医科歯科通信  (医療から政治・生活・文化まで発信)



40年余の取材歴を踏まえ情報を発信

美を感じると脳が活性化

2014-11-29 17:34:37 | 医療と介護
「美」感じる脳の部位発見 医療への活用期待
2014/11/22 21:34

 人が絵画や音楽を「美しい」と感じたとき、脳の一部分の血流量が増加する――。英ロンドン大神経生物学研究所の石津智大研究員=神経美学=のチームが米専門誌などに発表した研究結果が注目されている。

 この部位はうつ病や認知症などの疾患で活動が落ちるとされ、石津研究員は「『美』によって活性化させる手法は、医療の分野などで生かせるのではないか」と期待する。

 石津研究員のチームは「美しさ」に反応する脳の動きを探るため、人種や宗教などが異なる22~34歳の健康な男女21人を対象に、機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を使った実験を実施。肖像画や風景画などを16秒ずつ順に45枚提示し、美しいと感じたかどうかを示してもらった。

 その結果、美しいと感じた場合、美しくないと感じた時と比べ、前頭葉の一部にある「内側眼窩(がんか)前頭皮質」と呼ばれる領域で血流量が増加し、働きが平均で約35%活発化する共通性があることを確認。美しいと強く感じるほど活動量も増えることが分かった。

 この21人に音楽を聞かせた場合でも同様のデータが得られたという。ほかにも多くの実験を重ねた石津研究員は「科学の世界では、美に関する感情は客観的に測定できないと考えられてきた」として研究の意義を強調する。〔共同〕




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苧阪直行 編

美しさと共感を生む脳
――神経美学からみた芸術
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四六判上製192頁+カラー6頁

定価:本体2200円+税

発売日 13.9.15

ISBN 978-4-7885-1358-7

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◆人はなぜ、美しさに惹かれるのか?◆


社会脳シリーズ第4巻の配本です。美を感じる心は、人間にのみ備わっているのでしょうか? もしそうだとしたら、鳥たちや、魚たちまで、なぜこんなに美しいのでしょうか? 美は、生命にとって本質的な何かではないのか、と思わないではいられません。本書は、美を感じる脳の研究最前線からの報告です。社会脳の研究が広がりをみせるにつれて、従来の認知神経科学では取り組むことが困難だった美しさや、それとかかわる共感や感動などを、哲学的にではなく生物学的な立場から探る研究がはじまったのです。絵画、北斎漫画、能面、フラクタル図形などに反応する脳のメカニズムの解明をとおして、美しさと共感を生む脳のメカニズムに迫ります。

美しさと共感を生む脳 目次

美しさと共感を生む脳 序

社会脳シリーズ



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美しさと共感を生む脳 目次

「社会脳シリーズ」刊行にあたって
社会脳シリーズ4『美しさと共感を生む脳』への序
1 視覚芸術の神経美学 川畑秀明 
はじめに
美への実験的接近
絵画作品を見ているときの脳活動
美の判断と脳活動
美の基準
おわりに

2 美と感性の脳内表現 三浦佳世 
はじめに
知覚印象の脳内表現
感性評価に対する脳内表現
創造に関わる脳内部位
美しさに関する脳活動
絵画の美しさ判断と脳活動
おわりに

3 神経美学と色彩調和 池田尊司 
はじめに
神経科学的アプローチ
近代日本画を題材としたfMRI実験
美しさに関わる脳領域のまとめ
刺激の問題
神経美学と色彩調和研究
おわりに

4 北斎漫画の神経美学─静止画に秘められた動きの印象 苧阪直行 
はじめに
絵画における空間の表現
人物の表現
印象派への影響
北斎漫画
絵画における示唆運動の技法
絵画鑑賞と報酬期待
ゲシュタルト統合
北斎漫画を用いた実験
IMをめぐる最近の研究
おわりに

5 能面の神経美学─能面の表情に秘められた謎 苧阪直行 
はじめに
能面について
能面の類似性評定
悲しみの表情をもつ能面のfMRI実験
おわりに

6 フラクタル図形に対するサルの好き嫌い 竹林美佳・船橋新太郎 
はじめに
美的感覚による快感情の生成に関わると思われる脳部位
動物で観察される刺激に対する選好性
サルの視覚刺激に対する選好性実験
おわりに

文献   (9)
事項索引 (4)
人名索引 (1)
装幀=虎尾 隆



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美しさと共感を生む脳 序



 美しさは社会脳研究でとくに興味ある研究テーマである。というのも、われわれは常に美しさを求めて、美術作品や自然の風景を眺め、さらに身近なところでは顔、姿や立ち振る舞いの美しさを通して快い感情をもつことができるからである。本シリーズ第4巻「美しさと共感を生む脳─神経美学からみた芸術」では、美しさの脳内表現について考える。


 われわれは、なぜ美しさに引かれるのであろうか?


 そして、美しさを感じることにかかわる脳の活動とはどのようなものであろうか?。


 さらに、美しさは対象を受動的に見たり聞いたりすることからはじまるのか?


 あるいは対象を能動的かつ創造的にとらえる心のはたらきとかかわるのであろうか?


 美しさを感じる心のはたらきが、さまざまな脳の領域の活動とかかわることが最近わかってきた。近年、社会脳の研究が広がりをみせるにつれて、従来の認知神経科学では取り組むことが困難だった美しさや、それとかかわる共感や感動などを、哲学的ではなく生物学的な立場から探る研究がはじまったのである(Rentschler et al. 1988; 岩田 1997)。


 美しさ(あるいは醜さ)をどうとらえるかは、観念論と経験論をそれぞれ源流とする哲学、とくに美学上のテーマであった。たとえば、古代ギリシアでは、美を観念的なイデアとしてとらえたプラトンに対して、アリストテレスは経験を通して美を考え、経験論から実証主義の系譜につながる美へのアプローチの源流となった。近世では、18世紀のドイツの哲学者A・バウムガルテンが理性による美的認識に対して、快や不快の経験を含んだ感性による認識を美学に取り入れた。また19世紀には作用心理学の立場から美を考えたF・ブレンターノや美しさの感性的認識を感情移入説によって説明した心理学者T・リップスがいる。美しいと感じる心の経験を機能主義から論じたW・ジェームスや純粋経験とかかわる「作用の学」から論じた西田(1950)など、直接的な意識経験をもとに美を論じる流れは近年の生物学的な美しさの研究へと展開してゆくのである。ちなみに、I・カントの『判断力批判』やG・W・ヘーゲルの『美学講義』は観念論的美学の集成のように思われているが、これらは真善美を軸とした、芸術一般の在り方についての研究であって、とくに美しさの研究を扱ったものではないことに注意する必要がある。


 美しさへの経験的アプローチにとって重要な出来事は、19世紀の自然科学の勃興を背景に、心理学が哲学のゆりかごから目覚めて実験科学の色彩を帯びはじめたこと、そしてこれが経験主義による美の具体的な探求の契機となったことである。何が美しさの経験的基準となるのかを検討する実験的な動きがこの時期に生まれた。美を感性(感覚)的認識の立場から検討する試みがはじまったのである。そのような時代の流れの中で、感性経験を通した美しさについては、ドイツのG・T・フェヒナーが感覚の計量化を目指す心理物理学(psychophysics)を樹立し(1860)、続いて実験美学(experimental aesthetics)を提案(1876)したことが美への実験的、あるいは実証的アプローチへの先駆けとなった。彼は、哲学的な「上からの美学」に対して感覚をもとにして「下からの美学」、つまり、経験に基づく実証主義的な美の研究を重視した。たとえば黄金比率が美しさを決定するという考えに対して、フェヒナーは具体的に2辺の長さの比率を変化させた長方形を心理物理学的な方法で評価させその妥当性を調べるという実験的な試みを行っている。


 さて、フェヒナーの心理物理学(Psycho-Physics)はその名が示すように、感覚という主観量を物理的尺度で表現し、主観と客観の世界を橋渡しする画期的な方法であった。彼によれば、心理物理学は外的および内的心理物理学に分けることができる。外的心理物理学は感覚量たとえば明るさの判断(R)は刺激の物理強度(I)の関数として表される[R=f(I)](ここで注意すべきはIもRも操作あるいは観察可能であるという点である。フェヒナーは刺激Iと判断Rの間に対数関数をあてはめた、いわゆるフェヒナーの法則を見出している)。一方、内的心理物理学は脳の神経応答(B)と感覚(S)の関数形を求める[S=f(B)](ここでは、Bはフェヒナーの時代には観察不可能であったが、現在は観察可能、Sは神経応答により生まれた感覚でありRへの反映を通して観察可能であると考えられている)。彼の内的心理物理学は感覚測定法としてよく知られている外的心理物理学の内部に入れ子状に組み込まれた予測的法則であり、Bには快不快といった感性情報が含まれていると考えることができるのである。このように、外的および内的心理物理学が組み合わされてはじめて神経応答と感覚判断の神経相関が形成されることを示したことは、現在では忘れ去られているようである。


 時代が進んで、20世紀に入ると、個々の美的経験や芸術への実験心理学的あるいは実験現象学(ゲシュタルト心理学)的検討が続々と行われるようになる。実験心理学ではフェヒナーの伝統に基づき、美の経験法則が探求され、一方、現象の観察と記述を重視する実験現象学では、全体の構造的なまとまりが部分の集合に還元できないことを明らかにし、当時の要素的還元主義を批判した。これは、美しさが個々の要素の寄せ集めでは説明できないことを明らかにし、美への新しいアプローチへの道を拓いた点で重要であった(野口 2007)。一部のゲシュタルト心理学者は観察(経験)を脳の力動的な場として表現する心理物理同型説を提案したが、その検討は当時の脳科学の制約もあってあまり行われなかった。20世紀中葉から実証的な立場からとくに絵画における美しさを検討した美術史学者H・ヴェルフリン(1915)、R・アルンハイム(1954)やE・H・ゴンブリッチ(1960)、さらに実験心理学者ではR・グレゴリー(1978)やR・ソルソ(1994)などのアプローチも、経験論的な立場からの検討の成果であると言えよう。21世紀に入ると英国の神経科学者S・ゼキは視覚芸術を神経科学的に研究する学問を神経美学(neuroaesthetics)と呼び、このアプローチの先駆けとなった(Zeki 1999)。神経美学とは芸術における美的知覚の経験を神経科学的に裏づける科学で、観察された行動指標と脳の神経反応の相関関係を調べる学問である。


