どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

夜のくだもの屋

2016年05月12日 | 創作(日本)

        小さな町の風景/作・杉みき子 絵・佐藤忠良/偕成社文庫/2011年


 新潟県上越市で書き続けているという杉みき子さんの作品。創作まで手を広げると、いろいろな出会いがあります。ついこの間まで、安房直子さんやあまんきみこさんの作品も読んだことのなかった自分にとって、新しい発見の連続です。

 「夜のくだもの屋」は、私の住んでいる町に似ていて、商店は夕方になると早々と店じまいし、ほとんど人通りのない商店街のくだもの屋さんの心温まるエピソードです。

 大きなコンクールのために合唱の練習をしていた少女。多分高校生でしょうか。
 列車通学の少女は帰りがいつも真っ黒。心細さを紛らわすために、いつも歌いながら歩いていました。
 少女が帰るころ、くだもの屋にはあかあかと灯がともっていました。

 この灯りは毎晩毎晩歌いながらとおる少女が心細くならないように、くだものやの親父さんが、いつもは早く店じまいするのを少女のために、営業時間を延長していたのでした。

 何気ない風景なのですが、くだもの屋さんのやさしい心遣いが伝わってきます。

 コンクールがおわって、合唱部の友人が入院したのを見舞おうと、くだものを買うため、くだもの屋によったとき、おばさんがいつの間にか、コンクールの課題曲をハミングしていたのでした。
 おばあさんは、わたしまで歌をおぼえちゃってと話してくれます。

 都会ではみられないお店の優しさがあふれているようで、こちらまで、あたたかくなりました。

 子どもが家を離れ、その子の一人暮らしを心配するくだもの屋のご夫婦の思いと重なりました。

 暮れるのが早く、5時過ぎには真っ黒になる冬の時期に(小さな町では街路灯のあかりもままなりません。)この情景が醸す出す雰囲気が伝わってきます。

 2月の早い時期に語ってみました。語る時期は11月後半から2月前半でしょうか。この時期をはずれるとイメージがわきにくいかもしれません。


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