973年、43頁)。
である。
然るに、
(08)
① 砦の近くに住んでいる人で、占いの術の上手な人がいる。
に対する、「グーグル翻訳」は、
③ 有些人住在堡壘附近,並且有很好的算命技巧。
である。
然るに、
(09)
① 近塞上之人、有善術者。
② 塞上に近き之人に、術を善する者有り。
であれば、「平仮名」を除けば、
① 近塞上之人、有善術者。
② 塞上近之人、術善者有。
であるため、「漢字」自体に、「変り」は無い。
然るに、
(08)(09)により、
(10)
① 近塞上之人、善術者。
③ 有些人住在堡壘附近,並且很好的算命技巧。
に於いて、両者は、「」の「一字」くらひしか、「一致を見ない」。
従って、
(08)(09)(10)により、
(11)
① 近塞上之人、有善術者。
② 塞上に近き之人に、術を善する者有り。
③ 有些人住在堡壘附近,並且有很好的算命技巧。
の、「漢字(単語)」を、「比較」した場合、
①と② であれば、
①=② であるのに対して、
①と③ であれば、完全に
① ≠ ③ である。
従って、
(11)により、
(12)
① 近塞上之人、有善術者。
② 塞上に近き之人に、術を善する者有り。
③ 有些人住在堡壘附近,並且有很好的算命技巧。
といふ、
① 漢文
② 日本語
③ 中国語
を「比較」した場合、
①と② は、「似てゐる」ものの、
①と③ は、「全く、似てゐない」。
従って、
(13)
① 近塞上之人、有善術者。
に対する「翻訳」として、
③ 有些人住在堡壘附近,並且有很好的算命技巧。
の方が、
② 塞上に近き之人に、術を善する者有り。
よりも、「原文忠実である。」といふことは、有り得ない
従って、
(03)(13)により、
(14)
(α)「現代中国語」は知ってゐても、「現代日本語」は知らない。
(β)「現代日本語」は知ってゐても、「現代中国語」は知らない。
といふ場合に於いて、「漢文」を学ぶ上で、
(α)の方が、(β)よりも、「有利」である。
といふことは、有り得ない
従って、
(15)
「支那の言語や文字を研究するのに、漢文と支那語の様な区別を設けてゐるのは、世界中、日本だけで、支那はもとより、ヨーロッパやアメリカで支那学を研究するにも、そんな意味のない区別など夢にも考へてゐない。西洋人が支那のことを研究するには、何よりも先き、支那の現代の言葉を学び、現代人の書く文章を読み、それから次第に順序を追うて、古い言葉で書いた書物を読んで、支那民族の文化の深淵を理解する。アメリカの大学で支那のことを研究する学生は、最初の年に現代語学現代文学を学び、次の年に歴史の書物を読み経書を習ふさうである(勉誠出版、「訓読」論、2008年、57頁)。からと言って、日本人も、さうすべきである。といふことには、ならない。
(16)
① 近塞上之人、有善術者。
といふ「漢文(白文)」を、
① 塞上に近き之人に、術を善する者有り。
といふ風に、「訓読」し、逆に、
① 塞上に近き之人に、術を善する者有り。
といふ「訓読」を、
① キンサイジョウシジン、イウゼンジュツシャ。
といふ風に、「音読(復文)」します。
然るに、
(17)
そのやうに、
① 近塞上之人、有善術者。⇔ 塞上に近き之人に、術を善する者有り。
① 塞上に近き之人に、術を善する者有り。⇔ キンサイジョウシジン、イウゼンジュツシャ。
といふことを、「何回も、繰り返してゐる」と、
① 塞上に近き之人に、術を善する者有り。
といふ「訓読」と、
① キンサイジョウシジン、イウゼンジュツシャ。
といふ「音読」の、両方を、「暗記」出来ます。
(18)
② から ⑮ についても、そのやうにすれば、
① キンサイジョウシジン、イウゼンジュツシャ。
② バ、ムコボウ、ジニュウコ。
③ ジュンカイチョウシ。
④ キホヱツ、シカキョ、フツヰフクコ。
⑤ キョシュウゲツ、キバショウコシュメジキ。
⑥ ジンカイガシ。
⑦ キホヱツ、シカキョ、フツノウヰカコ。
⑧ カ、フリョウバ。
⑨ キシコウキ、ダジセッキヒ。
⑩ ジンカイチョウシ。
⑪ キホヱツ、シカキョ、フツヰフクコ。
⑫ キョイチネン、コジンタイニュウサイ。
⑬ テイソウシャインゲンjセン、キンサイシジン、シシャジュウキュウ。
⑭ シドクイハシコ、フシソウホ。
⑮ コ、フクシヰカ、カシヰフク、クワフツカキョク、シンフツカソクヤ。
といふ、「日本漢字音(呉音・漢音・唐宋音・慣用音の、ごちゃ混ぜ)」で、
① 近塞上之人、有善術者。
② 馬無故亡而入胡。
③ 人皆弔之。
④ 其父曰、此何遽不爲福乎。
⑤ 居數月、其馬將胡駿馬而歸。
⑥ 人皆賀之。
⑦ 其父曰、此何遽不能爲禍乎。
⑧ 家富良馬。
⑨ 其子好騎、墮而折其髀。
⑩ 人皆弔之。
⑪ 其父曰、此何遽不爲福乎。
⑫ 居一年、胡人大入塞。
⑬ 丁壯者引弦而戰、近塞之人、死者十九。
⑭ 此獨以跛之故、父子相保。
⑮ 故、福之爲禍、禍之爲福、化不可極、深不可測也。
といふ「漢文」を、「暗唱」出来ます。