どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

人形からとどいた手紙

2024年03月09日 | 絵本(外国)

   人形からとどいた手紙ーベルリンのカフカ/ラリッサ・トゥーリー・文 レベッカ・グリーン・絵 野坂悦子・訳/化学同人/2023年

 

 副題に「ベルリンのカフカ」とあるので、あの作家のカフカ?と思いながら読みはじめました。

 カフカと恋人のドーラが公園の散歩中、人形をなくしたというイルマにあいます。悲しんでいるイルマに、人形のスープシーは、ちょっと旅にでたんだと語りかけたカフカ。人形の手紙をあずかる郵便屋となのり、このあと人形からあずかったといって手紙をイルマにわたします。

 一通目は1923.10.23の日付で、冒険の旅に出たという手紙。つぎの日はハイキングして山にきた。そのつぎの日はパリ。好きなものだけ食べている。イギリスでピーターくんとお茶をしたこと。スペインのバロセロナでは、ガウディさんに建築の話を聞いたこと、エジプトのピラミッドをみたことが続きました。

 1923.11.8の手紙は、前より短くなりました。それからカフカは公園にあらわれませんでした。手紙のやり取りは公園でされていたのです。イルマはまちました。雨が降ってもまちました。

 イルマが、ドーラに尋ねると、「頭や目のおくが、ずっと痛い」が、「郵便屋の仕事をわすれたわけじゃないわ」と、1923.11.11の手紙をわたします。そこには、「南極に行くから、これで手紙は書けません。だから、これでさようなら」と書いてありました。

 もういちどイルマに会ったカフカは、旅に出るというイルマに、ノートとペンをもっていき、冒険の旅を毎日書き残しなさいといい、背筋を伸ばし、ほほえみます。

 そして、「これからたくさんあそんで、いつか冒険の旅にでる人」と「これから最後の旅に向かう人」は さよならをいって はなれていきました。

 

 生前のカフカのエピソードをもとに書かれた絵本。
 生前評価されることなく亡くなったカフカ(1983~1924)ですが、ただ一回の出会いから、少女を勇気づける手紙を着想した優しさに感動です。

 なんとなく敬遠していたカフカですが、これを機会に読んでみようと思いました。絵本であれ であいは貴重です。


この記事についてブログを書く
« におうと どっこい | トップ | あざみ姫の首・・岩手 »
最新の画像もっと見る

絵本(外国)」カテゴリの最新記事