 以上、経験論的アプローチからの美しさへの実験的検証が神経美学にまで進展してきた歩みを見てきた。美しさの認識と脳のはたらきの神経相関(neural correlates)を、本巻では神経美学の立場から検討する。


 さて、美しさが、人の心を引きつけるのはなぜなのか、という問題をこの巻では視覚的な美しさに限って考えてみた。視覚を通して検討する理由の一つは、視覚系のメカニズムが知覚心理学において深く研究されてきており、同時に最近の視覚脳の認知神経科学的な解明が急ピッチで進展したことがあげられる。美しさを実証的かつ経験的に考える多くのヒントが、「見える」ではなく「見る」というアクティブで創造的な活動に認められるからである。


 ここで、見るという行為を、すでに触れたゲシュタルト心理学から少し考えてみたい。ゲシュタルト心理学の創設者の一人であるK・コフカは、視覚科学の基本問題として“モノはなぜそれが見えているように見えるのか”(Koffka 1935)と問うた。この答えを出すべく多くの心理物理的実験が行われてきたが、注意すべきは見えるということがそれ自身、すでに心の創造的なはたらきを含んでいることの発見である。そして心のはたらき(視覚的意識)が脳によって担われているならば、“モノはなぜそれが美しく見えるのか”という問いに展開することができるだろう。見るという視覚的意識に共通して認められるのは、構成的かつ復元的な過程、つまり補完や充填などの能動的処理が脳内ネットワークによって担われており(第3巻参照)、美しさもこのような復元的、さらに創造的過程がかかわっていると考えられるのである。視覚的意識の基礎的なはたらきに明るさ、大きさ、方向、奥行き、角度、色、形などを検出するはたらきや、これらの情報を束ねるはたらき、さらに錯視を生み出すメカニズムまでを含めて考えてゆくのが視覚的意識研究のストラテジーであり、これは同時に視覚的美しさの神経美学的研究のストラテジーであると言ってもよいだろう。観察者の主観的な見えの世界を生み出す視覚の、さらに美しさを生む脳内メカニズムが明らかになってくるはずであり、ここに視覚の内的神経心理物理学の可能性も見えてくるのである(苧阪 1998)。神経美学の研究方法の一つであるfMRI(機能的磁気共鳴画像法)の血流反応の検討によっても、内的心理物理学の記述が可能であることもわかってきた(Tsubomi et al. 2012)。


 本書で取り上げようとする美しさは、それらが機能的な意味で脳のはたらきと神経相関をもつことをfMRIなどの脳イメージングの手法で明らかにすることである。美という主観を脳という物質のはたらきという客観から推定するというパズルである。美という主観経験がクオリアとかかわるならば、この種のパズルは解けないというオーストラリアの哲学者D・チャルマース流のハードプロブレム(1995)の考えがあるが、本書では脳のネットワークのはたらきが美しさという主観(心理評価)を担う機能の一端を担っているというアイデアを「美への科学的冒険」の試みとして捉えたい。美への科学的解明が一種の設定不良問題と考えられてきた時代は過ぎ去りつつあり、美を認識する脳内ネットワークがあると考えるのである。美しさの認識については個人差がありまた文化差もあり、深い美学的議論は必要ではあるが、本巻で紹介された幾つかの実験で検討する限り、美しさはその神経美学的表現をもっていると考えられる。


 さて、美しさに引かれる生物的要因の候補の一つについての面白い仮説に触れてみたい。美しい絵画によって見る人の心に感動が呼び起こされた場合、その説明には諸説があるが、その中の一つの有力な考えは対象との共感による報酬とかかわるというものである。報酬という表現は神経経済学で中心となる概念であり、購買を含む経済行為は報酬期待にモティベートされているといわれることが多い(本シリーズ第5巻『報酬を期待する脳─神経経済学』参照)。報酬を期待したり、報酬を得た場合に活性化する脳内領域として、たとえば中脳の辺縁系や眼窩前頭葉などがその神経基盤と考えられていることもこのアイデアのヒントとなっている。この報酬への期待が絵画の鑑賞にも隠されており、美しいとか共感できる対象の場合、自己と対象が一体的な関係になった結果として獲得される一種の社会的報酬であると考えるのである。もし、そうであれば、美術を含めた芸術の鑑賞は報酬期待という神経経済学のベースともなる共通の軸を分かちもっていると言えるかもしれない。


 本巻の概略に移りたい。1章では、西洋画を肖像画、風景画、静物画、抽象画の4カテゴリーに分けて、それらを観察し、美しさ(醜さ)を感じているときの脳の活動(fMRI)を調べている。肖像画では、顔の処理にかかわるとされる脳の紡錘状回領域が活性化されるのに対して、風景画では、海馬近傍領域(海馬近傍場所領野)が活性化を示すことがわかった。また、静物画では、後頭葉の外側部が活動を高めるが、その領域は物体の認知とかかわることがわかった。一方、抽象画では特徴的な脳の活動を示す部位は明らかにならなかった。具象画に対して抽象画が特別な活動を示さなかったことは興味深い。


 肖像、風景や静物を描いた絵画を見て、美しさを感じるときには眼窩前頭皮質が美しさの度合いに応じて、醜さを感じるときには運動野が醜さの度合いに応じて、それぞれ活動が高まることが明らかになった。眼窩前頭皮質は好悪判断とかかわることが言われており、妥当な結果のように思われるが、なぜ醜さが運動野でも活性化を示したのかは抽象画と同様に興味深く思われ、その理由のさらなる検討に興味がもたれる。


 2章では、感性という文化的背景をもつ概念と関連づけながら美について考える。諸学の源といわれるギリシア哲学では美学(aesthetica)にはもともと「感性的なるもの」の学であることから、美は感性とかわる概念とされている。


 美しさの要因として、多くの実験で対称性が検討の対象となってきた。ここで紹介されている研究では、対称性の判断と美的な評価を脳の反応の差分に基づいて検討すると、対称性の判断には頭頂や補足運動領野など空間処理に関係する領域が活性化した一方で、美しさの判断には前部帯状回や前頭前野などとかかわる領域が活性化することが報告されている。これは、ゲシュタルト心理学などで問題にされてきた対称性の判断が、必ずしも美しさの判断と同じ脳内領域によって担われているとは言えないことを示唆してはいる。対称性という知覚的判断が他の要因と統合された結果、美しさの印象が生まれるという可能性が考えられそうである。


 この章では、いくつかの最近の研究が取り上げられているが、感性の脳内表現は、CGでつくった人工的オブジェクトであっても、その質感などは紡錘状回近傍がかかわるらしいことが、また、運動印象を与える静止画でも、側頭野領域が活性化を示すことが紹介されている。ちょっと変わったデータとして、板チョコのように見えるキーボードを見た場合、それが味覚や触感を感じさせるデザインであれば、味覚や触覚にかかわる脳領域も活性化するという実験が紹介されており、美へのアプローチには創造力もかかわると指摘されている点が面白い。また、アンケート調査によると、優れたデザインをもつ製品に対しては、購買欲求も高まるという報告は神経経済学の報酬期待の原理と共通項をもつようでこれも興味深い。


 3章では、1章で西洋画が取り上げられたのに対して、日本画の風景画、人物画と静物画の美しさと色彩調和の問題が取り上げられている。 この実験の結果では、美しさが海馬傍回、下前頭回や前部帯状回のルートで、醜さが扁桃体と眼窩前頭皮質のルートで脳内に表現されていることが紹介されている。1章の結果と合わせて考えると眼窩前頭葉のネットワークにおける情報統合の活動の程度が美しさや醜さの印象を強めたり弱めたりしていることを示唆しているように思われる。


 さらに、色彩調和についての行動実験から、色彩調和と感情価は相関をもち、色彩調和度が中程度の場合に覚醒度は低くなり、美しさは感情価と覚醒度による複合概念として捉えうることが示されている。色の3属性である色相、鮮やかさや明度の組み合わせが美的な印象やデザインとどうかかわるかは、これからの神経美学的研究の一つのテーマとなろう。


 4章では静止画に秘められた動きの印象を北斎漫画を見せて検討している。1、3章でそれぞれの著者がかかわった美しさについての絵画のfMRI実験はいずれも、1章では西洋画、3章では日本画である違いがあるにしても静止画が検討の対象であり、必ずしも動きを感じさせる絵画ではなかった。2章でも質感にかかわる脳の反応は静止画像を中心とした刺激によるものであった。本章では、2章でも少し紹介されている示唆された運動印象(Implied Motion: IM)を感じられる静止画が、実際の脳内表現として動きを感じさせているのかどうかを、北斎漫画を用いて検討している。具体的には、北斎漫画を用いたfMRIによる神経美学的実験である。北斎漫画は線画によるスケッチであり、19世紀西洋の印象派の絵画に大きな影響を残している。変幻自在で躍動感にあふれた心の動きが体の動きを通して表現されている。ヴェルフリン(1915)もルネサンス絵画では輪郭線が表出を担い、そこに美が宿ると述べており、西田(1950)もまた線画は絵画よりも自由で力強く、表現的動作の表出にとって重要であると指摘しており(西田 1950)、この見方は北斎漫画に最もよく当てはまる。


