心血管死だけでなく総死亡も、フィンランドの前向きコホート研究が示唆
日日経メディカル 2015年3月12日 大西淳子=医学ジャーナリスト
■JAMA Intern Med誌から
サウナ入浴は血行力学的な機能を高めることが知られているが、心血管死亡や総死亡にもプラスの作用があるのだろうか──。
こんな疑問への答えとなる研究結果が、サウナ入浴が盛んなフィンランドからもたらされた。サウナ利用回数が週に1回の人と比べ、より頻繁にサウナを利用する人では、心臓突然死、致死的冠疾患、心血管死亡、総死亡のリスクが全て有意に低いことが、前向きコホート研究から明らかになったという。フィンランドEastern Finland大学のTanjaniina Laukkanen氏らが、JAMA Internal Medicine誌電子版へ2015年2月23日に報告した。
著者らは、フィンランドの住民コホートを用いて、サウナ入浴の頻度や入浴時間と、心血管死亡や総死亡との関連を検討した。解析に用いたコホート研究「Finnish Kuopio Ischemic Heart Disease Risk Factor Study」は、アテローム性心血管疾患リスクの予測因子の同定を目的に実施されたもの。このコホートから、フィンランドKuopio在住の42~60歳の男性で、定期的にサウナを利用していた2315人(平均年齢は53歳、BMIの平均は26.9、サウナ利用回数の平均は2.1回/週、1回あたりの利用時間の平均は14.2分)を抽出し、分析対象にした。
フィンランドのサウナは乾式で、湿度は10~20%、浴室の温度は80~100度に設定される。湿度は、焼けた石の上に水をかけた時に一時的に上昇する。コホート登録時(ベースライン、1984年3月1日から1989年12月31日)の聞き取り調査で、対象者のうち601人が週に1回、1513人が週2~3回、201人が週4~7回サウナに入浴すると回答していた。
2011年末までの追跡期間中(中央値20.7年)に、929人が死去。うち407人は致死的心血管疾患により死亡していた。190人は心臓突然死、281人は致死的冠疾患による死亡だった。
週1回サウナ入浴していた群を基準に、喫煙歴や血圧、身体活動量、体格指数(BMI)など心血管疾患の危険因子で多変量調整して心臓突然死のハザード比を推定したところ、週2~3回群では0.78(95%信頼区間0.57-1.07)、週4~7回群は0.37(0.18-0.75)と、いずれも有意に低いことが判明(傾向性のP=0.005)。致死的冠疾患も同様で、ハザード比はそれぞれ0.77(0.60-0.99)、0.52(0.31-0.88)と、有意に低かった(傾向性のP=0.005)。
他の心血管疾患も含めた心血管死亡のハザード比は、順に0.73(0.59-0.89)と0.50(0.33-0.77)となり、やはり有意に低いことが分かった(傾向性のP<0.001)。総死亡も0.76(0.66-0.88)と0.60(0.46-0.80)であり、リスクは有意に低下していた(傾向性のP<0.001)。
次に著者らは、サウナ入浴時間についての解析を行った。サウナ入浴時間が11分以下の群を基準にすると、心臓突然死のハザード比は、入浴時間が11~19分の群で0.93(0.67-1.28)、19分超の群で0.48(0.31-0.75)となった(傾向性のP=0.002)。致死的冠疾患や、他の心血管疾患も含めた心血管死亡についても、入浴時間が長い群で死亡リスクの有意な低下が認められた。一方、総死亡については有意なリスク低下はみられなかった。
著者らは、「頻繁なサウナ入浴は、心臓突然死、致死的冠疾患、心血管死亡、総死亡のリスク低下と関係していた」と総括。その上で「他の人種においてもサウナ入浴が心血管系の健康を向上させるかどうかについては、今後研究が必要だろう」と述べている。
※原題は「Association Between Sauna Bathing and Fatal Cardiovascular and All-Cause Mortality Events」、概要は、JAMA Intern Med誌のWebサイトで閲覧できる。
