どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

さきざきさん・岡山、ばあさんとどろぼう・和歌山、フリーダーとカーターリースヘェン・・グリム、”これから先”氏・イギリスほか

2020年12月21日 | 昔話(日本・外国)

さきざきさん(かもとりごんべい ゆかいな昔話50選/稲田和子・編/岩波少年文庫/2000年初版)

 読んでてもそれほどインパクトがなくても、聞くと楽しさが伝わってくる昔話。

 おじいさんがためておいたお金。
 おじいさんは、”さきざき”のためにおいとくお金と、おばあさんにいつもいっていました。
 ある日、おばあさんがお金をかぞえているところに、こわい顔をした、物もらいがきて、お金をくれといいます。
 おばあさんは、このお金はさきざきのためのお金といいますが、物もらいは「おばあさん、わしが、そのさきざきだがな」と、騙します。おばあさんはお金をみんな物もらいにやってしまいます。

 おじいさんが帰ってきて、あきれかえり、正月がまもなくやってくるので、借金とりもくるから、夜逃げをすることになります。
 「おばあさん、戸をしめとけよ」と、おじいさんはいいますが、ちょっと耳の遠いおばあさんは戸を背負ったり、さげたりして歩いていきます。
 くたびれて道端の大きい木の根にこしかけて休んでいると、そこに大勢の人がやってきます。夜逃げをみつかったらこまると、木に登ってかくれることにしますが・・・・。

 オレオレ詐欺風でだまされる、なんとも愚直なかんじのするおばあさんです。

 木の根にやってきた大勢の連中のなかには、お金をまきあげた男もいて、戸をえんやら持ち上げたおばあさんが、手がだるくなって戸を下に落とすと、びっくりした連中が逃げたあとには、お金がたくさんあったというオチ。


ばあさんとどろぼう(子どもに贈る昔ばなし6 再話・和歌山昔ばなし大学再話コース 監修・小澤俊夫 小澤 俊昔ばなし研究所 2006年)

 和歌山の昔話です。
 おじいさんが孫のところに遊びに行こうとおばあさんに留守番を頼むのですが、おばあさんはどうしても一緒にいきたいと、戸をもっておじいさんとでかけます。途中、泥棒にあい見つけられないように戸をもって木の上にのぼります。
 木の下では泥棒がお金の入った壺を穴を掘って、埋めはじめます。

 たえきれなくなったおばあさんが、戸を離すと、びっくりした泥棒が逃げ出し、お金はじいさんとおばあさんのものに。

 おばあさんは、戸がなかったら、人がいると思って泥棒が入らないだろうと戸をもっていくのですが、あまり細かな詮索はしないほうがよさそうです。


フリーダーとカーターリースヘェン(グリム)
 木の上から家の戸が落ちて、取られてしまったお金をとりもどす結末です。

 若夫婦がでてきて、妻がとぼけた感じで次から次へとドジなことをしでかします。

 地下室のビール樽のせんをあけっぱなしにして、樽が空になったり、大事な金貨を行商人にとられりと、どこか憎めないカーターリーヒェンと夫のフリーダーが行商人を追いかけます。 

 家の戸の鍵をちゃんとかけてきたかとフリーダーに聞かれカーターリーヒェンは、鍵をかけたのは、上下わかれている扉の上だけ。下の扉は はずしてもっていきます。木の上で夜を明かすことにした二人でしたが、木の下にやってきたのは金貨をもっていった男たち。

 干しリンゴ、お酢の壺、戸を落とすと泥棒たちは、大急ぎで逃げ出します。そして二人は下にあった金貨を、ちゃんと取り戻します。

 それにしても、戸を担いで木の上にのぼるとは!