 静止画に含まれたIMこそ北斎漫画の鑑賞を導く手がかりとなっているとここでは考えられている。躍動感を生みだすIMには、漫画に運動印象を生み出す創発的な仕掛けが埋め込まれているのであり、これを中側頭領域の運動視にかかわる脳領域での運動残効説から説明している。IMの手がかりを用いて、静止した人物をあたかも動いているように認識し創造する脳内過程が、絵画の観賞とかかわると考えている。


 5章では4章の日本画に引き続き、日本の伝統芸能の一つである能楽で用いられる能面の情動表情についての神経美学的研究を紹介している。能面の表情に秘められた謎を悲しみを軸に考えている。顔写真を見せてfMRIで反応を検討すると、たとえば恐れの表情が脳の扁桃体を活性化することが知られているが、恐れとは異なる情動として、たとえば悲しみを認知する脳の領域は特定できるであろうか。ここでは、はじめに能面のもつ特異な表情と、それに対して余白のある曖昧な表情をもつ能面を対比させて、悲しみの表情の脳内表現の問題について考えている。なぜ、悲しみなのかと言えば、悲しみという悲哀と情感に満ちた表情は能面の表情の一典型とも言えるからであり、また悲しみの脳内表現と扁桃体とのかかわりを検討するのに適しているからである。笑いというポジティブな感情を悲しみというネガティブな感情と対比させることも目的の一つとなっている。情動脳の中心をなす辺縁系の中で、笑いは側坐核などの報酬系とかかわるのに対して(Osaka & Minamoto 2011)、悲しみは扁桃体のはたらきとかかわるという仮説の検討が行われている。


 5章までは、ヒトの神経美学的研究を中心に見てきたが、6章ではサルが登場する。しかし、ここでは、サルも美的認識をもつかという一般受けするテーマを扱っているわけではなく、フラクタル図形に対する選好行動を通して実験的に検討している。好んで選ばれる図形は快感情と美しさにかかわると想定されている。フラクタル図形という特異な視覚刺激を利用しているところにおもしろさがある。刺激への正答率の相違は、この図形に対するサルの選好性の違いを反映している。実験の結果、高い選好性を示す刺激で前頭葉眼窩部の活動が増大することが示されたことから、選好性とかかわると考えられる快感情には前頭葉眼窩部の神経ネットワークが関与していると考えられた。フラクタル図形は、さまざまな色と形を組み合わせた複雑な図形であるため、生物学的には意味のない人工的な視覚刺激であるが、サルにとって新奇性のある刺激なのである。何度も見ると親しみがわいて選好性が増加するという、いわゆる単純接触効果の結果ではないことも実験的に確かめており、ここでの選好性が刺激のもつユニークな構造によっていることがわかり、快感情や美しさを考えるヒントが示されている。フラクタル図形に対する選好性の違いと前頭葉眼窩部ニューロン活動の間にどのような関係があるのかが今後の課題であろう。1章では抽象画ではヒトの脳の活動領域の特定が難しいことが報告されているが、ここでは、フラクタル図形のような抽象的につくられたパタンについてはサルでも好悪判断があることも示されており興味深い。


 なお、本巻についても編集上でお世話になった新曜社の塩浦氏に感謝を表したい。


苧阪直行

高い目標を目指すための要件-それは“創造性”

2014-11-29 17:09:25 | 編集スクランブル
★夢を実現させるためには?
夢に対して心から興味を抱くこと。
どのような分野の仕事に就きたいかを具体的に考えることが大切。
「人間は、自分自身をよく見つめることが重要です。何がしたいのか。何ができるのか。自身を見極めた上で、その後、何に力を注ぐのを決めるべきです。
つまり、自分自身のこと、自身の可能性を客観的に評価することが大事です。
社会では、常に積極的な人間が輝くのです。
まずはその道のプロになるよう訴えています。
私が常に呼びかけているのは、“活発な人間たれ!”ということです。
能力向上のためには、何にも取り組む積極的な生活が“成功の鍵”となります。
高い目標を目指すための要件-それは“創造性”です。
人間は創造力豊でなければなりません」
ロシア民族友好大学・ウラジーミル・フィリッポ総長
★「気(心身の活動に必要なエネルギー)・血(体内を流れている血液)・水(体液や分泌液などの血液以外の水分)の三つが体内をうまくめぐることによって、健康は維持されると考えられています。
経絡とは、生命を維持するために必要な「気」「血」「水」を連絡させる通路とされ、滞りがあると病気やさまざま不調を引き起こす原因になりやすいと考えられています。
経絡リンパマッサージ協会代表理事渡辺佳子さん


予防と健康を担う新産業の創設

2014-11-29 16:24:15 | 医療と介護
未来健康共生社会研究会

第2回公開シンポジウム」参加者募集のお知らせ
【未来健康共生社会研究会】
『従来の医療産業は質的転換を求められ、健康寿命の延伸を目的とした新しい健康・医療産業が生まれる』
これら、時代の要求に応えるべく学術の専門家集団と企業集団が一堂に会し、異業種間の交流と融合を図り、以て
社会や人間の在るべき未来像を検討、デザインし、新規事業の戦略的創設を目指します。
「食品製造業」「サプリメント」「飲食業」「医療・福祉」「衣料」「建設業」「金融・保険」「運輸業」「旅行」「情報
通信業」「農林水産業」「宿泊業」等、広範に亘る領域からコアメンバーを含む50 社程度の企業会員を募集します。
【事 業】
1)1~2ヶ月に1回程度を目安にプロジェクトごとのミーティングを開催 2)1 年に数回程度を目安に全会員が
一堂に会する総会の開催 3)政府、自治体への情報提供と連携 4)国内外の関連施設の視察 5)その他
●開催日時:平成26 年3 月6 日(木)13 時~19時(受付開始;12 時30 分)
●開催場所:東京大学医学部教育研究棟13 階 第6 セミナー室
●参加費用:15,000円(お一人、交流会参加費用を含む)
●お問合せ:東京都文京区向丘1‐6-2 電話03‐3812‐4482
mail; atsumi@imj.or.jp CC yamada.imj@gmail.com
プログラム
13:00~13:30 「未来健康共生社会」とは
渥美和彦(同研究会代表)
13:30~14:00 「アベノミクスにおける健康寿命延伸産業」(仮題)
本田悦朗(内閣官房参与・静岡県立大学教授)
14:00~14:20 「健康共生関連産業の市場と育成」(仮題)
和田雄志(公益財団法人 未来工学研究所理事)
14:20~14:40 「ハウステンボス健康予防センター構想」(仮題)
澤田秀雄(株式会社エイチ・アイ・エス取締役会長)
14:40~15:10 「神奈川県における医食農連携・特区に関して」(仮題)
黒岩祐治(神奈川県知事)
15:10~15:20 ≪ 休 憩 ≫
15:20~15:40 「淡路島健康予防センター構想」(仮題)
南部靖之(株式会社パソナグループ代表取締役グループ代表)
15:40~16:40 「総合討論」(意見交換)※参加者全員
16:40~16:50 「研究会の活動予定」 山田 修(未来健康共生社会研究会事務局)
17:00~19:00 「交流会」(「カポペリカーノ本郷」同13 階)講師並びに参加希望者
(敬称略)
お申込用紙(返信Fax : 03-3812-4982)
ご芳名 企業名 役職 〒 住所 電話

病院には、できることもあれば、できないこともある

2014-11-29 16:19:49 | 医療と介護
★「真の贅沢というものは、ただ一つしかない、それは人間関係の贅沢だ」フランスの作家・サン・テグジュペリ(堀口大学訳)
★「善き友を持つことが、仏道修行の半分に相当するのですね」弟子・阿難
「それは違う。善き友を持つことが、仏道修行の全てなのだ」釈尊
★幸運は大胆な者の味方-文人・エラスムス
★未来ではなく、今、支えあげること。
それが「子どもの権利条約:に込められた最も重要なメッシージだと思います。
「子どもが主語」の視点に立てるかの挑戦です。
もう一つは、私たちが「いい大人である」といことです。東洋大学(社会学部)森田明美教授
★映画「フューリー」
「理想は平和だが、歴史は残酷だ」
劇中ブラッド・ピットが語る。
アドリブである。
その言葉は退役軍人に聞いたものなんだ。家で理想や平和を語っても、戦場では全く通用しない。
人間はここまで進化したのに、今なお世界で戦争は絶えず、理不尽がはびこっている。
その矛盾を突いた言葉だと思う。
「この映画の魅力は、“リーダーシップ”なんだ。リーダーは、戦場では士気を高め、素早く確信sる決断をしなければいけない。迷いがあっても、弱さは見せられないからね。
厳しかも、愛情深いリーダーの姿に注目してほしい」ピットは50歳になり、演技に円熟味を増やした。
たった5人で300人ものナチス軍を戦った米兵の、壮絶な姿を描く。記事の編集・吉田昌弘さんさん
★ストレスほど体に悪いものはありません。健康で元気に生きていくためには、まず日常生活の中でストレスを溜め込まないことが第一です。
一般的に病院で行われている医療は必ずしも万能とはいえません。
「人体」超精密機械の最新の医学をもってしてもまだ十分解明しておたず、病院には、できることもあれば、できないこともあるのです。
「病院に行けばすべて解決してもらえる」と考えるのは、患者さんの幻想に過ぎませね」日本統合医療学会名誉理事長・渥美和彦さん(86)

「医薬品リスク管理計画(RMP)

2014-11-29 12:47:43 | 医療と介護


┏━━━━━━━━━━━【PMDAメディナビ】━━━━━━━━━━┓

医薬品リスク管理計画の掲載のお知らせ
( 2014/11/28 配信)
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

今般、「医薬品リスク管理計画(RMP)について」のページを更新しましたのでお知らせします。
http://www.info.pmda.go.jp/rmp/rmp_index.html#select2


