観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

スズメの足音

2012-07-30 08:30:44 | 12.7

4年 小山めぐみ

今年も、我が家の屋根の雨樋が賑やかになる季節がやってきた。チョンチョンとせわしなく跳ねる足音、ひっきりなしに餌をねだる雛の声、スズメが子育てをしているのだ。家の前には、小さいながら田んぼがあり、地主のおじいさんが管理をしている。この緑のおかげか、郊外のわりにスズメが多い地域であるような気がする。スズメは古くから稲作と深くかかわり人のそばに暮らす身近な野鳥であったが、ここ二十年ほどで個体数が6割に減少してしまった。理由は農地の縮小や農薬の利用による餌の減少などもあるが、最も大きな原因が住宅難だという。そのようななかで、我が家を含むこの集合住宅ではどこの家でも、瓦屋根の隙間に巣をつくり、時折屋根の上でいざこざを起こしているスズメの姿が見られる。藁吹き屋根ではないけれど、大昔と同じように人の住む家にスズメも住んでいる。小さな小鳥の営みがすぐそばにあると思うとなんだかうれしい。私はこっそりその生活を覗かせてもらっている(我が家の屋根であるし、相手も気にしていないのでこっそりとは言わないかもしれないが)。
近年のスタイリッシュな家に瓦屋根は多く見られず、入り込めるような隙間もないのでスズメにはかなり厳しい時代となっているようである。それでもスズメたちは、小さな隙間を見つけて巣を作っており、あっと驚いたという情報も寄せられている。さすが、人とともに生活圏を広げてきた小鳥、人工物を利用しながらたくましく生きている。かつて身近に生きていた野生の生き物たちが人の生活や考えがかわったことでいなくなってしまっては悲しい。私がもし家を建てるのなら、昔ながらの隣人スズメも住めるようなあたたかい雰囲気の瓦屋根にして、スズメを応援したい。


撮影 小山めぐみ


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