初心者はきれいな化粧砂が敷き詰められたサボテンを買ってきて、そのまま育ててしまう場合がほとんどでしょう。で、腐らせる。
あれ、そのまま育てればベテランでもたいがい失敗します。
あれは土も鉢も、きれいに見せて付加価値を高めるためのものです。小さいのにアホみたいに高いのはそのため。半分以上は化粧砂と鉢の値段でしょう。
おまけに出荷や取り扱いが楽なように土が糊で固めてあったりします。ほとんどサボ虐待。
とにかく、育てることは前提にしていない「商品」です。苗ではありません。
普通に土に植えられている苗でさえ、根の状態を調べるため、また他人が作った用土では水やりのタイミングが分からないので、栽培家はすぐに植え替えます。
雑貨扱いのサボをそのまま育てられるわけがありません。
と、いうわけで、植え替えです。
といっても冬は避けたほうがいいでしょう。
冬に買ってしまった場合は日の当たる窓辺に置いて春を待ちます。
根が傷んでいる場合が大半なので、水やりは月に1、2回、表面を湿らせる程度。春まで萎びさせないのが目的です。
《抜き上げ》
で、春はいよいよ植え替えの適期。
基本的に素手で作業することをおすすめします。サボの刺が刺さったところで死にはしません。手袋をすると、作業が荒くなってサボの刺や根を傷めやすいのです。どうしても痛いという方は台所用のゴム手袋を使うといいでしょう。
まずは鉢から抜き上げるのですが、鉢をトントンと叩いてすぽっと抜けることはまずないでしょう。糊で固められているからです。
この糊は水で溶けます。ぬるま湯で溶かすのが一番でしょう。
竹串などでほじりだしてはいけません。球体や根が傷ついて腐ります。経験者は語るというやつです。
抜き上げたら土をほぐすように落とします。(水で溶かして洗い流したなら、この作業は必要ありません)
このとき根がボロボロと切れて丸裸になってしまうなら、根腐れしてます。腐った根を全て取り除き、2、3日陰干ししてから植え込みます。多少経験のある方なら、根を全て切り捨て挿し木で更新したほうが生存率が高いかもしれません。
細根が少々ちぎれたくらいならすぐに植え込んで問題ありません。
栽培書にはよく、「根を1/3くらいに切りつめる」なんて書いてありますが、無視しましょう。あれは栽培設備、技術、環境に恵まれた条件下で、生長を促進するための方法です。まずは確実に活着させて生かすことを考えましょう。
こんな感じで十分。
《鉢》
鉢は普通のプラスティック鉢が手軽でしょう。リッチな方は陶器鉢をどうぞ。
素焼き鉢は乾きすぎます。
とはいえ、室内で育てる方、土が乾いていると水をやらずにはいられない方は素焼き鉢が向いているかもしれません。
鉢のサイズは、サボの直径よりひとまわり大きい程度。大きすぎる鉢を使うと、用土の過湿状態が長く続き、失敗しやすくなります。
《用土》
土は市販のサボ多肉用土を使うのが無難でしょう。1、2株しか持ってないなら百円ショップの1リットル入りのもので事足りるはずです。
ただあれは栽培量が多いと割に合わないので、そういう方はホームセンターで5リットルや12リットルのを買ってくるといいでしょう。容量が多いほど安くつきます。
ちなみに私はサボ多肉用土4、赤玉土中粒2、腐葉土2、くん炭1ぐらいの割合で混合したものを使ってます。小さいのや根が繊細なものは、これから赤玉を抜いて腐葉土を減らしています。
用土はあらかじめ適度に湿らせておきます。
《肥料》
サボは生長が遅く、また根が弱いので鉢花用の化成肥料では強すぎます。できればサボ多肉専用の肥料を使います。化成肥料を使う場合は元肥ではなく、追肥として使う方がいいでしょう。
毎年植え替えていれば、肥料は無理に入れることもないでしょう。
ベテランは反論もあるでしょうが、これは初心者向けの解説。
《手順》
1、まずは鉢底にゴロ土を入れて水はけをよくします。軽石中粒が最適です。なければ粒の大きい赤玉土、割った貝殻。大鉢なら食品のトレーを割って使うこともありますが、野菜や鉢花ならともかく、サボではおすすめできません。
2、その上に薄く用土を入れます。
3、元肥をいれます。
4、中心が盛り上がるように用土をいれていき、山の中央にサボを据えます。こうすることで根が上手い具合に鉢に広がります。植えづらいからといって、根を丸めたりしてはいけません。
5、また用土を入れていき、サボを落ち着かせます。用土を指で押して詰めてはいけません。用土を落ち着かせるには、鉢を軽く床に打ちつけます。あまり深植えにしないほうがいいでしょう。
これで植え替え完了!
《その後の管理》
普通の植物は植え替え直後にたっぷりと水をやりますが、サボの場合やってはいけません。サボを腐らせる大きな要因のひとつがこれです。
水やりは2、3日から10日後。気候やサボの状態によって違います。サボの状態と気候がよければ短く、逆なら長くです。
置き場は暖かい窓辺や、外なら直射日光が長時間当たらない明るい場所。活着していないサボは日焼けしやすいのです。ちり紙を被せておくという手もあります。
うまく活着して球体がふくらみ成長点が動き出したら、通常より水やりを多くして発根を促します。
その後は通常の管理に戻します。