RMP提出品目一覧に、以下の医薬品のRMPを新たに掲載しました。

■販売名:インフリキシマブBS点滴静注用100mg「NK」
一般名:インフリキシマブ(遺伝子組換え)[インフリキシマブ後続1]
製造販売業者:日本化薬株式会社


■販売名:ジーラスタ皮下注3.6mg
一般名:ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)
製造販売業者:協和発酵キリン株式会社

■販売名:バニヘップカプセル150mg
一般名:バニプレビル
製造販売業者:MSD株式会社


※「医薬品管理計画(RMP)について」のページにつきましては、
当週分の新規RMP掲載をとりまとめてお知らせさせていただきます。


RMPの詳細については、医薬品・医療機器等安全性情報No.300にも
解説されていますのでご参照ください。
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【医薬品・医療機器等安全性情報No.300】
http://www.info.pmda.go.jp/iyaku_anzen/file/PMDSI300.pdf#page=3
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医療従事者の皆様におかれましては、RMPをご覧頂き、
市販後の安全対策への更なるご協力をお願い申し上げます。









日医が強硬に反対、看護師の気管挿管

2014-11-29 12:45:45 | 医療と介護
議論長引く可能性も、厚労省特定行為検討部会

m3.com 2014年11月28日(金) 池田宏之(m3.com編集部)
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 2015年10月に始まる特定行為を実施する看護師の研修制度について、研修の内容などを検討する厚生労働省の「医道審議会看護師特定行為・研修部会」 (部会長:桐野高明国立病院機構理事長)の第5回が11月26日に開かれた(資料は、厚労省のホームページ)。気管挿管や抜管の実施可否について、多くの委員が、条件付きで特定行為に含めることで概ねまとまったが、日本医師会の委員が最後まで反対し、次回に議論を持ち越すことになった。厚労省は年内に開く次回でいったん取りまとめ、パブリックコメントの募集に入りたい考えだが、特定行為の項目や研修内容など検討しきれていない課題が少なくなく、議論が長引く可能性もある。
気管挿管、限定容認が多数
 この日は、前回から引き続き、(1)経口・経鼻気管挿管の実施、(2)経口・経鼻気管挿管チューブの抜管、(3)胸腔ドレーン抜去、(4)心嚢ドレーン抜去が議論の対象となった(『看護師の特定行為巡り、平行線の議論、厚労省検討部会』を参照)。初めに(3)と(4)については、厚労省医政局看護課が、特定行為の実施が認められる状況について「手術後の出血の確認や液体などの貯留を予防するために挿入されている状況」と「患者の病態が長期にわたって管理され安定している状況」との条件を付ける案を提示。委員から目立った異論が出ずに、状況を限定した上で、特定行為として含めることとなった。
 (1)と(2)については、昭和大学病院長の有賀徹氏が、「ICUなどでは2つの行為を行う必要のある術後患者が日常的に数多く存在している。ただ、実施する医師が常時いるわけではない」「看護師による実施で、患者の救急救命はもとより、術後の合併症の減少にもつながる」とし、特定行為に含めるように求める意見書を提出した。
 日本病院会副会長の末永裕之氏は、前回の日本麻酔科学会への聴取に理解を示しながらも、「麻酔科医が少ない現状に対する答えはなかった。バックアップをつけるなら認めても良いのではないか」と述べた。日本看護協会副会長の真田弘美氏も「土日や深夜など医師がいないときなど、患者のQOL向上のためにも急性期では認めてほしい」と、従来の主張を繰り返した。
 加えて、強調されたのは、教育の重要性。自治医科大学学長の永井良三氏は、看護師が実施に当たっての判断をするための教育の重要性を指摘。千葉大学大学院医学研究院医学部特任教授の田辺正裕氏は、「最初の時期は指導医師の監督の元で実施し、少しずつスキルを挙げていき、最後には、(実施可否の)判断もできるようになるのでは」と指摘。多くの委員は、看護師に対して、行為の危険性を理解してもらい、「実施しない」という判断も含めて教育した上で、医師のバックアップ体制が取れている急性期の現場など、条件を限定することで、実施を容認する流れとなった。
断固反対の日医委員
 (3)と(4)について、容認の流れがある中で、日本医師会常任理事の釜萢敏氏のみが、反論を続けた。医師がいないシチュエーションがあることを認めた上で、「医師が積極的に携われるように、医師を増やさないといけない」と発言。現状の試行事業において数十例が実施され問題が発生していないことも報告されたが、釜萢氏は「症例が少ない」として取り合わず、「現場のニーズがある」との賛成派の指摘にも、「(実施に)現場の幅広い合意が得られているとは言えない」と述べた。桐野部会長は、「一定の制約を課した上で、挿管と抜管を認めるのはどうか」と釜萢氏に水を向けたが、釜萢氏は断固として譲らず、次回で決定する方針を示した。
研修免除「裏ルート」への危機感
 教育を巡る議論もあった。厚労省側は、既に特定行為に関する知識や技能を有している看護師については、「権週における履修の一部を免除できるようにしてはどうか」と提案。田辺氏はOSCEなどの利用し、第三者がチェックする仕組みの導入で実現可能との認識を示した。対して、日本看護系大学協議会代表理事の高田早苗氏は「手技は認定が難しく、丸ごと認めるのは良くない」と述べるなど、異論が多数を示した。桐野部会長は、座学については、内容を精査した上で、免除できるとの認識を示した上で、「手技の免除は、相当しっかりやらないと、裏ルートができてしまう。検討が必要」とまとめ、厚労省に再考を求めた。
 教育のボリュームについては、田辺氏は、全ての看護師が共通で学ぶ項目について414時間、それぞれの目的に応じて学ぶ区分毎の研修が72時間から15時間となる案を提案した。共通項目については、平日を研修に充てる想定の週30時間程度では3.5カ月から4カ月程度、週末のみの権週の場合では、8から9カ月程度かかる計算となる。
 真田氏は共通における「医療安全」が24時間となっている点について、「不十分」と指摘。一方で、看護師資格保持者が対象である以上、共通部分は圧縮できるとの声もあり、次回に一定の方向を示すこととなった。
 他にも、研修を受ける看護師の要件としては「概ね3年から5年以上の実務経験を有すること」となった。教育にインターネットを使った講習などを活用するため、大学通信教育設置基準に準ずることで、質を保証することなども決まった。次回は、研修内容についての議論に加えて、研修施設の基準などについても示される方針












大阪大に賠償命令 

2014-11-29 12:44:22 | 医療と介護

「治療方針の説明不十分」

共同通信社 2014年11月28日(金) 配信
 大阪大病院でがんの治療を受けた後に死亡した女性=当時(77)=の遺族が医療ミスを主張して大学側に約4千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で東京地裁は27日、治療方針の説明が不十分だったと認め200万円の支払いを命じた。
 判決によると、女性は2006年7月に大阪大病院で肝細胞がんの疑いがあると診断され、翌月入院。担当医師は当初、化学療法を実施したが腫瘍が増大したため9月に肝臓の一部を切除した。退院後病状が悪化し、07年4月に東京都内の病院で亡くなった。
 加藤正男裁判長は「発見の遅れはなく、治療ミスはなかった」と判断する一方で「化学療法を実施する前に、すぐ切除する方法も選択できることを家族に説明する義務があった」と指摘した。
 阪大病院は「対応が決まっておらずコメントできない」としている。













牛乳で認知症減少の可能性 

2014-11-29 12:42:57 | 医療と介護
明治が共同研究、福岡で

共同通信社 2014年11月28日(金) 配信
 明治は27日、牛乳や乳製品を食事に多く取り入れた人がアルツハイマー型認知症になる確率が、そうでない人に比べて約4割減少したとの研究結果を発表した。九州大大学院の清原裕(きよはら・ゆたか)教授が代表理事を務める久山生活習慣病研究所(福岡県久山町)と共同で研究した。
 人口約8300人の久山町では、九州大大学院と久山生活習慣病研究所が主導して、住民を対象にした脳卒中や認知症の研究が1960年代から行われている。今回の研究は、60歳以上の住民約千人から約17年間の食事の内容を聞き、牛乳や乳製品に関して調べた。
 明治によると、取り入れた量の多いグループと多くないグループを分けて、アルツハイマー型認知症の発症の確率を調べると、多いグループが目立って低下したという。













(2014衆院選)高齢者医療に足りぬもの

2014-11-29 12:40:13 | 医療と介護
医療界は、そして国は何をすべきか

佐藤伸彦さん:がんに限らないホスピス「ものがたりの郷(さと)」理事長

朝日新聞 2014年11月28日(金) 配信
 たとえどんなに平凡でも、生きるとは1冊の本を編むようなもの。その最終章をどのように迎えるかに関心が高まるなか、富山県砺波(となみ)市の医師・佐藤伸彦さんは、病院でも在宅でもない終末期の場を試みている。これまでの医療に欠けていた視点とは何か。高齢化で「多死時代」を迎え、医療界は、そして国は何をすべきなのだろう。
  《日当たりの良い9畳の洋間に、80代の女性が眠っている。話しかけても額に触れても反応はない。
 チューリップの球根の生産で知られる人口約5万の砺波市。その中心部に、平屋建てに15の個室を備えた「ものがたりの郷(さと)」がある。入居しているのは重い病や老衰の高齢者。ここで人生最後の時を過ごす。
 佐藤さんが理事長を務める医療法人社団「ナラティブホーム」はそこに隣接している。医療・看護・介護のスタッフがものがたりの郷を訪問し、息を引き取るまでかかわる。》
 ――ものがたりの郷というのは病棟ですか。
 「いいえ。構想したのは私ですが、制度上は家賃月5万円の単なる賃貸住宅です。所有者も別。私は、病院は不動産で稼いではいけないという考えですから。『がんに限らないホスピス』だと思ってください」
 ――と、言いますと?
 「一般のホスピスは主にがんで治癒が難しくなった人が対象です。しかし、ここはもっと広く、どんな疾患の方の終末期も支援します。特に想定しているのは、医療システムからはじき出された高齢者です。病院で治療の手立てがなく退院を促された人、高度医療が必要で介護施設に入れない人、脳梗塞(こうそく)などで寝たきりだけど在宅では難しい人……。そうした方たちが安心して最期を迎えられる場がないことが問題なのです」
 「いま、国は在宅医療を促そうとしています。ただ、在宅の良さばかり強調すると、24時間ずっと一緒の家族は疲弊しますよ。ギブアップとなったら別の可能性を示してあげなければ。終末期の生活の質を決めるのは選択肢の多さだと思います。そこで、在宅でも病院でもない第三のあり方を提唱したわけです。個室だから家族が寝泊まりすることもできる。プライバシーが守られた『自宅』と同じです。そこへ訪問し、医療・看護・介護を提供する。在宅医療の一つのバリエーションです」
 
