知り合いの店が、
西表島に工房を移転することになったと聞き、
閉店の日に、那覇の公設市場前にある彼の店をたずねた。
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間口1メートルほどのその店は、野菜や、肉、お土産物の店がひしめきあうその界隈に、ぽこっと開いた魔法の洞窟みたいにたたずんでいた。ともすると通りすがってしまう。でも、何かの魔法にかかったように、スーッと人を引き付ける力をいつも放っていた。
あの日、私は子供をつれてあっちの角を曲がり、こっちの角を曲がり、この魔法使いの洞窟を訪ねた。
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Amorphous GlassworksのIndependent glass art shop「匠商店」を営む岩佐匠(いわさ・しょう)さん。
最終日の店内にて。
彼は、ランプワークによるガラス工芸作品を展開している。
ネックレスやピアス、香水瓶、インセンスバーナーなどを作っている。
店の中に入りこむと、そこには、いつも、見たこともない世界が広がっているのだった。
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出会いは、彼が、私のパートナー、ダイキのジェンベ(西アフリカの太鼓)のワークショップにやってきたことから始まった。
その頃から、自分の仕事や生活と、ワークショップで行われているリズムの旅を重ねて理解しようとしてくれている人だった。
彼が、ブログに書いた「太鼓が教えてくれたこと」を抜粋して掲載します。
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今はやめてしまったのだけど、那覇に来て最初の3年間くらい
ジェンベと呼ばれるアフリカの太鼓を毎週習っていたことがあった。
どうやら自分にはそっちの才能が無いらしく、当初の目標だった
アドリブのソロは最後まで叩けるようにはならなかった。
でも下手は下手なりに面白い発見がある。
伝統的なジェンベの曲は基本的にファースト、セカンド(場合によってはサード)
と呼ばれる基本の短いリズムをでメンバーで分担して繰り返しで叩き
その上にソロ演奏者の太鼓をのせていくというものなのだけど
いつもこの基本の繰り返しのリズムを教室の皆と一緒に
ただ正確に叩く事を追求するのが好きだった。
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一対一でファースト、セカンドのリズムを分担して二人で一緒に叩く時はよく緊張したものだ。
多人数の時のようにごまかしが利かないから。
この時、自分から積極的に動いて相手のテンポに合わせようとしても
良いセッションは生まれない。
合わせようという意識自体が、二人のリズム、フィーリングにズレがあることを表している。
だから合わせよう合わせようとしているうちは絶対に合わないのだ。
かといって共演者の太鼓を意識せずに完全にこっちのペースで叩き
相手に合わせてもらう事を期待しても、立場が変わっただけで結局同じ事になってしまう。
完全なリズムのシンクロに大切な事はお互いにセッション相手の存在をしっかりと認識し
相手に心を開いたまま、その時自分の叩きたいリズムを探っていく。
これが相互に調和したときに、なんとも言えないハーモニーが生まれてくるのだ。
楽器を演奏する人達は皆感じていることなんだろうけど自分にとっては
新たな発見で、いつも起きる訳では無いのだけどこの感覚はなかなか素晴らしい体験だった。
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そしてまたガラスも同じで、世間というか、流行やカテゴリーに媚びて
合わせすぎても“合わせた感”が出てしまい面白いものは作れない。
かといって自分の内にこもり、一人で好きなものだけ追求したって天井は知れている。
今までのところの限界を素直に認め、自分なりに世の中をよく観察して
現在の立ち位置をしっかり確認し、そこから無理なく作れるものをしっかりと作っていく。
そうすれば共演者である「世の中」のどこかと、作ったものが自然に共鳴して
一つの良いセッションになっていくのだと思う。
大切なのは自信を持ってリズムを刻むこと。
良いハーモニーを作る為には必要の無い気負いや弱気、驕りなどの
余計な要素をできるだけ省いていくこと。
その為にはまず心に決めたリズムを自分のものにできるよう
日々ストイックに繰り返す事が大切なんだと思う
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彼の理解や発見の仕方にふれて、ダイキは、本当によろこんでいた。
そして、あの頃から比べると、彼は今、自分の世界をつかみ、静かだが自信に満ちたオーラを全身から放っている。
私はネックレスをひとつ買った。
彼の西表島での新しい展開を楽しみにしています。
いつか訪ねていこう!
text:吉見綾子
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日々、精進している人だからこその深いひと言です。
何度も市場周辺には行ったのに、お店の存在に気づいてませんでした。ごめんなさい。
西表島でがんばってほしいですね!