沖縄Daily Voice

沖縄在住の元気人が発信する

のこのこせそこ~アートの似合うまちぐゎーから~ vol.4 瀬底芳章

2009年09月28日 | 月曜(2009年9~10月):瀬底芳章さん
みなさんこんにちは、のこのこせそこ第四回目です。
前回まで街ばっかり紹介していて肝心のアート関係にまったく
触れていないことに今さらながら気付いた瀬底です。
そこで今回からは沖縄のアーティストやアートシーンをしっかり
紹介していきます。
と、思っていたところ、タイミングが良いことに沖縄出身で世界で
活躍している照屋勇賢さんの個展が南風原の画廊沖縄で開催されていたので
早速『照屋勇賢展―Cut―』に行ってきました。




ニューズウィーク日本版「世界が尊敬する日本人100人」に選ばれたことで
ご存じの方も多いかと思いますが、照屋さんはニューヨークを拠点に活躍している
現代アートの作家です。
実は個人的にお世話になっている先輩なので、恐れ多くてあまり偉そうに評論
めいたことはできないのですが照屋さんの作品を観たことがないという方の為に
彼の作風等を簡単にご紹介したいと思います。

照屋勇賢といえば「紅型を使った作品」を思い出す方も多いかと思います。実際
今回の展覧会でも紅型を使った新作シリーズ「Heroes」が発表されています。
彼の代表作である「結ーい、結ーい(You-I, You-I)」の紅型による戦闘機や
落下傘部隊の表現の印象が強烈なため沖縄に焦点を当てた作家のように思っている
方も多いかもしれません。

しかし照屋勇賢という作家は「沖縄」を表現する作家ではなく「彼が生きている
現代社会」を表現する作家であると、僕は思います。彼の作品からは作家自身が
生きる社会へ対する作家自身の視線がはっきりと感じ取れます。
沖縄をモチーフとすることが多いのは単に彼が沖縄で生まれ育ったからでしょう。
彼の作品を追っていくとそのことが明確にわかります。


照屋勇賢の公式サイトで、「照屋勇賢は日用品を巧みに操作し、変形し、現代の社
会文化を反映するような意味をもたせる(中略)照屋の作品は拡大する現代の大量
消費社会、天然資源の枯渇、グローバリズムの抱える問題―それが地域文化と伝統
とアイデンティティを脅かしていることなど―を主題としている。」と書かれてい
る通り、彼の作品からは地域とグローバリズムの混在からくる矛盾や疑問が提示さ
れています。

また、彼のこの姿勢は終始一貫しており、僕の知る限りでは大学生時代から既に現
在のような社会の現状を切り取る作品を制作していました。

さて、前置きが長くなりましたが展覧会の様子をレポート。


「結ーい、結ーい(You-I, You-I)」シリーズ

今回は出品されていなかったのですが、下の画像のように着物として仕立てた作品
もあります。





新作「Heroes」の展示風景です。


安室奈美恵


尚寧王



瀬長亀次郎



具志堅用高


この作品では安室奈美恵、尚寧王、瀬長亀次郎、具志堅用高といった沖縄出身の
英雄・スター達が紅型で描かれています。
作品の題材、技法から一見アンディー・ウォーホルを想起させますが、アンディ
ー・ウォーホルが世界的な著名人達の肖像を当時の常識からすれば油絵等の一点
モノで描く所をあえて大量印刷技術であるシルクスクリーンによる印刷を用いる
ことで流通され消費されていくイメージとしての肖像を表現しているのに対し、
こちらでは沖縄という地域での著名人を紅型という沖縄の伝統技法を用いているの
が特徴といえるでしょう。単純な見方をすればグローバル対地域文化となるのでし
ょうが、紅型という技法が琉球王朝時代には一回使った型紙は焼却させていたとい
う印刷技術でありながらも一点モノであったという事まで想い至ると別の味わいが出てくると思います。




「Corner Forest」
トイレットペーパーの芯から枝を切りだした作品。



「告知―森(Notice-Forest)」
「結ーい」シリーズと並ぶ代表作。使い捨ての紙袋の側面を切り抜き、木を表現した作品です。
紙袋の種類によって様々な表情の木ができるのですが、画像の作品は桜のように見えます。

「Corner Forest」と「告知―森(Notice-Forest)」の他にもアメリカのドル紙幣を切り抜きした作品や今個展のフライヤーから切り抜きして若葉を表現した作品が展示されており、まさに「Cut」展という感じでした。紅型も型紙を作るのである意
味Cutですね。



「Dawn」
こちらは上記シリーズとはちょっと異なる趣の作品ですね。僕個人としては一番好
きなシリーズです。
ブランド品や銃などの武器にオオゴマダラという蝶のさなぎを付け、人工的な物質
が持つフォルムを有機的で自然なイメージへ倒錯させます。消費や暴力といった人
為的な行為の象徴につけられた「さなぎ」という未来の象徴に託された想いが照屋
勇賢さんからのメッセージとして観るものに訴えるものがあります。

全体としてみても、新作もあり小作品が主ではありますが代表作や旧作が見渡せる
プチ回顧展的な構成で非常に良い展覧会でした。
(画像はすべてギャラリー及び本人の許可を得て掲載、HPからの転載もあり)




text:瀬底 芳章




              ★沖縄観光の旅行雑誌を作る会社が素顔の沖縄を紹介するサイト

最新の画像もっと見る

コメントを投稿