医科歯科通信  (医療から政治・生活・文化まで発信)



40年余の取材歴を踏まえ情報を発信

歪んだ形であればあるほど先鋭的に「全人生」映し出している

2014-09-14 23:19:19 | 受けとめる力
★「100人」いれば「100個の個性」がある。
釈尊は、この「違い」を尊重した。
一人一人の違いを的確に捉え、必要に応じて多彩な例えや言葉を駆使して教えを説いた。
★それは、「万人が等しく尊極の生命を備えている」という慈悲と智慧の発露である。
★誰もが自分らしく輝ける“理想の社会”としても、その地道な積み重ねの先に見えてくるものだろう。
★教師の胸中の一念の中にこそ、青少年の限りない成長も、時代の変革の活力も秘められている。
★互の違いばかり強調し、いたずらに不信や対立を煽り、不毛な憎悪や争いを繰り返してきた人類の歴史を転換していくことだ。
★体制、イズム、宗教、文明などの、あらゆる「分断」「差違」の壁を人類の心の中から取り払って「一つの地球」へと向かう。
その願いを分かち合うことだ。
★圧政下のソ連は崩壊した。
どんな歪んだ形であっても、否、歪んだ形であればあるほど先鋭的に「全人生」映し出しているのではないだろうか?





日本の武道に生きて アレキサンダー・ベネットさん

2014-09-14 00:31:20 | 受けとめる力
関西の剣豪はNZ出身 剣道7段、なぎなた世界2位
2011/8/9 7:00
終わりなき「自己発見の旅」
「感謝」「共感」「共存」を会得
)
 
国際的にも名高い剣道、なぎなたの名手が関西にいる。ニュージーランド出身のアレキサンダー・ベネット関西大学准教授(41)だ。腕前は剣道7段、なぎなた5段。7月に、兵庫県姫路市で行われた世界なぎなた選手権では男子個人2位に輝いた。


なぎなたの世界選手権で2位になったアレキサンダー・ベネット関大准教授(大阪府吹田市)
 心がけるのは周囲への感謝を忘れず、日々をほどよい緊張感を持って生きること。日本人が見習いたいほど真摯に武道を学び、海外への普及活動にも力を入れている。

■交換留学で来日し武道と出会う

 「脇の下に卵が入っているイメージで構えてごらん」。大阪府吹田市にある関大の道場に穏やかな声が響く。

 剣道の指導を受けるのは中国や韓国の留学生約20人。「打つときには気合を出して、体勢を崩さないこと。相手への礼儀も大切です」。ぎこちなく木刀を構える留学生への指南は、丁寧でやさしい。

 ベネット准教授が武道と出合ったのは1987年、17歳のときだった。千葉市内の高校に1年間、交換留学生として派遣され剣道部に所属。剣道は「初めて見た」というが、日本文化理解の一助になればと軽い気持ちで門をくぐった。

■竹刀を握る手や足の裏はマメだらけに

 この決断が「自分の人生を変えた」。剣道部の顧問は国体で活躍した経験を持つつわもの。その剣士相手の練習で竹刀を握る手や、足の裏はマメだらけとなったが、休みは許されなかった。

 嫌々続けた道場通い。しかし、そんな気持ちが一変する出来事が訪れた。夏の暑い盛り、顧問を相手に面や小手などの技を息も切らさず繰り出すかかり稽古は40分間にもわたり、実に3度も意識が薄れたという。「竹刀を持っていると、視界が真っ暗になってきた。このまま自分は死ぬのか、と思いながら打ち続けていると意識がはっきりしてきて、体が動くようになる。しばらくすると意識が遠のき、また戻る。でも、その日の練習を終えて、自分ははっきりと変わった」


留学生に丁寧に剣道の指導をするベネット准教授(大阪府吹田市)
■母国で普及活動

 生死の境をさまよったような感覚を味わい、肉体的、精神的限界が自分の思うよりもはるか遠くにあることを悟ったという。「自分はまだやれる、可能性があると肌で感じ取れた」。それからは練習が待ち遠しくなった。

 初段を取って1年間の高校留学を終えると母国ニュージーランドのクライストチャーチ市で剣道同好会を結成。1カ月もたたぬ間に、30人近くが集まったという。

 「捨て身とはどういう意味?」。年上の剣道仲間に聞かれたが、その意味を的確に答えられなかった自分をもどかしく感じた。

■日本人の強豪選手を相次いで破る

 「もっと武道を学びたい」と2年間働いて資金をため再来日。国際武道大に通って剣道の腕を磨くとともに、全日本なぎなた連盟(兵庫県伊丹市)で競技を学び、普及活動に携わった。

 今や剣道7段、なぎなた5段。7月3日の第5回世界なぎなた選手権では日本人の強豪選手を相次いで破り、男子個人の部で準優勝し、周囲を驚かせた。

 最近、自分自身によく言い聞かせる言葉がある。「残心」だ。武道の世界でよく使われる至言で、技を一本決めた後も気を抜かず、次の攻撃に備える心構えを意味するとされる。だがベネット准教授の解釈はより広くて深い。
「残心とは周囲のことに常に気を配り、油断をしない心のありかた。起きてしまったことを受け入れ、それがミスなら、自分に余裕がなかったことが原因と考える。そういう心境こそ失敗を防ぐことにつながる」

■慢心いさめ、武道の心伝授

 試合でも練習でも道場を離れた日常生活でも、ほどよい緊張感とゆとりが均衡を保つ境地。加えて言うなら他者への感謝と自らの慢心をいさめる気持ちを持ち続けること。

 「そう思えば試合に勝ってガッツポーズが出るはずがない」。40歳を過ぎ、おごらず高ぶらないことの大切さに思いが至るようになった。

 目下、気にかけているのが生まれ故郷のクライストチャーチ市を襲った今年2月の大地震の影響だ。自ら立ち上げた同好会は道場が全壊したため活動停止状態にある。

 「何とか道場を復興させたい。寄付金を集めるなど、活動を本格化しなければ」。武道から得たものが大きいからこそ、海外の仲間にもっと普及させなければという使命感に燃えている。


 アレキサンダー・ベネット 1970年2月、ニュージーランド生まれ。交換留学生として日本の高校に1年間留学。パイロットを目指していたが、剣道に傾倒。再来日し、なぎなたも習得する。母国カンタベリー大学を卒業後、京大大学院へ進み、2009年から関大国際部准教授(歴史社会学)。英語で書かれた剣道雑誌の編集長も務める。国際なぎなた連盟副会長。