日本の昔話/柳田国男/新潮文庫/1983年
信州の話。
矢村にすむ弥助という男が、ある年の暮に正月の買い物に行って、わなにかかった山鳥を逃がしてやります。
すると若い娘がたずねてきて、雪に降られて難儀をしているので春になるまでおいてくださいと弥助の家で、おばあさんの代わりに家の用をしてくれるようになり、やがて弥助と結婚することに。
「鶴の恩返し」にみられる出だし。
それから、何年か後、、三人仲良く暮らしているうちに、有明山に悪い鬼が現れ、弥助は田村将軍のおともをしてそれを退治しに行くことになります。
出発の前に、弥助の女房は「有明山の鬼は魏死鬼といって、ただの矢では倒すことができない。十三の節ある山鳥の尾羽をつかうように話し、私はずっとむかしの年の暮れにあなたに助けていただいた山鳥ですと言い残し、何処かへ飛んでいってしまいます。
その羽根のおかげで、有明山の鬼が退治され、日本アルプスが明るい山になり、弥助もその手柄で莫大な褒美ををもらい、永く信州の山奥に名をとどめることに。
安曇野ではよく知られた話のようで、鬼は別に八面大王ともよばれているようである。
この話では悪者扱いであるが、全国統一を目指す大和朝廷が、東北に侵略するにあたり、信濃の国を足がかりに 沢山の貢物や無理難題を押し付け、住民を苦しめていたので、そんな住民を見るに見かねて安曇野の里に住んでいた八面大王が立ち上がり、坂上田村麻呂の率いる軍と戦ったという説もあるという。
検索したら、長野県安曇野市穂高有明矢村という地名があったので、ここでの伝説のようです。
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