岩手のむかし話/岩手県小学校国語教育研究会編/日本標準/1976年
「はなたれ小僧」に にかよっていますが、”へんなこども”として登場します。
貧乏なおじいさんが、川の中に、薪を投げてやると、生き物みたいにぐるぐるおどって渦の中に沈んでいきました。おもしろいと薪をつぎつぎに投げたので、薪は ゼロに。
すると、川の中から、きれいな女の人があらわれ、おらへの家にきてくれという。水の底にいけないというと、目をつぶって背中へおぶされといわれ、ついたところは、立派な建物。
そこで酒や魚などいっぱいごちそうになり、かえるとき、”へんなわらす”を連れて帰れという。無理にあずけられ、しかたなく連れて帰ると、「おじいさん、おれはうんとくという者だ。どこか座敷の奥にでも おいてけれ」という。このわらしの働くこと働くこと、朝から晩まで働くので、おじいさんのさいふのなかには、おかねがジャグジャグ、米びつには 米が 山もり。
おじいさんは、わらしのことを誰にも言わず、山からかえってくると、こっそり座敷の奥にいって、”うんとく”の頭をなでて、にこっと笑っていた。
それを見ていたおばあさんが、おじいさんのいないときに、座敷の奥に行って、なんともみぐるしいちんちくりんな わらすをみて 箒で 無理やり追い出してしまいます。
おじいさんがかえってきて、なんともかんとも悲しんで、あちこち探したが、どこにも、うんとくはいない。それからは、おじいさんの家は、だんだん貧乏になって、さいふはからに、米びつは からっぽに。
きれいな女の人というと、竜宮へいく場合が多いのですが、おじいさんが いったさきは立派な建物です。人を見かけで判断すると、運まで逃げてしまうという話。