 《看護師や介護士らは、ものがたりの郷で暮らす一人ひとりの「ナラティブ(物語)ノート」をつくる。交わした言葉を書きとめ、もう話ができない人については日々の様子を記したり写真を貼ったりしている。
 ある女性の家族はミュージシャンで、演奏会を開くので聴かせたいという。その希望を受けて、何人ものスタッフが会場まで付き添った。家族はノートに「目はあけていなかったけれど、ちゃんと聞いてくれていたと思います」と記した。》
 
 「私たちは『みとる』という言葉を使いません。たかが何カ月間、支援をさせていただくだけで、みとるなんて言うのはおこがましい。あくまで本人とご家族が中心です。私たちは最後の最後までその人の生活を支え、生き切ることを援助するのが仕事です。スタッフには、さりげない第三者であれと伝えています」
 「とはいえ、ノート一つにしてもただ聞き書きをすればいいというものではありません。『人生という物語』といっても、人間ってそんなにきれいごとばかりじゃない。もっとしたたかに生きているし、光もあれば影もある。だから向き合う時は自分の姿勢や価値観、人生そのものが問われます。私は一人の人間として『それはわがままじゃないの』などと自分の意見を言うこともあります。真剣勝負です。これはもう、医療から越境したところの話です」
 ――現代医療へのアンチテーゼですか。
 「いや、医療はもちろん大事だし、私自身も最先端の医療を施したい。異議申し立てというより、いまの医療では見えていないものを加えたいということです。現代医療は生命体としての『命』ばかりを見てきた。かといって、物語を重視し過ぎると『90歳だからもう十分生きたよね』といった、安易な『みなし末期』に陥りかねません。科学的理解と物語的理解は両極にありますが、二項対立ではいけない。医療者は治療対象の『命』についてきちんと話し、家族は一人ひとりの人生の物語としての『いのち』を語る。そうやって語りが循環するなかでバランスを取り、『それなりにいい人生だったね』と腑(ふ)に落ちるところを探そう、と言いたいのです」
 ――以前、市立病院の部長まで務めましたね。なぜ辞めてまで?
 「寝たきりの人が多い療養型病院に勤めていた時、私は患者100人の主治医でした。看護師が患者さんの名を挙げて『熱が出ています』と言っても、誰のことか分からなかった。同じ入院服を着ていて、みんな同じに見えた時期もあります。病院では患者さんの『個』が消えてしまう。まして、どのような人生を送ってこられたかなんて分からない」
 「寝たきりで語ることのない人の尊さはどこにあるのだろう、と考えるようになりました。そうした方たちを前にした時に、本来の医療のあり方が抜け落ちていると感じたのです。人間として何をなすべきかが見えていないというか……。これは医療に限らず、政治だってそうでしょう? プロフェッショナルであることの大もとには『人としての生き方』があるはずですが、そこが抜け落ちている感じがします」
 ――そこまで高齢者問題と「死」に関心を持つのはなぜですか。
 「私は小学3年生の時に父を亡くしました。医者になって、今度は母も亡くなりました。その影響があるんでしょうねえ。いまも困ったことがあったら『おやじなら、どうするよ』みたいな会話をします。それと同じようなことを、寝たきりの方のご家族もしているわけですよ。肉体が目の前にあるかどうかが違うだけで、返事がなくても会話している。『そこにいるだけでいい』という尊さは、ご家族の関係性の中にこそあります。私たちは、そこをきちんと見てさしあげないといけません」
 
 《佐藤さんは「ナラティブホーム」から車で約10分の診療所でも診察している。受診に来た高齢の女性が「あたしね、道楽で日本人形をつくっとんよ」と語り出す。佐藤さんはうなずきながら、笑みを返す。砺波市は65歳以上が27%で、全国平均を上回る。佐藤さんが在宅で診ている人は常時200人。週に1人のペースで亡くなっていく。》
 
 「大体は慢性疾患です。ゆっくり話を聞いて、これからどうしたいのか相談に乗る。地域に根ざしたゲートキーパー役だと思っています。ここから介護や福祉につないだり、総合病院を紹介したりする。あるいは私が訪問医療をする。そうした地域医療があっての、ものがたりの郷。ふだんの関係性が大事です」
 ――国の施策をどう見ますか。
 「高齢者や終末期の問題は、医療者だけが頑張ってもだめなんですよ。厚生労働省だけじゃなく、地方創生の関係省庁も一緒になって地域の町づくりとして取り組む必要がある。いまは年間126万人の死亡者数が、2040年には推計約170万人になります。病院で亡くなる方が8割を占める現状のままでは、一般病床の不足は深刻化します。数十万人の『亡くなる場所』が見つからなくなるとも言われます。高齢者が『こんな良い地域で最期まで暮らし、家で死にたい』と思える社会を本気でつくらないといけません」
     *
 さとうのぶひこ:新たな終末期医療を唱える医師 1958年生まれ。市立砺波総合病院などを経て、2010年から現職。「ものがたり診療所」所長。来年2月に「ナラティブホームの物語」刊行予定。
 ■取材を終えて
 6年前。私の父親に治療の施しようがなくなったとき、入院先の主治医は目に涙を浮かべながら「延命治療は?」と尋ねた。それを見て、温かい最期が迎えられると確信した。
 佐藤さんが語っているのも、実は「どこで」というより「どのような関係性の中で」最期を迎えるか。家族や医療者が自然に優しくなれる仕組みの話なのだと思う。全国から視察が絶えないのには理由がある。(聞き手・磯村健太郎)
 ◆キーワード <在宅医療と在宅死> :医療関係者が自宅で暮らし続ける人を支えるのが在宅医療で、厚生労働省は整備を進めている。入院期間をできるだけ短くし、医療費抑制を図る側面もある。自宅で最期を迎える人は1960年ごろまで70%以上いた。しかし、その数は76年に医療機関と逆転し、昨年には約13%。一方、08年の厚労省の調査によると、最期までなるべく自宅で過ごしたいと望む人は「必要になれば医療機関などを利用」を含め63%だった。












薬物で患者大量殺害の疑い

2014-11-29 12:38:17 | 医療と介護

独、180超の死亡例捜査

共同通信社 2014年11月28日(金) 配信
 【ベルリン共同】ドイツ北部の病院で薬物投与により重病の患者3人を殺害したとして、殺人罪に問われた看護師の男(37)が、同様の犯行を繰り返していた疑いが浮上している。180人を超える死亡例が捜査対象になっている。DPA通信が27日までに報じた。
 検察当局によると、男は2003~05年、北部デルメンホルストの病院に勤務。3人に致死量の不整脈治療剤を注射し、殺害した罪で起訴され、今年9月に裁判が始まった。退屈しのぎに患者を重篤な状態にし、蘇生させるのが目的だったが、失敗したとされる。
 男は08年、同じ手口で患者を殺害しようとした殺人未遂罪で有罪となった。死亡した別の患者の家族が不審に思い、訴えを受けて、その後に捜査が再開された。
 DPAによると、デルメンホルストの病院だけで、亡くなった174人について捜査している。以前働いていた別の病院でも不審死が相次いでおり、合計で180人を超える。
 男は服役中の刑務所で、一連の犯行を自慢していたとされる。

















姉歯物件報道の真実

2014-11-29 12:19:07 | 社会問題・生活

「耐震強度偽装事件」
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※ちょっといいブログがあったので紹介です。著者はフリーアナウンサー(元フジテレビ)

長谷川 豊 公式ブログ 「本気論、本音論」
2014年08月18日


2005年、日本を震撼させたある事件が起こった。

「耐震強度偽装事件」

当時のワイドショーはこぞって取り上げ、数週間にわたってこの一件を特集していった。週刊誌も大きく取り上げ、その年の流行語大賞にもノミネートされるほどだった。
建築会社「ヒューザー」。そのヒューザーの小嶋進社長が国土交通省に規定されている耐震強度をごまかしていたことを知りながら、販売を続けていた、つまり、詐欺だ、という事件だった。なるほど、地震大国、ニッポンではかなり許せない事件だ。耐震強度をごまかす?じゃあどうなるのか?地震が来たら、つぶれるのか?マンションが。驚きとともに報じられ、取材陣が殺到する。が、ヒューザーの小嶋社長は平然と言ってのけた。

「姉歯さんという1級建築士とともに作ったマンション。詐欺などをしたつもりはない」

これには取材陣は驚く。普通、謝るんじゃないのか?あまりに堂々と持論を展開する小嶋社長を報道陣は袋叩きにした。そして、その矛先が向かったのが、後にこの耐震偽装事件の「黒幕」と報じられる、当時の1級建築士、姉歯秀次氏だった。
メディアが殺到する。取材陣が取り囲む。すると姉歯元1級建築士はこちらも平然と言ってのけたのだ。

「計算上、急に倒壊する、とか、そう言った設計にはなっていません。そもそも基準自体がかなりの厳しめのものになっているだけで…」

まただ。報道陣は相当に驚く。そして、当時の情報番組と報道番組のデスクたちは
「徹底的にたたけ!」
と支持を出す。そう、簡単だ。社会正義の観点において、規則違反をしているのに反省もろくにしないでシャーシャーとテレビに出て話をしているなんて、信じられない!って言うか…その前に…
数字の匂いがする!
そう。言っちゃあなんだが、ヒューザーの小嶋社長、僕の目から見た感想を言うが、けっこう悪人顔だった。悪人顔の人がテレビで、堂々と持論を展開しているってのはなかなか目が離せない展開だ。当然とくダネ!でも取り上げたが、確かに、このニュースは数字が良かった。姉歯氏も同じだった。なんだかよく見たら、何かをかぶってらっしゃるようにすら見える。ひどいもので、これはもちろん冗談の範囲だが、当時のスタッフからは
「絶対に姉歯を送検まで追い込め!」
と号令を出している人間までいた。いや、当然、冗談だとは思うが、一応そんな人間もいた。

意味が分からない?