日日経メディカル 2015年3月12日 大西淳子=医学ジャーナリスト
■JAMA Intern Med誌から
サウナ入浴は血行力学的な機能を高めることが知られているが、心血管死亡や総死亡にもプラスの作用があるのだろうか──。
こんな疑問への答えとなる研究結果が、サウナ入浴が盛んなフィンランドからもたらされた。サウナ利用回数が週に1回の人と比べ、より頻繁にサウナを利用する人では、心臓突然死、致死的冠疾患、心血管死亡、総死亡のリスクが全て有意に低いことが、前向きコホート研究から明らかになったという。フィンランドEastern Finland大学のTanjaniina Laukkanen氏らが、JAMA Internal Medicine誌電子版へ2015年2月23日に報告した。
著者らは、フィンランドの住民コホートを用いて、サウナ入浴の頻度や入浴時間と、心血管死亡や総死亡との関連を検討した。解析に用いたコホート研究「Finnish Kuopio Ischemic Heart Disease Risk Factor Study」は、アテローム性心血管疾患リスクの予測因子の同定を目的に実施されたもの。このコホートから、フィンランドKuopio在住の42~60歳の男性で、定期的にサウナを利用していた2315人(平均年齢は53歳、BMIの平均は26.9、サウナ利用回数の平均は2.1回/週、1回あたりの利用時間の平均は14.2分)を抽出し、分析対象にした。
フィンランドのサウナは乾式で、湿度は10~20%、浴室の温度は80~100度に設定される。湿度は、焼けた石の上に水をかけた時に一時的に上昇する。コホート登録時(ベースライン、1984年3月1日から1989年12月31日)の聞き取り調査で、対象者のうち601人が週に1回、1513人が週2~3回、201人が週4~7回サウナに入浴すると回答していた。
2011年末までの追跡期間中(中央値20.7年)に、929人が死去。うち407人は致死的心血管疾患により死亡していた。190人は心臓突然死、281人は致死的冠疾患による死亡だった。
週1回サウナ入浴していた群を基準に、喫煙歴や血圧、身体活動量、体格指数(BMI)など心血管疾患の危険因子で多変量調整して心臓突然死のハザード比を推定したところ、週2~3回群では0.78(95%信頼区間0.57-1.07)、週4~7回群は0.37(0.18-0.75)と、いずれも有意に低いことが判明(傾向性のP=0.005)。致死的冠疾患も同様で、ハザード比はそれぞれ0.77(0.60-0.99)、0.52(0.31-0.88)と、有意に低かった(傾向性のP=0.005)。
他の心血管疾患も含めた心血管死亡のハザード比は、順に0.73(0.59-0.89)と0.50(0.33-0.77)となり、やはり有意に低いことが分かった(傾向性のP<0.001)。総死亡も0.76(0.66-0.88)と0.60(0.46-0.80)であり、リスクは有意に低下していた(傾向性のP<0.001)。
次に著者らは、サウナ入浴時間についての解析を行った。サウナ入浴時間が11分以下の群を基準にすると、心臓突然死のハザード比は、入浴時間が11~19分の群で0.93(0.67-1.28)、19分超の群で0.48(0.31-0.75)となった(傾向性のP=0.002)。致死的冠疾患や、他の心血管疾患も含めた心血管死亡についても、入浴時間が長い群で死亡リスクの有意な低下が認められた。一方、総死亡については有意なリスク低下はみられなかった。
著者らは、「頻繁なサウナ入浴は、心臓突然死、致死的冠疾患、心血管死亡、総死亡のリスク低下と関係していた」と総括。その上で「他の人種においてもサウナ入浴が心血管系の健康を向上させるかどうかについては、今後研究が必要だろう」と述べている。
※原題は「Association Between Sauna Bathing and Fatal Cardiovascular and All-Cause Mortality Events」、概要は、JAMA Intern Med誌のWebサイトで閲覧できる。