おかずさんの読書

ビジネス・歴史を中心に読んだ本の感想を記載

知覧からの手紙

2011-08-28 13:21:03 | 社会
「知覧からの手紙」 水口文乃著 新潮社

 夏休みの家族旅行で知覧特攻平和会館に行き、多くの特攻隊員の手紙・遺書などを読んだが、その中で印象に残った手紙に関する本を、当該会館で購入。
 
 本書は、太平洋戦争中に特攻隊で戦死した穴沢利夫少尉の婚約者だった伊達智恵子さんの話を聴き取って記録したもので、二人の出会いから、婚約、戦死、その後が語られている。戦争という時代に向き合いながら、 2人の深い愛情、国を愛する心などがつづられており、久しぶりに読書しながら、悲しさ・感動で涙がでた。

 国のために志願して特攻隊に入ることについて、「あなたたちは、命は尊いものだと教えられているでしょうけれど、あの時代は、命は国のために捨てるべきものだったの。今とは、あまりに価値観が違うから、わからないと思うことも当たり前かもしれないわね」という伊達さんの言葉が重い。

 そして、穴沢さんが特攻として出撃する直前に書いた手紙。「あなたは、今後の一時々々の現実の中に生きるだ。穴沢は現実の世界にはもう存在しない。」として、婚約者の伊達さんに自分のことは忘れ将来を歩むことを求める一方、最後に「智恵子 会いたい、話したい、無性に」と心情をつづる。

 

 

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国難に克つ

2011-08-23 21:42:20 | 政治
「国難に克つ」 櫻井よしこ著 ダイヤモンド社

週刊ダイヤモンドなどへの投稿を集約したもので,日本の現状に対する筆者の危機感が伝わってくる。
中国の膨張・拡大に対する日本の戦略なき外交の危険さと,国家感なき民主党政権への非難が本書の柱で,筆者のぶれない姿勢が美しい。読み終えると,あらためて民主党政権の戦略性・一貫性のなさが浮かび上がる。

 和歌山県のイルカ漁が野蛮・残忍として非難される一方,デンマークでは多数の鯨を浅瀬に追い込み海を赤くして殺していることが非難されていないことを例に,国際社会での情報発信の必要性を説いているところは,まさにそのとおり。



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経済成長は不可能なのか

2011-08-07 18:38:24 | 経済学
「経済成長は不可能なのか」 盛山和夫著 中公新書

 社会学が専門の筆者が、多くの参考文献をベースに日本経済の不況脱出を論じた一冊。これまでにあまり聞かない論点もあり、本当に面白い。一日で読んだ。
 
 筆者はが考える失われた20年の原因は円高。通貨は経済の実態に応じて変動するという考え方から見れば、原因と結果が逆だが、この視点は私は初めてで新鮮な驚き。長年の円高で膨大な雇用が海外に流出し、地方経済が疲労。
 この解決方法として、筆者は、日銀による国債の引き受けを主張。

 また、少子化の解決に向けて惜しみない財政支出を主張している。

 財政削減と規制緩和による財政再建や経済成長については厳しく否定し、政府が行うべき必要な支出は増税してでも行うことがよいと主張(ただし、当面は国債の増発で対応)。
 
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エネルギー論争の盲点

2011-08-07 11:29:50 | エネルギー
「エネルギー論争の盲点」 石井彰著 NHK出版新書

 本書の最後に、野球に例えて日本の進む道を筆者が整理している。一番・二番バッターに風力発電・太陽光発電、3番・5番に石油と原子力、4番が天然ガス(石炭はどこと思うが、私も基本的に同意見)。

 筆者は、原子力か再生可能エネルギーかの二者択一的な考え方ではなく、天然ガスの積極的な活用とエネルギー源の地域の分散化・多様化を説く。
 また、以下のように既存のエネルギー論争にもバッサリと切りこんでいる。
  ・「石油はもうすぐ枯渇する」は嘘(→化石燃料全体で数100年はもつ)
  ・太陽光発電等は情報不足から過大な期待(→太陽光や風力では根本的な解決にならない)

 面白かったのは、「第1章 エネルギー問題がなぜ重要なのか」で、人類とエネルギーの関係を明らかにしている点。人類は外部エネルギーとして「火」を活用することで誕生し、その後の発展はエネルギーの発見と歩調を共にしてきている。現在の文明は、石炭・石油の利用にリンクしており、再生可能エネルギーだけでは、現在の文明と人口は全く保つことができないとしていること。 
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