おかずさんの読書

ビジネス・歴史を中心に読んだ本の感想を記載

中国化する日本

2012-04-22 17:55:27 | 国際(BRICS)
「中国化する日本」 與那覇追潤箸 文藝春秋

 色々な文献や映画などを引用しながら「最先端の歴史学」の通説を述べてあるが、世界の歴史を「中国化」と「江戸化」の二元論の争いで単純化するもので、とりあえず、私には理解不能。なんとか最後まで読破したが、読むのがすごく苦痛だった。

 筆者によれば、世界の近代化は中国の宋から始まっている。すなわち、貴族制度を廃止し皇帝独裁のもと、「自由」と「機会の平等(科挙による役員への登用)」が達成されたとする。したがって、冷戦後の資本主義によるグローバルな競争などは、宋朝時代の全地球大への引き伸ばしに過ぎないとなる。
 一方、日本は、江戸時代に宋のグローバル(チャイナ)・スタンダードとは異なり競争を制限した独自の社会(藩という地方分権、住居・身分の固定した「イエ」)を構築。
 そして、1000年の成果の動きを「中国化」と「江戸化」の対立を軸に解説。
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近現代 ギリシャの歴史

2012-04-15 22:23:14 | 国際(欧州・米国)
「物語 近現代 ギリシャの歴史」 村田奈々子箸 中公新書

 古代ギリシャの栄光から、現在のユーロ危機の原因なっているギリシャの財政破たん。この間の長いギリシャの歴史をほとんど知らなかった私にとって、とっても新鮮で楽しかった一冊。
 日本人にとって、日本人としての「民族」や日本という「国家」は、長い歴史の中で自然にかつ当然に確立しているが、都市国家が複数存在していた古代ギリシャ(多神教)、ビザンチン帝国時代(キリスト教)、オスマン帝国時代など、国家、領土、宗教などが変遷しているギリシャは、国家や民族という定義がなかなか固まらなかったことがよく理解できた。

 主な内容は以下のとおりかな。
・古代のギリシャに国家のアイデンティーを置き、古代ギリシャ(一般人はしゃべれない)の一種を公用語とする勢力と、多くギリシャ人がしゃべる口語の争い
・領土拡大を目指し、コンスタンティノープル獲得を夢見た「メガリ・イデア」の運動と挫折
・闘う政治家ヴェニゼロスの改革
・第二次大戦時、ドイツ軍とイギリス軍それぞれの思惑により、ギリシャ国民同士が殺しあう「兄弟殺し」に発展
・戦後の軍事独裁(君主制の廃止、女性のミニスカート禁止、学生の抗議行動への武力弾圧など)
・トルコ系住民とギリシャ系住民におるキプロスの分断
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昭和天皇

2012-04-08 15:01:50 | 歴史(明治以降)
「昭和天皇 理性の君主の孤独」 古川隆久著 中公新書

 昭和天皇の幼少期から亡くなるまでを多くの資料に基づき、丹念に書きつづっている。

 本書によれば、昭和天皇の政治思想は、政党政治を前提とした大衆的な「立憲君主制」であり、「協調外交」。また、「天孫降臨神話」を否定し皇室の「民本化」も図っている。
 
 初めて知る内容が多くあったが、驚きをもって読んだの以下のとおり。
  ・日本陸軍において、天皇と陸軍の意志が異なった場合、天皇の意志が「皇祖皇室の遺訓」に合致していないと陸軍が判断したときには、軍の最高司令官である現天皇の意向に反しても問題ないとする考え方があったこと(これでは、誰も軍部の独走を止められない)。
  ・昭和天皇は、戦後も内奏(大臣が管掌事項について1対1で詳細に説明)を望んでおり、多くの大臣がこれに応えるとともに、天皇が政治的発言をしていたこと(発言が政治に影響を与えたか否かは別問題)。
  ・昭和天皇生涯最良の思い出は、皇太子時代のヨーロッパ外遊であり、天皇崩御後に、机の引き出しから「パリの地下鉄の切符」が出てきたこと(戦前の憲法下でも天皇として不自由な思いをしてきたことがうかがわれ、悲しい)。
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限界集落の真実

2012-04-05 22:13:36 | 社会
「限界集落の真実」 山下祐介著 ちくま新書

 限界集落という概念が出来てから20年。なんとなく、どんどん消滅しているイメージを持っていたが、本書では、丹念に現場を訪問・調査し、ほとんど消滅した集落がないことを明らかにしている(政府発表での消滅数には、ダム建設に伴う集団移転などが含まれている)。

 実際に訪問・調査したうえで、限界集落の問題点の本質を語っており納得性が高い。

 本書によれば、確実に集落の高年齢化は進んでいるが、そこにいる高齢者は元気に集落を運営していること(ただし、今後問題が顕在化する懸念はある)、高齢者の長男などが比較的近くに住んでおりサポートしていることなどの実態があり、簡単に集落は消えない。
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