おかずさんの読書

ビジネス・歴史を中心に読んだ本の感想を記載

組織の思考が止まるとき

2011-06-26 18:13:41 | ビジネス
「組織の思考が止まるとき」 郷原信郎著 毎日新聞社

 コンプライアンスとは「法令順守」ではなく、「社会的要請に応えること」という筆者の考え方を、具体的事例を交えながら、分かりやすく解説している。最近読んだ本では、ナンバーワン。目からウロコの落ちることが多く、読み終えた後は満足感。

 元検事で法務大臣の諮問機関である「検察の在り方検討会議」の委員である筆者は、本書の冒頭で、村上氏の無罪が確定した郵便不正事件を取り上げ、検察の対応の誤りを指摘。
 筆者によれば、前田検事によるフロッピーディスクの改ざんによる証拠隠滅は「手段」でしかなく、本来、村上氏を不当に逮捕・拘留した特別公務員職権濫用罪とすべき。検察の組織内で解決しようとし問題を矮小化している。

 その他、印象に残ったのは以下のような内容。
  ・佐藤栄作への犬養法務大臣の指揮権発動は、捜査に行き詰まった検察側が「名誉ある撤退」をするために、吉田首相に持ちかけた策略。
  ・郵便不正事件では、損害を「200億円」とマスコミが報道しているが、正規の料金ならそんなに発注しないはずで、実際の被害ではない(問題の本質は、柔軟な価格設定ができない「古色蒼然たる郵便法」)
  ・不二家の「消費期限切れ原料使用」は安全性や品質にはまったく問題のない「形式的なコンプライアンス違反」に過ぎないが、不二家が曖昧・不特定な事実でマスコミ対応をして問題が沸騰
   
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灼熱アジア

2011-06-15 22:01:52 | 国際(アジア)
「灼熱アジア」 NHKスペシャル取材班  講談社

 NHKスペシャルで放映されたものを本にまとめたもの。
 中国やインドではなく、タイ、インドネシア、中東などの焦点をあて、そこで奮闘する日本企業を描いている。国内市場が停滞・縮小する日本において、企業が生き残りをかけてアジア各国で激しい競争の中で戦っていることを、「脱日入亜」というタイトルで教えてくれる。
 ・ タイのメーカーに買収された日本の金型メーカー「オギハラ」。そこからがタイに技術指導に派遣された日本の技術者の苦悩(「技術を盗め」的な日本の指導法でうまくいかない)。
 ・ 世界第4位の人口を擁するインドネシア。三井物産やみずほコーポレートなどが、日本の企業の進出を支援している。
 ・ 中東で千代田化工が、厳しい納期の中でLNGプラントを建設している。
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メガチャイナ

2011-06-12 17:31:50 | 国際(BRICS)
「メガチャイナ」 読売新聞中国取材班 中公新書

 13億人もの人口を抱えながら、高度成長を続ける中国。書店に行けば多くの書籍があふれ、ニュースでのよく中国のことがでる。
 本書では、この中国が世界の注目を集める理由を、「中国の不透明な未来は、世界の不確実な未来ともリンクし、出口の見えない難題を我々に突き付けている」からとまとめている。

 民主・人権・法治という価値観を共有できない中国が、経済・軍事の面で確実に影響を増していく現状・未来。確かに、誰も未来を予想できないと思う。
 本書で、面白かったのは以下ののとおり。

  ・輸入エビ(ロブスター類)は、中国に買い負けることから、日本の輸入量は20年前に4分の1に減少
  ・米国生まれは、米国国籍を取得できることから、渡米出産ツアーが盛況(上海に正規の業者だけでも5社)
  ・中国政府は、中国語の普及に向けて、世界88カ国で554校の「孔子学院」を開校し、全面的にバックアップ(軍事だけでなく、ソフトパワーの強化も戦略的に展開)
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風力発電の不都合な真実

2011-06-04 16:51:52 | エネルギー
「風力発電の不都合な真実」  武田恵世著 ㈱アットワークス

 本職が歯科医師で、日本鳥学会に所属し野鳥観察などをする筆者。風力発電の反対運動もやっている。
 本書は、筆者の経験を中心に、以下のような風力発電の問題を徹底的に主張している。
  ・バードストライク(鳥類が風車などにあたり死ぬ)
  ・周辺住民の健康被害(騒音、ストロボ効果、低周波など)
  ・周辺環境の破壊(林道などの設置による動物の減少など)
  ・二酸化炭素の削減に無効果(発電量が小さく不安定であるため、火力発電所などの出力調整はしていない)
  ・低稼働率(建設することで補助金を得て利益を得られるので、建設後の稼働状況はあまり無関心)

 記載してあることは概ね事実かなと感じるが、風力発電の企業を建設するために何でもする悪徳企業のように記載したり、風力発電が原因かどうかわからないものもすべからく風力発電による健康被害と主張しているなど、はじめから風力発電の全否定の主張にとまどう。

 人類が文明社会を維持するうえで、電力は不可欠で、すべての発電方式にマイナス面はある(火力:二酸化炭素排出、ダム:環境破壊、原子力:放射能、太陽光:高い発電単価&出力が不安定など)。プラス面も含めた多面的な検討が必要。

 また、本書では外国での反対運動や健康被害に言及しているが、ドイツやスペインなど、風力発電を大きく推進している国の事実や取り組みも言及してほしかった。

  
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