鉢かづき/あまんきみこ・文 狩野富貴子・絵/ポプラ社/2004年
備中の守、さねたかの娘の母君は、死期をさとり娘の頭に、肩が隠れるほどの大きな鉢をかぶせてなくなります。姫が十三のときでした。
新しくきた奥方は、鉢をかぶっている姫を嫌がり、お子ができると、なおさら嫌やがり、告げ口をして、姫を追い出してしまいます。
川で入水して死のうと思った姫は、鉢が浮いて漁師に救われます。
姫は山陰の三位の中将から救われ湯殿の湯をわかす仕事をするようになります。つらいひびのなか、中将の四人目の宰相が、いつもおそく湯殿にはいる世話をしているうち、宰相から、かならず一緒になりましょうと思いを打ち明けられます。
宰相が鉢かづきのもとに、毎晩あいにいくことが、ひとの噂になり、父ぎみ、母ぎみは、鉢かづきに近づかぬよう命じます。それでも宰相は、「たとえ 父上におてうちになろうとも、は鉢かづきのためならば、いのちもおしくない」と、朝夕 鉢かづきと あいます。
宰相と鉢かづきを別れさせるため、鉢かづきが、おのれの姿を恥じて、でていくよう上の兄三人の奥方とよめくらべをすることに。それをしった鉢かづきは、宰相に恥をかかせてはいけないと、でていくことにしますが、宰相はともにでていくとゆずりません。
よめくらべの日の朝、二人は歩き出します。そのとき これまでとることができなかった姫がかぶっていた大きな鉢が まえに ぽろりと おちると・・・。
古典の世界らしい言葉遣い、要所要所におりこまれた和歌が 心情を表しているようでした。衣装、おみやげ、芸比べと、よめくらべも優雅そのもの。
そして、二度目の母もかばう鉢かづきの度量の深さ、おいだした父との再会に、やさしさがあふれています。
この物語は、一寸法師や浦島太郎等が収められている「御伽草子」の一つ。はちかづきは、寝屋川市のマスコットキャラクターになっているようで、言い伝えと同時に紹介されていました。