あるひ あるとき/あまんきみこ・文 ささめやゆき・絵/のら書店/2020年
近所の子、ユリちゃんが、遊んでいたこけしを ずらりねかせ ねむっている姿をみながら、おさないころ かわいがっていた こけしの「ハッコちゃん」のことを 思いだした”わたし”。
”わたし”は、あまんさんのことでしょうか。
遊ぶのも、眠るのも一緒、防空壕にも こけしのハッコちゃんと いっしょ。
終戦をむかえたのは大連の地。大連の冬は、零下10度まで下がる日も。
敗戦の日からニ度目の冬。両親は家のものを 毎日のように、売りにいって、売れ残ったものを整理しながら、ダルマストーブで、燃やしていました。机、いす、たんす、たな 琴などが、たきぎになり、本とともに 燃やしていました。
”わたし”の市松さんや セイヨー人形は、おひなさまは 売れましたが、泣き顔の ハッコちゃんは いつまでも いっしょでした。
しかし、引き揚げの三日前、「ハッコちゃんは、つれていけない」と、母からいわれ、明日出発という日、ハッコちゃんは、とうとう ストーブのなかへ。
戦争の悲惨さは でてきませんが 幼いころ大事にしていた こけしの記憶です。
最後のページには、さまざまな表情の こけしが30個。これは、子どもと生きていた こけしです。
ささめやさんの素朴な感じの絵が、子どもの気持ちを代弁しているようでした。
いまのウクライナの子どもたちと重なります。戦争は弱いもの、子どもたちが最大の被害者です。子どもたちが なにがあっても 生きのびることを祈りたい。