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薬にたよらないメンタルヘルスの改善 №275

2019-12-02 17:04:45 | 公認心理師
筑波大学文京キャンパスで行われた、日本カウンセリング学会認定カウンセラー会に出席しました。会長の飯田俊穂先生(安曇野ストレスケアクリニック)の、「脳科学の進歩とカウンセリング」の講演は大変興味深いものでした。講演の中で、イギリスにおけるうつ病治療の実験について紹介されました。
 424人の重度のうつ病患者を抗うつ薬による治療グループとマインドフルネスによる治療グループに分けて治療し、さらに2年間追跡調査したところ、2つのグルーブ間の再発率に差がないことがわかったということでした。抗うつ薬はうつ状態になりにくい状態を強制的に作り出すので、効果が期待できる反面副作用の問題があります。しかし、マインドフルネスは「今ここ」だけに集中し、心のあり方を変えるだけですから、副作用の心配はありません。
 しかし、マインドフルネスよりも、もっと高い効果を得られるのではないかといわれるのが、森林浴等による自然との触れあいということでした。アメリカのハーバード大学付属病院の調査によると、都市部に住んでいる人たちに比べて、自然が多いエリアに住む人たちのがん死亡率はマイナス13%、呼吸器疾患による死亡率は34%も少なかった。ストレスや大気汚染等のレベル等様々な要因がありますが、メンタルの改善によるところが30%程度あると推測できるということでした。私たちは自然に触れると、心が癒やされ、リラックスした気分になりますができますが、それが、科学的にも裏付けられたということでしょうか。
 日本でも、千葉大学の宮崎良文教授等のグループが、「自然セラピーの予防医学的効果について」の研究に取り組み、森の中を15分歩くだけで、都会を散歩した人たちに比べ、ストレスホルモンのコルチゾールが16%減少し、血圧は2%、心拍数も4%、それぞれ低下したということです。宮崎教授によると、人類は自然の中で長い時間をかけて進化してきたので、自然に囲まれていると体がリラックスするのだということです。
 自然と触れあうことでのリラックス効果は、メンタルヘルスの改善にも役立つということは前述の通りですが、ストレスフルな場面では、直接自然と触れあわなくても、風景写真を見たり、緑色ものを見たりするだけでも、心拍数が低下し、副交感神経の働きが高まり、リラックス効果があるということです。
 都会のマンションの一室でゲームにはまり、交感神経を高ぶらせている青少年には、せめて、プランターで観葉植物や花を育てて、こころを癒してほしいものです。