やさしいおおかみ/ペータ・ニックル・作 ユゼフ・ウイルコン・絵 佐々木元・訳/フレーベル館/1983年初版
最近引っ越してきたので、以前の様子はよくわからないのですが、近くの秩父三峰神社へ参詣するための三峰講は、町内でも盛んなようでしたが、いまは名ばかりになっているようです。
江戸時代には、秩父の山中に棲息する狼を、猪などから農作物を守る神使とし「お犬さま」として崇めるようになり、さらに、この狼が盗戝や災難から守る神と解釈されるようになったといいます。
どちらかといえば悪役のおおかみ。
でもおじいさんは、そんなふうにきめてしまうもんじゃない。なんでもしっているふくろうにも、だめなふくろうがいるし、やさしいおおかみもいるんだよとはなしてくれます。
森のみんなからこわがられていたおおかみが、あるひ「きょうから びょういんを ひらきます」という」看板をかけます。
しかし、ふくろうは、やつがかえってきたぞ、みんなすぐににげるんだ!と大声をはりあげます。
おおかみの病院には、だれもやってきません。ちょっぴり悲しくなったおおかみ。
おおかみが動物たちのようすをみるため吹雪のなかへでかけていくと、うさぎがたおれています。
すぐに、うさぎをだいて、ほらあなへつれていき、くすりを飲ませると、うさぎはげんきになり、なんどもおれいをいうと、ぴょんぴょんかけだします。
それでも、まだ疑われたおおかみでしたが、キツネが森の動物を食べすぎて、おおかみのびょういんにやってきます。
それからみんな具合が悪くなると、おおかみの病院にいくようになるのですが、ふくろうだけは、まだ罠だと思い込んでいます。
おおかみはふくろうのいうこをきにしないのでした。
おおかみは優しくえがかれているのですが、きつねは、小鳥やうさぎを食べる存在としてでてきます。
きつねの復権も必要なのかもしれません。
先入観や一方的な思い込みをやんわりとさとしてくれるので、読み聞かせにも適しているようです。
ふくろうのおじいさんが、やさしいおおかみの話を、うさぎに話す形式をとっていますが、でてくるふくろうが「おおかみがくる」「おおかみがくる」と、おおかみを悪者にするところが皮肉です。
おおかみのおとうさんがちょこっとでてくるのですが、なかなか存在感があります。