 西洋の戸はがっしり固定されていますから、わざわざ、外したのでしょう。



”これから先”氏(ジェイコブズ作/イギリス民話選/ジャックと豆のつる/木下順二・訳/岩波書店/1967年)

 グリムの「フリーダーとカーターリースヘェン」とほとんど同じです。

 ジャンという百姓が結婚した娘さんは、いつも失敗ばかり。
 牝牛を買って乳をしぼろうとするが、牛を池に連れていき、早く水を飲ませようとして、牛がおぼれてしまいます。
 ブタに飼料を食べさせようと、ブタを桶の中につっこむとブタは息がつまって死んでしまい、パンを焼こうとして、粉が風で吹き飛ばされます。

 さらに酒をつくろうとすると、樽の栓を抜いて、犬に投げつけ、犬をおっかけているうちに、樽はからっぽ。

 ここまでが前段。

 ある日、奥さんがベッドに発見したのは銀貨の袋。ジャンがいうのには”これから先”のためにとってあるという。
 この話を聞いた泥棒が立派な紳士みたいな洋服を着て、「わしが”これから先”ですがな」というと、奥さんは銀貨の袋を渡してしまいます。

 二人は木の枝にドアをのせて眠りますが・・・・。

 すると木の下に、泥棒がやってきて・・・。
 この話でも、最後はドアを泥棒のところへ落とし、残していった金袋を手にするというもの。

 なにしろ何があっても奥さんをせめることのないジャンの度量の大きさに感服です。

 そういえば、昔話で夫婦がどちらかが主導権をにぎるというのはあっても、喧嘩するというのがないのも不思議です。

 

おろかなむすこ(世界のむかし話6 ペルー・ボリビアのむかし話/加藤隆浩・編訳/ポプラ社1989年)

 ペルーのケチュヤ族のむかし話。

 食べ物がなくなる八月にそなえていた種。おばあさんが、おろかなむすこに、「これは八月のために、とっておくのだから、手をつけてはいけないよ。」といいます。

 むすこは、だれかが家の前をとおりかかるたびに「おまえさんが、八月という人ですか?」とたずねました。すると、あるとき悪知恵のはたらく男が「そうさ、おれが八月という男だ。」と、こたえたので、むすこは、その男に種を全部あげてしまいました。

 おばあさんは、これを聞くとすぐに家を飛び出し、八月と名乗った男をおいかけました。おばあさんが「家の戸を、まもっておくれ」と、むすこにいうと、むすこは戸をかついで、おばあさんを追いかけます。

 男を追いかけているうちに、夜になって、ふたりは野宿することになりました。真夜中。どろぼうたちが、音をたててもどってきて、山にむかって「ひらけ、ゴマ。」といい、左右にひらいた山のなかへはいっていきました。そのとき、おろかなむすこが、担いできた戸を、足でけとばしたので、戸はドドドッカーンという音をたてて、山道を転げ落ちました。その音にびっくりしたどろぼうたちは、「とじよ。ゴマ。」といって、山を閉じると、もときたほうへさっていきました。

 おばあさんたちが、山のなかへはいっていくと、そこには金銀や宝石の山。

 「アリババと四十人の盗賊」のような展開。じつは、この話にはオチがあります。

 家につくと、おばあさんは、たくさんのドーナツをつくり、屋根よりたかくドーナツをなげあげ、「ドーナツの雨がふっているよ」と、おろかなむすこにいいました。

 おろかなむすこが「ドーナツの雨がふっているときに、おれたちは黄金を担いできたよ」と、村人にいいますが、村人は、嘘にきまっていると誰も信じません。こうして、おばあさんは村人たちをだましとおし、どろぼうの宝物で、すっかりお金持ちに。

 あれこれ詮索されないためにとった、おばあさんの知恵が見事です。

 

小づちよ、出番だ(オーストリアの昔ばなし いちばん美しい花嫁/飯豊道男・編訳/小峰書店/1983年)

 この話にも冒頭部だけですが、こじきがやってきて、自分が将来だといって、将来のためにためておいたものを、もっていくところがでてきます。