どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

ヘビと船長

2022年08月30日 | 絵本(昔話・外国)

    ヘビと船長/ふしみ みさを・文 ポール・コックス・絵/BL出版/2021年

 

 悪いことが重なって船を失った船長の楽しみは、朝早く散歩すること。

 船長は海辺に住むヘビに、毎日、やさしく声をかけていました。そんなある朝、とつぜんヘビが話しかけてきました。

 船大工に頑丈な船を作るよう頼み、そしてふだんの二倍のお金を払うということ。

 船長が、びっくりしながらも、言われたとおり頼むと、つぎに、12人のたくましい船乗りをやとい、ふだんの二倍のお金をはらうということ。

 ヘビは大きな木箱に入り、船長、12人の船乗りとともに港をでます。船乗りはどこへむかっているのか誰一人しりませんでした。

 船長は毎日、船底のヘビに会いにいきましたが、ある日、ヘビは、空と海がひとつになるような大嵐が来る。嵐の真夜中にやってくる巨大な黒い鳥を打ち落とさなくてはならないといいます。船長が船乗りに訪ねると、ひとりが名乗りをあげます。船長は、ヘビがくれた元気のでる薬を、船乗にわたし、その薬をのみこんだ船乗りは、黒い鳥を打ち落とします。

 それから数日すぎたころ、ヘビは、みえてきた港に船をつけ、足の速い船乗りに、丘の上の小さな家にいくようにいいます。その家には、ひどく年とった赤目のおばあさんがいて、火打ち金と、火打ち石と、火打ち箱をもっているので、それをぜんぶ とってきてほしいというのです。ただ、三ついっぺんではなく、一度にひとつづつと いいます。

 足が速い船乗りは、なんとか理由をつけて、おばあさんのところへいき、ひとつひとつもちだしますが、そのたびに とんでもない目にあいます。背中の皮をむしりとられたのです。ところがヘビの用意したぬり薬と飲み薬をのむと、なにごともなかったようにもとに、もどったのです。

 ヘビの注文は、さらに続きます。甲板から、おばあさんの道具で火をつけ、祝砲を12発打つこと。そして王さまの家来がきて、牢屋につながれたら、「船に珍しいものが積んであるから、それを王さまに見せるまで、罰をあたえないこと。」

 王さまが船にいくと、甲板には、七年前にいなくなった王子が立っていました。王子は、おばあさんのきまぐれでのろいをかけられ、ヘビにされてしまい、とおい国へ連れていかれたのでした。のろいをとくには、魔法の火打ち金と火打ち石と火打ち箱が必要だったのです。

 王さまは、船長にすばらしい船と金銀財宝、船乗りたちにはごちそうをふるまい、一生のんびり暮らせるだけのお金をあたえました。

 

 見開きだと4コマの絵、絵の下に文章が。

 足の速い船乗りが、おばあさんのところへでかけ、そのたびに背中の皮をむしりとられる場面が三度もでてきて、その場面が長く続くので、グロテスクに思う方もおりますが、すぐに治るというのが昔話。

 「フランス・バスクのむかしばなし」とありますが、バスク地方は古い歴史を持っており、興味深い。マゼランが航海中に死亡し、後を継いで史上はじめて世界一周を達成したファン・セバスティアン・エルカーノはバスク人という。このとき使用した船もバスク人がつくったもの。

 船乗りが12人で、黒い鳥のほか別のエピソードがあってもよさそうですが、活躍するのは二人。ひとりだけさんざんなめにあうのですが、ほかの船乗りの出番があってもよさそうです。


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