どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

あるひ あるとき

2022年05月11日 | あまんきみこ

    あるひ あるとき/あまんきみこ・文 ささめやゆき・絵/のら書店/2020年

 

 近所の子、ユリちゃんが、遊んでいたこけしを ずらりねかせ ねむっている姿をみながら、おさないころ かわいがっていた こけしの「ハッコちゃん」のことを 思いだした”わたし”。

 ”わたし”は、あまんさんのことでしょうか。

 遊ぶのも、眠るのも一緒、防空壕にも こけしのハッコちゃんと いっしょ。

 終戦をむかえたのは大連の地。大連の冬は、零下10度まで下がる日も。

 敗戦の日からニ度目の冬。両親は家のものを 毎日のように、売りにいって、売れ残ったものを整理しながら、ダルマストーブで、燃やしていました。机、いす、たんす、たな 琴などが、たきぎになり、本とともに 燃やしていました。

 ”わたし”の市松さんや セイヨー人形は、おひなさまは 売れましたが、泣き顔の ハッコちゃんは いつまでも いっしょでした。

 しかし、引き揚げの三日前、「ハッコちゃんは、つれていけない」と、母からいわれ、明日出発という日、ハッコちゃんは、とうとう ストーブのなかへ。

 

 戦争の悲惨さは でてきませんが 幼いころ大事にしていた こけしの記憶です。

 最後のページには、さまざまな表情の こけしが30個。これは、子どもと生きていた こけしです。

 ささめやさんの素朴な感じの絵が、子どもの気持ちを代弁しているようでした。

 

 いまのウクライナの子どもたちと重なります。戦争は弱いもの、子どもたちが最大の被害者です。子どもたちが なにがあっても 生きのびることを祈りたい。


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