解説しよう。送検の時というのは基本的に、衣服以外の何も身に着けてはいけない、というルールが存在するのだ。個人的にはそのルール自体がどうかと思うが、要は、腕時計とか、女の人であれば、髪飾りやカチューシャなど、とにかく、衣服以外はダメだというルールだ。
従って、スタッフの言いたいことというのは、

「頭にかぶってるのを外させろ!」

という意味だ。個人的にはそんなものまで取り上げなくてもいいじゃないか、と言いたくなるが、それはルールだ。ひどい話だが、スタッフたちの中にはその映像を見たがって、送検を楽しみにしている人間もいた。
ちょっと、フォローだけしておくが、これはもちろん、冗談で言っているのであって、心底、その為に報道を捻じ曲げようとしていたり、虚偽報道をしているわけじゃない。さすがにそこまで腐っていない。少なくとも、テレビのスタッフたちはみんな、視聴者のために、視聴者の知る権利のために、毎日懸命に頑張っている人間がほとんどだ。。朝までかかってVTRをつなぎ、少しでも分かりやすい報道を心掛けているスタッフばかりだ。
ただまぁ、テレビスタッフと言えども、そこは普通の人間であって、毎日聖人君子みたいな会話だけをしてるわけじゃないって話だ。誤解の無いようにそこは押さえていただきたい。

さて、話を進めるが、耐震偽装事件において、小嶋社長と姉歯元1級建築士はテレビにとって、「悪い人間」でなければいけなく、「悪役を叩きのめす」にはやはり理由が必要となる。なんでテレビがこんなにも数人の人間をボロカスに叩きのめしているのかを視聴者の皆様にも提示しなければいけないのだ。でないとテレビが悪者になってしまう。
その理論武装のために「専門家」なる人物が登場する。そう。良くテレビに登場する「○○に詳しい人」シリーズだ。たいていはスタッフが適当にインターネットを検索して、その上位に出てくる人に電話をかけてみるってのが通常だが、耐震偽装事件においても、何人かの専門家なる人物たちが登場した。そして言う訳だ。
「これは信じられませんね」
「悪質です」
「このままじゃ震度5か6で、パターンと倒れますよ、パターンと!」
かなり過激なことを言う専門家もいた。専門家の選び方に関しては、別で記述するが、とにかく、そうしてどんどんメディアリンチは加速していき、週刊誌などでは毎週のように
「姉歯殺人物件!」
「ヒューザー耐震偽装マンションの深い闇!」
といった言葉が並ぶこととなった。事態を重く見た当局は動かざるを得なくなり、2006年4月26日、姉歯元1級建築士、逮捕。同5月17日、ヒューザーの小嶋社長も詐欺容疑での逮捕となる。もちろんお約束通り、着けるものを着けられなくなった姉歯元1級建築士の送検の映像は繰り返し繰り返しテレビ上でこするだけこすられ、ニュース、情報番組の視聴率稼ぎに多大な貢献をしたことは言うまでもない。あの送検の映像だが、懐かしい。文句なしに高視聴率だった。

マスコミのメディアリンチは加速し、姉歯氏は諸悪の根源とされ、
「偽造の動機は、経済設計・コストダウンができる優秀な建築士という名誉を維持し信用を得るためだった!」
「年収2,000万円を超える年もあり、高級自動車などを買い続けていた!」
「金を稼ぐために人命よりも稼ぎを優先した」
「大地震が起こってもわれ関せず!」
「妻が入院中なのに愛人を作って月15万円近くも小遣いとして与えていた」
「妻もブランド品を買いあさり、高級フランス料理店でグルメ三昧だ!」
という途中から何がなんだか良く分からないバッシングが嵐のように巻き起こる。もちろん、しばらくして、飽きられて数字の取れなくなったこの事件は、まったく世間からは忘れられていくのだった。

さて、時計の針を現代に戻す。
特は流れ、日本には未曾有の大災害が襲い掛かった。2011年3月11日。東日本大震災。
東北沖を震源とした1000年に1度の大災害は日本人のあらゆる思考パターンや文化を変えるに至った。東北が震源地ではあったが、当然、関東地方もかなりの揺れを経験することとなる。しかし、みんなが忘れそうになっていた事実があった。そう。姉歯物件だ。
当時、震度5か6でパターンと倒れると報道された姉歯元1級建築士が設計したマンションは果たしてどうなっているのか?!答えは…

ビクともしていなかった。

当時、姉歯氏はこう語っている。
「耐震に関してはかなりの強度を保っておりますし、震度7や8にも十分耐えられるはずです」
そう、関東地方にある姉歯物件は実はフジテレビ関係者も住んでいた。お台場にあるフジテレビ本社にはかなり交通の便の良い所に姉歯物件が存在するのだ。ちなみに、それらの姉歯物件だが、少なくとも僕の知る限り…

1棟もヒビ一つ入っていない。

要は姉歯氏の言っていた言葉の方が正しかったのだ。
国土交通省省の定める耐震強度がそもそも、あまりにも強すぎる設定になっているだけで、姉歯氏の計算通り、1000年に1度の地震が来ても、彼らの物件やマンションはビクともしなかったのだ。
もちろん、そもそも論として、彼らは国のルールを破っている。なので、それは罰せられるべきだ。だが、あの時のテレビや週刊誌は、数字が取れることをいいことに彼ら二人を袋叩きにした。その後…

姉歯氏の最愛の妻は精神的な辛さから逃れるために2006年3月28日、自殺する。マンションから飛び下り自殺をしたのだ

実は姉歯氏は、証人として出席した2012年12月14日の衆院国土交通委員会で、
「木村建設からの圧力に耐えかね、構造計算書の偽造に手を染めた」
とする平成十年ごろの心境を、
「病気がちの妻が当時、入退院を繰り返していた。断ると収入がゼロになるということで葛藤した」
と証言している。姉歯氏の妻は精神的な問題を抱えており、闘病中だったのだ。

そんなことがあっても、東日本の震災を終えて、あの時の放送の謝罪、訂正一つしない。それがテレビの、マスコミの正体の一つだ。理由は簡単。
「あまりにも謝罪してばかりいたら、テレビの信用性がなくなるから」
だ。少なくとも、あの時の放送、半分は正しい。偽装はいけない。それは当然犯罪だ。だが、あそこまで袋叩きにしたのなら、東日本の震災の後は、ちゃんと検証もなされるべきだった。当時のマスコミは彼らの物件を
「地震で倒れる物件だ」
と罵っていたのだから。でもそれはしない。臭いものには、自分たちにとって不都合な真実は、大きく騒がれない限り、目をつむる。そういう体質が多くのマスコミには蔓延している事実は間違いなくあるのではないか?。少なくとも、僕はそう感じている。

ちなみに、余談をここで記しておく。

姉歯氏に関して連日報道された「超豪邸」と表現された自宅だが、いわゆる豪邸ではまったくなかった。愛人にマンションを買い与えたという記録もその後の調べで一切なかったことが分かっている。もちろん愛人と贅沢な海外リゾート旅行をしたという記録も一切なかった。隠し預金が何億円もあると報道されたが、そういう事実もなく、公判途中で、姉歯被告は保釈されるはずだったが、その保釈金を払えずに、保釈は却下されたという事実もある。

また、自殺した妻だが、この妻もブランド品を買いあさり、高級フランス料理店でグルメ三昧したとか、ホストクラブ遊びをしたという話も全く事実ではなかったことが後々分かっている。。むしろ、「ごく普通の、地味な主婦だった」という近所の声が圧倒的に多い。しかし、そんなことは報道されることはない。だって…

そんな話、面白くないし。テレビの信用、失うしぃ~。

姉歯氏には二人の男の子の子供がいる。そんな小さな家庭の話なんぞ、関係ない。巨大なテレビ利権の前には、そんな程度の命なんぞ、カスみたいなものだからだ。僕はこの男の子たちの将来を、心の底から応援したい。同じように暴走するマスコミの大嘘報道に家族を傷つけられたものの一人として。

