岡山のむかし話/岡山県小学校国語教育研究会編/日本標準/1976年
朝早くから夜遅く働いても、満足に食うこともできない若者が、となりのじいさんに相談すると「すからかっぽの瀬戸が浜へ参ってみい」といわれます。若者が、ひまも金も着るもんもなけりゃ、弁当もねえというと、じいさんから、「金も、着物も貸してあげる、弁当も用意する」といわれ 若者は、「すからかっぽの瀬戸が浜」を目指します。
この「すからかっぽの瀬戸が浜」の場所というのが、とにかく南へ南へいったさき。日が暮れたら「すからかっぽの瀬戸が浜」へ参るというと、どこでも泊めてくれるという。
おじいさんがいうとおり大きな新しい家で、そのとおりいうと、大歓迎されるが、「すからかっぽの瀬戸が浜」へいったら、三年越し寝たきりで動くことができないむすめがどうすれば なおるか聞いてほしいと頼まれる。
次に泊まったのが夜中に化け物が出るという家。おまけに、三人の息子がでていったきり戻ってこないという。
こんどは大きな川で大きな大きな大蛇にであい、夜も昼もからだが はっかりはっかりほてり、しんどくてどうにもならないという。
こわいもんじゃから「わかった」という返事をして旅をつづけた若者がようやくついたのが大きな砂浜。ここが、じいさんのいうとった「すからかっぽの瀬戸が浜」かと思うて、向こうの方を見たら、あまりおおきくはないが、きれいなきれいなお宮がみえる。かしわ手を打つと、ギーッと戸が開いて、きれいな着物を着た女の人がでてきた。
まずはじめにとめてもらったむすめの病気のことを聞くと、庭石に仏様の石を使っているのが原因で、病気になっているという。
夜中にお化けが出る家は、その家の下に、銀が千つぼ、金が千つぼあって、でたいでたいというので、それをだせばいい。
大蛇は、くわえている金の玉を捨てれば、すぐなおる。
自分のことを聞こうと思うて首をあげると、女の人はもういない。はるばる参っても、なんぼ たのんでもでてこないならしかたがないと、帰ることに。
大蛇は、金の玉をお礼にあげるから、もっていくようにいいます。
お化けの出る家では、金銀の半分をもらい、むすめが病気の家では、病気が治ったむすめといっしょに、おじいさんにお礼にいき、そのあと夫婦に。
「自分のことは、聞かんでも、人のためにすれば大家の若だんなになれたというむかしばなしじゃ。」と、結びます。
木のまたアンティ(フィンランド)(子どもに語る北欧の昔話/こぐま社)、三本の金の毛のある悪魔(グリム童話集/岩波少年文庫)、三本の金の髪の毛(チェコ)(のら書店)などにみられるパターンで、冒頭に出てくる予言の部分を除けば、ほぼ おなじシチュエーションです。