観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

野ネズミの違い:去年は気づかなかったこと

2012-07-30 08:30:05 | 12.7
4年 佐野朝実


 長野県信濃町にあるアファンの森で野ネズミの調査を始めて2年目になった。シャーマントラップという生け捕り用の罠を用いて捕獲調査を行っている。7月も調査を行ったのだが、森ネズミをたくさん捕ることができた。中でもアカネズミがたくさん捕れた。今年はどうやらアカネズミの大繁殖年らしい。
 昨年は、一月の調査で5匹ほど捕まればよい方であった。しかし今回の調査ではアカネズミ50匹、ヒメネズミ10匹が罠にかかった。一度に多くのネズミを扱ったために発見したことがある。それは、ネズミの種類や性別差によって気質や性質に差があるということである。
 ヒメネズミは小型のネズミだが、トラップの中にいるときも袋に移したあとも、隅っこに頭をくっつけたままじっと縮こまっている。よく見ると身体が小刻みに震えているのがわかる。身動きとれないほどの恐怖心に襲われているのだろうが、その様子はとても可愛いと思った。
 アカネズミはヒメネズミと同じ属だが、ひと周りほど大きい。オスは気性が荒く、袋の中から脱出するのに必死であった。口を大きく開いたままの攻撃的な個体が数匹見られた。休むことなく勢いよく動き回るので計測不可能な個体もいた。その勢いには、恐さを感じるほどであった。これに比べると、メスも必死であることには変わりないのだが、袋の中にピーナッツなどの餌を入れると、逃げ出すことを忘れたのか餌を両手でしっかり握って食べ始める。この行動をとる個体はお腹の大きさ等から推察すると、妊娠個体の可能性がある。もしかしたら、そのために餌への執着が強かったのかもしれない。



 このように同じ属であるアカネズミとヒメネズミでも気性が異なることが観察できた。また、同じアカネズミでもオスとメスでは反応が違った。この他にも、季節によってもどうやら違いがあるようだ。アカネズミに関しては、冬季に比べると夏季は活発であった。これは、気温が高いために一晩トラップに閉じ込められたままでも体温が失われにくく、身体がよく動くためではないかと考えた。
 調査1年目は、アカネズミとヒメネズミを見分けるのも難しかったが、今では、閉じたトラップをそっと覗いただけで、アカネズミのオスなのかメスなのか判断できることがある。こういうことに気づいたのは、これまでくりかえし調査をしてきたからだと思う。今後も続けていく中で新たな発見ができるように観察していきたいと思う。

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