“事故調”核心部分、いまだ意見対立

2014-11-28 11:36:26 | 医療と介護
西澤班と医法協の案を基に「検討事項」を整理 m3.com 

2014年11月26日(水) 橋本佳子(m3.com編集長)
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 厚生労働省の「医療事故調査制度の施行に係る検討会」(座長:山本和彦・一橋大学大学院法学研究科教授)の第2回会議が11月26日に開催され、医療事故の定義から、医療事故調査・支援センターの業務に至るまで、制度全般にわたる「医療事故調査制度の検討事項」について議論した(資料は、厚労省のホームページに掲載)。
 山本座長は、「かなりの部分で、なお意見の隔たりがある」「核心的な部分で意見の相違がある」と議論を総括、次回会議で、意見対立点について集中的に議論するとした。
 検討会の構成員の間で、意見に相違があるのは、医療事故発生時の医療事故調査・支援センターへの報告内容や報告のタイミング、事故調査報告書の記載内容、報告書を遺族に渡すか否かなどの点だ。前回会議で争点となったセンターに報告する医療事故の定義についても、「予期しなかった」などをどう規定するかが論点(『“事故調”検討会、来年2月の取りまとめへ』を参照)。
 医療機関からセンターへの報告内容については、「医療事故の内容」まで求める意見と、事故が起きた事実に限定すべきという意見に分かれたほか、タイミングについても「速やかに24時間以内」から、「1カ月以内」まで大きな開きがあった。報告書の内容も、再発防止策を含めるか否かで意見が対立。さらに報告書を遺族に渡すべきとの意見があった一方、医療法で求めるのは遺族への「説明」であり、報告書を渡すことは求めていないとの反論も出た。
 いまだ意見が食い違う点が多々ある中、厚労省の方針が明らかになった点もある。医療事故調査・支援センターの在り方だ。同センターは、医療事故の報告を受けるほか、事故調査結果の整理・分析など、さまざまな業務を担う第三者機関で、厚生労働大臣が指定する。
 日本医師会副会長の松原謙二氏が、複数箇所が指定される可能性を尋ねたのに対し、厚労省医政局総務課長の土生栄二氏は、「法律(医療法)では、1つに限る規定はなく、複数あり得るが、制度の趣旨から、できるだけ情報を集約する役割を考えているので、指定は基本的に1カ所と考えている」との見解を述べた。「(医療事故調査制度は)全国的な取り組みであり、センターは一定の業務を支援団体に委託できるため、関係団体と協力しながら運営していく」(土生氏)。
 現行では、日本医療機能評価機構が医療事故情報等収集事業を、日本医療安全調査機構は「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」を、それぞれ実施している現状を踏まえ、松原氏は「同様の機能を持つのは、2つある」とし、全国的な取り組みであるが故に、2つを指定するよう求めた。
 「西澤研究班」と医法協ガイドラインをベースに議論
 「医療事故調査制度の検討事項」は、(1)医療事故の定義、(2)医療機関からセンターへの事故の報告、(3)医療事故の遺族への説明事項等、(4)医療機関が行う医療事故調査、(5)支援団体の在り方、(6)医療機関からセンターへの調査結果報告、(7)医療機関が行った調査結果の遺族への説明、(8)医療事故調査・支援センターの指定、(9)センターの業務――が柱。それぞれについて、医療法の規定、「西澤研究班」(「診療行為に関連した死亡の調査の手法に関する研究」班)と、日本医療法人協会「医療事故調ガイドライン」で意見が一致した点と、相違点を整理している(『“事故調” 西澤班、中間報告取りまとめ』、『医法協“事故調”GL、橋本政務官に提出』参照)。
 山本座長は、会議の冒頭、議論の進め方について、「構成員の間で、議論が分かれる点はどこかを把握することを、主たる目的として議論したい」と説明、結論を出すことが目的ではないとした。
 センターへの「第一報」、その内容は?
 「議論が分かれた点」の一つが、(2)の「医療機関からセンターへの事故の報告」。報告内容や報告のタイミングが論点だ。
 日本医療法人協会常務理事の小田原良治氏は、「事故が起きた際に、第一報を入れる話であり、調査した結果と異なることもあり得るので、医療事故の内容に関する報告をすることは難しい」と述べ、医療機関名や日時、患者情報(年齢、性別や病名等)など、報告内容は最低限にとどめるべきと主張。松原氏も、「最初は状況が分からないので、分かる範囲でシンプルに報告すべき」とし、小田原氏の意見を支持した。
 これに対して、弁護士の宮澤潤氏は、「最初から医療事故の内容を書くべき。分かっている範囲で何が起こっているかを明らかにすることが必要。その後に、変わってきたら、その理由を明らかにしていけばいい」と述べ、「医療事故の内容に関する情報」も報告すべきと主張。南山大学大学院法務研究科教授・弁護士の加藤良夫氏も、「医療事故の内容に関する情報も報告しなければ、どんな事故なのかが分からない」とし、「第一報として、管理者が把握できた情報を簡潔に、負担がかからない形で報告すべき。詳細が分からない場合には、その旨を書く」などと述べ、宮澤氏を支持。
 「医療提供側」対「弁護士」の構図に見えたが、日本病院会会長の堺常雄氏は、「施設の大小にかかわらず、最初の時点で、ある程度分かっていることは報告すべき」としたほか、自治医科大学メディカルシミュレーションセンターのセンター長を務める河野龍太郎氏は、「情報は共有化しなければいけない。その点を考えた時、最低限のことは届け出た方が、医療安全のために重要」との意見で、医療提供側の間でも意見が食い違った。
 「報告」、1カ月以内?24時間以内?
 報告のタイミングについても意見が分かれた。医法協ガイドラインでは、「1カ月をメドにセンターに報告する」としている点について、「患者の視点で医療安全を考える連絡協議会代表」の永井裕之氏は、「1カ月はあまりに遅すぎる。なるべく早い時点で、分かったものを報告すべき」と指摘。加藤氏も、「どんなことが起きたのかを院内で検討し、第一報することは、遅滞なく速やかに、24時間以内くらいにできることだろう」と述べ、遺族への説明という観点からも迅速さが求められるとした。河野氏も、同様の事故が繰り返し起きるのを防ぐために、「速やかな報告が必要ではないか」とした。
 これに反論したのが、小田原氏。「我々がまずなすべきことは、遺族への説明」と述べ、センターへの報告とは別に、遺族への説明は継続して行うのが、医法協ガイドラインであるとした。その上で、「今回の制度は、医療安全のための仕組みであり、院内調査を主体としている。報告するかどうかを検討して報告するのが、1カ月をメドという意味」と説明。これに対し、堺氏は、「遺族への説明と同じ内容を、センターに速やかに報告できるのではないか」と述べ、迅速さが求められるとした。
 院内調査過程の「内部資料」、取り扱いは?
 (6)の「医療機関からセンターへの調査結果報告」や、(7)の「医療機関が行った調査結果の遺族への説明」も議論になった。
 加藤氏がまず確認したのは、院内調査過程の内部資料の取り扱い。通知のイメージとして、厚労省資料では、「外部に公表、開示しない」と記載している点について、「センターは、外部には該当しないという理解でいいか。センターには院内調査をレビューする役割なども想定されており、外部に当たらないとしないと、整合性が取れない」と述べ、厚労省に説明を求めた。
 土生課長は、「院内調査過程の内部資料は、報告書そのものではない」とし、その意味では「センターは外部に当たる」とした。ただし、センターが調査を行う場合には、医療機関に協力を求めることになるので、その場合に内部資料の提出を求めることはあり得るとした。
 調査報告書に何を書くか
 医療機関が院内調査終了後、センターに提出する報告書の内容について、加藤氏は、医法協ガイドラインで、「再発防止策は記載しない」としている点について、医療安全につながることから、「再発防止策はその都度、書いていくことが必要ではないか」と反論。
 河野氏も、「再発防止策を書かないと意味がないと思う」と指摘、ヒューマンエラーではなく、組織の中で事故は起きるという理解を基に、「マスト、ベター、ナイス」など、3段階くらいで対応策を書いておくことが必要だとした。堺氏も、「多くの事例が集まって再発防止に資するのは当然。また個々の例についても、対応していくことが必要ではないか」と発言。
 対して、小田原氏は、医法協ガイドラインでは、アドホックに立ち上げる院内医療事故調査委員会とは別に、常設の院内医療安全委員会で、再発防止策を検討し、実行可能なものから、順次改善に取り組んでいくと説明。報告書への記載は不要とした。
 鈴木氏は、弁護士の立場から、「報告書に再発防止策を書くのは、誤解を招くことを危惧しているのではないか。(法的な過失を議論する際の)結果回避可能性を議論しているわけではないのに、結果回避義務を法的に負うことに、再発防止策が利用される可能性はないと言えない。(結果回避可能性などを)特定するものではないとするなど、書き方を工夫すればいいのではないか」との意見を述べた。
 遺族に対し、報告書を渡すことを求めたのは、加藤氏。2013年5月の厚労省の検討会報告書(『院内調査、「外部の医療者の支援」が原則』を参照)や、今年5月の国会で、安倍晋三首相が「医療機関や遺族への情報提供を通じて、医療安全につなげる」と説明していることを引用し、「報告書そのものを交付すると、書き込むべきでないか」と提案。
 これに対し、小田原氏は、検討会報告書ではなく、改正医療法に基づき、議論すべきと指摘。同法では、「遺族に対し、厚生労働省令で定める事項を説明しなければならない」と規定されているだけで、検討会報告書にあった「報告書の開示」は求めていない。
 「予期しなかった事故」、定義は何か?
 さらに、第1回会議で意見が分かれた「医療事故の定義」についても、再度、議論された。医療事故調査制度では、医療機関の管理者は、「医療に起因した死亡・死産等で、予期しなかったものとして厚生労働省令で定めるもの」を、第三者機関である医療事故調査・支援センターに報告する。
 松原氏は、「現場の先生方に聞くと、『予期しなかった』の解釈が分からないという。院長の主観的な判断ではなく、客観的な評価がなければ、本当に届け出るべきかどうかの判断がしにくいのではないか」と述べ、現場が混乱しないよう、万人が見て分かるように、明確な表現で定義付けることを求めた(『“事故調”はWHOガイドライン準拠、日医が見解』を参照)。
 永井氏は、「本当に予期しなかったと言うのは、患者にとって説明を受けても、納得できないものではないか。こうしたものも真摯に扱わない限り、国民から信頼できる事故調査制度にならないと思う。被害者側の思いに対して、説明の在り方も含めて、予期しなかったとは何かをもう少し拡大的に考えた方がいいのではないか」と求めた。もっとも、医療法は「管理者が予期しなかった」としており、永井氏の要望は法律の範囲外になる。
 宮澤氏からは、「個々の医療事故に対して、その可能性が予期できたかどうかであり、一般的な確率の問題ではない」「単純な過誤も、医療事故調査の対象になると思う。単純な過誤だから対象外とするのは誤り」との意見が出た。
 センターによる調査、謙抑的であるべきか?
 そのほか、(9)の「センターの業務」のうち、センターが実施する調査も議論に。医療法上は、医療機関が報告した事例であれば、院内調査が終了する前でも、センターは調査を開始できる。
 浜松医科大学医学部教授の大磯義一郎氏は、「院内調査を実施している際には、センターは謙抑的であるべきではないか。院内調査がなかなか進まない場合に、センターに依頼できるという建て付けにしないと、院内調査が形骸化してしまう」とコメント。弁護士・医師の鈴木雄介氏も、遺族からの安易な依頼か否かを選別する何らかの手立てが必要との見解を示した。
 各種の論点について医療者の間でも意見が分かれる中、会議の最後に、全国医学部長病院長会議相談役の嘉山孝正氏からは、「本当により良い制度を作るなら、医療人は自浄作用を持っていなければいけない。また患者側も、被害者という言葉を使わず、医療側と対立軸ではなく、一緒にいい制度を作っていこうとしなければ、責任追及の方に走ってしまう。両方ともあまり自分の立場だけで話さず、いい制度を作るためにやっていかないと、現場でいろいろな問題が生じてくる」との発言もあり、「あるべき論」ではなく現場を踏まえた検討の必要性が指摘された。

「医療は経済成長を阻害」、次世代の党の公約に

2014-11-28 11:34:25 | 医療と介護
民主含め主要三党、成長産業化の方針は共通
m3.com 2014年11月27日(木) 池田宏之(m3.com編集部)
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 衆議院の解散に伴う12月投開票の衆院議員総選挙に向けて、主な野党の政策が出揃った。解散前の衆議院に10以上の議席のあった民主党、維新の党、次世代の党の3つの主要野党の医療関連の政策を見ると、医療はいずれも「成長戦略」の文脈に位置付けられている。
民主党の公約では「医療崩壊の危機」と指摘し、医療への理解を示した。
その一方、維新の党と次世代の党の公約では「医療は経済成長を阻害してきた岩盤規制」「診療報酬を市場に委ねる」などとの言葉もあり、医療に向けられた目は自民党よりも厳しい。
「増税分の半分しか充当ない」と批判
 消費税増税の先送りについて見ると、主要野党3党は、いずれも消費税引き上げ先送りの判断そのものを批判してはいない。自民党は、景気の動向を考慮する「景気条項」を削除した上で、2017年4月に増税を断行する方針を示している(『自民、医療の優先度低い可能性、政権公約発表 』を参照)。そもそも、消費税率10%への引き上げを盛り込んだ消費税法は、民主党、公明党も含めた3党合意に基づくものだが、民主党のマニフェストでは、増税を「延期」と明言し、還付措置付きの「給付付き税額控除」の導入の検討をうたっている。
 ただ、「景気条項」の削除について、11月24日にマニフェスト発表の会見に臨んだ福山哲郎政調会長は、「経済は生もの。(2017年に)どうなっているか分からないのに、何でも上げるというのは傲慢ではないか」と批判した。「給付付き税額控除」は、維新の党もうたっていて、「軽減税率や一律の給付金は費用対効果が悪い」としている。次世代の党の政策では、「医療を含めた社会保障給付の効率化」などの改革実現への道筋がつくまで、消費税増税を認めない方針。
 自民党の「消費税増税財源を全額社会保障の充実に充てる」という約束への実績に疑問も。民主党は、1兆円が充てられるはずだった2014年度予算ベースで、「0.5兆円に減らされており、約束違反」としている。維新の党も「(消費税)増税分を公共事業ばらまきに流用した」として、自民党の社会保障制度改革を批判している。
「医療崩壊の危機、再び」
 自民党は、医療について「成長産業」としての側面を期待しているのに対して、「社会保障制度」の中では、子育てを優先し、医療の優先度は低いとみられる。
 「社会保障制度」としての医療に一番理解を示しているのは民主党。民主党は、社会保障制度についてマニフェストで「充実・安定化で将来不安を軽減する」と明言。マニフェストの中の医療の項目では、「実質的に医療費が削減され、医療崩壊の危機がまた迫っている」として、2014年度の診療報酬改定率が実質マイナス1.26%だった点を指摘している。民主党は、与党時代に2回、診療報酬を引き上げた経緯があり、今回も必要な医療費の確保や地域の医療提供体制の立て直しをうたっているほか、医療従事者の労働条件改善、チーム医療の強化も盛り込んでいる。
 一方で、民主党は、医療の成長産業化についても期待を寄せている。「未来につながる成長戦略」の一環として「グリーン、ライフ、農林水産業、中小企業」が並んでいて、福山氏は会見の中で、「ライフは医療や介護など」と述べている。
「診療報酬、市場に委ねる」
 維新の党と次世代の党は、成長産業としての医療には期待を示す一方、旧来の医療を「岩盤規制」と位置づける立場で、自民党よりも厳しい視線を向けている。維新の党は、安倍政権が進めてきた医療改革について、「自民党の支持基盤を解体する改革は自民党にはできない」と批判。具体的には、患者申出療養(仮称)については、「(より自由度の高い)『選択療養』は医師会の反発で暗礁に」、千葉県成田市の医学部新設検討については、「『検討』のまま1年以上放置」と批判している。医療政策としては、成長戦略の一環として、従来からアイデアのあった混合診療解禁、データ活用による医療の標準化に加え、「診療報酬点数を市場に委ねる制度」としたい考えを示している。
 もともと維新の党と同一政党だった次世代の党も、維新の党に近い立場。「医療・福祉」分野について、「農業」「エネルギー」と並んで、「経済成長を阻害してきた岩盤規制」の1つとして挙げ、「補助金から(使途が限定される)バウチャーへ」「新規参入規制の撤廃」を目指す方針。具体的な政策としては、混合診療解禁に加えて、「医療費自己負担割合の一律化」を挙げている。患者申出療養(仮称)や国家戦略特区の推進で医療の成長を狙う自民党も含め、政治家の中には医療の成長産業化への期待が大きそうだ。

奨学金借り入れ院生「500万円以上」24% 

2014-11-28 11:32:15 | 社会問題・生活
 研究時間削りバイトも――院生協議会調査
朝日新聞 2014年11月27日(木) 配信

 大学院生の4割以上が奨学金を借り、その4分の1近い利用者の借入金総額は500万円以上。院生による自治会などの連合体「全国大学院生協議会」が26日発表した調査で、そんな苦しい現状がわかった。利用者の75%が返済に不安を抱えているといい、奨学金が経済的支援ではなく、事実上の「借金」として重荷になっている。
 調査は今年6~8月、全国の国公私立大82校の千人を対象に実施した。
 奨学金の借入残高があるのは428人で、うち500万円以上が24・7%。1千万円以上も3%いた。最も多かった金額幅は「100万円以上200万円未満」で22・9%。返済に対する不安の有無では、「かなりある」が43・0%、「多少」が31・7%で、合わせて74・7%に上った。
 将来への懸念を複数回答で聞くと、「生活費・研究費の工面」が57・1%、「就職状況」が55・2%でいずれも半数を超えた。研究時間が十分確保できない理由(複数回答)については、「アルバイト」が25・5%で最も多かった。生活費や研究費をまかなうため、研究時間を削ってでもアルバイトせざるを得ない大学院生もいた。
 自由記述では、「1千万円の借金を背負って将来の見通しが立たない」「授業料納入が困難で休学措置をとった」など厳しい現状を訴える声が寄せられた。(高浜行人)

まさに悪夢でありアクシデント

2014-11-28 11:05:06 | 創作欄
銀司はその日、非常に打ちのめされてしまった。
最終レースはいわゆる「銀行車券」であった。
どのように予想しても、2車で決まることを銀司は確信していた。
オッズを見たら1.7倍であり3連単の並びは570円であった。
ファンの期待値を確信した。
3番選手をマークしアシストする7番選手は格上。
銀司は7-3-9でゴール前を走り抜けるイメージを脳裏に浮かべ、車券を10万円買ったのだ。
車券が的中すれば57万円の配当である。
だが、信じられないアクシデントであった。
別線の8-1-5が4コーナーで果敢に捲くってきた。
ところが7番が8番選手を強引に外側にブロックした。
そして7番と8番は車体が接触し7番も8番の車体が故障し後退する。
そればかではない、8番に続いていた1番選手と5番選手が7番の車体に接触し落車してしまう。
結果的に一番弱い、ラインの4-2-6番が逃げる本命ラインの3番選手まで抜き去ってゴールしたのだ。
そのゴールの光景を目で追って銀司は呆然とした。
大きな響めきと怒りの声が競輪場を渦巻いた。
まさに悪夢でありアクシデントであった。
皮肉なことに5748倍の配当だった。
つまり100円の車券が57万4800円となったのだ。
帰りのバスの中で「だから、7-3-9は買うなと俺が言っただろう。8番は新人で勢いがある。だから7番は無理をしたんだよ。決して堅いレースじゃなかったんだ」
銀司は皮肉な気持ちになっていた。
「競輪に絶対はない。銀行車券など幻想だ」
「俺としたことが、本命で勝負してしまった。俺も年を取ったな」と心のなかで呟いた。