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2014-09-10 09:26:10 | 厚生労働省
(H26.9.4(木) 12:58 ~ 13:26 省内会見室)

【広報室】

会見の詳細
《挨拶》
(大臣)

 昨日も短時間でありましたが、会見をさせていただきましたが、今日は改めて正式に会見ということでございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

《質疑》
(記者)

 次の消費税の10パーセントへの引上げを念頭に、今後、様々な社会保障の改革の話が待っているかと思うんですが、今後、どのように取り組まれていかれるかを教えてください。

(大臣)

 この10パーセントへの引上げの問題につきましては、御案内のように12月に総理が適切に判断をするということで、おそらくそれまでにあらゆる角度からの検討を加えていくんだろうというふうに思います。来年度の予算につきましては、御案内のように、この10パーセントに上げるか上げないかということが、今のうちに確定をしておりませんので、事項要求という形で社会保障の充実に向けての対応について要求しているという段階でございますので、これから年末にかけて経済情勢も踏まえながら、総理が最終的に御判断されるのを受けて、予算編成過程において社会保障の充実という本来の目的に向けて、どういうふうにしていくかということを検討していくことになろうかと思います。


(記者)

 GPIFのガバナンスの強化なんですけれども、これまでどおり社会保障審議会で議論を続けていくと、そういう理解でよいでしょうか。

(大臣)

 すでに8月にこの年金部会が始まっておりまして、議論をしていただいておるわけでございます。当然、この年金部会の中でGPIFについても御議論をいただけるものだというふうに思っておりますが、当然、私もこれまでの田村前厚生労働大臣の議論をされてきたことをあらためて反芻(はんすう)しながら、省内においても検討を重ねていきたいというふうに思っております。

(記者)

 消費税の10パーセント引上げについては、大臣御自身は予定どおり引き上げるべきかどうか、ここら辺はどういう御所見をお持ちなのかということと、社会保障についてはこれから給付の伸びを抑制していくということも課題になるかと思うんですけれども、過去2,200億円削減したりだとか、取り組まれましたが、抑制については大臣御自身はどのようにお考えをお持ちでしょうか。


(大臣)

 消費税については、これはもう最終的には総理がお決めになることでありますので、私がとやかく言うことではないというふうに思っております。それから、この社会保障につきましては、御案内のように、今はプログラム法に基づいて改革を進めているわけで、来年の通常国会では健康保険についての対応をしなければいけないわけでありますけれども、さらにその先に向けてのことについては、この改革推進会議で議論をしているわけであります。したがって、これらの中身について、すでに通っているいくつかの法律、そして来年の通常国会で通す法律などを踏まえた上で、中身については考えていかなければならないし、中長期的にはこの社会保障制度改革推進会議で議論を深めていただきながら、我々としてどうするかを考えていくということではないかというふうに思います。

(記者)

 GPIFについてまたおうかがいするんですけれども、かねてよりGPIFの監督者である厚生労働省が抜本的に考え方を見直すべきだというふうにおっしゃっておりまして、御自分が大臣になられて、今後厚労省を含めた運用方針全体とかの考え方をどのように改革されていくのか、改めて教えてください。

(大臣)

 すでに日本再興戦略で閣議決定している内閣としての方針であるわけでありますが、ここにおいて運用の改革と、それからガバナンスの改革を両方やっていくということを内閣としても決めているわけであります。これまでいろんな経緯があって、GPIFの運用方針というのは決まってきたわけでありますけれども、世界の流れや、あるいは日本の経済の流れをよく踏まえた上で、そしてまた世界の中でこの資産運用の安全かつ効率的な運用をするという年金法の哲学に照らし合わせてみて、やはりその時代に見合ったものにしていく。そして何よりも、国民の皆様にこれから年金を安心して見つめていただけるように、、繰り返しますけれども、安全かつ効率的な運用というのは何なのかということを考え、私が大事だと思っているのは、年金制度というのは、官房長官の時の経験からいっても、やっぱり国民の最後の拠りどころであります。したがって、この制度そのもの、運用含めた制度そのものに対する信頼というのがとても大事だというふうに思っていますので、単にGPIFにおける資産運用の、何というかポートフォリオセオリーのようなことだけで考えるのではなくて、やはり国民がどういうふうにすれば安心して毎日暮らしていけるようになるかという観点を私は大事にしていかなけばならないと思うんです。そういう意味では、このガバナンス改革というのはとても大事で、国民の皆様が御覧になって、これならば我々が掛けている貴重な掛金がきちっと運用されているんだなあという信頼感が生まれてくる。そういう強固なガバナンスを、体制を作り直していくということが大事なんだと思っていますので、この閣議決定されている二つの大きな方針、つまり運用の改革、そしてガバナンスの改革、これを二つともしっかりとやっていくということだと思います。

(記者)

 厚労省がGPIFを硬直的に管理している状況を排除しなけばならないということを、何度か講演などでもおっしゃっているんですが、今もそうしたお考えというのは変わってないのでしょうか。

(大臣)

 今のガバナンスのスタイルを踏まえると、もちろん厚労大臣が最終的な運用に関しても責任者であることは間違いないです。ただ、どういう形で運用の実態に関与していくかということはいろいろあるわけであって、その辺の整理をきちっとした方がいいんじゃないかということでもありますし、透明性の問題もあるでしょうし、何よりも今申し上げたように、国民が安心できるというこは、この説明責任をきちっと果たす体制というのものを、やっぱり大事だというふうに思います。ですから、そういうことも含めて、これからいろいろと検討していきたいと思ってます。

(記者)

 昨日もお話いただいた総理からの4つの指示があった中に年金という言葉はなかったかと思います。一方で市場や、あるいはここでもそうですが、かなり年金改革についての注目を浴びている現状もあるかと思いますが、大臣として、今後進めていく政策の優先順位というのはどういうふうに考えていますでしょうか。


(大臣)

 総理からは持続可能な社会保障制度を確立をするということであったわけでありますから、当然、社会保障といえば年金は入ってまいりますし、一番たぶん皆さんにとっては関心事であるわけですね、国民の皆様方から。したがって、年金の問題も重要であることは間違いないので、この社会保障制度の構築を図るという総理の指示の中に私は年金は入っているというふうに思っています。そして、優先順位ですけれども、順番をつけるような問題では私はないと思いますので、国民一人一人それぞれの一番の関心事というのは年代とか、あるいは体調とかいろんなものによって違うと思うので、やはりこれは優劣つけることなく、全てにおいてさっき申し上げたように一番大事なのは国民が信頼できる制度だと思っていただけることが大事だと思います。


(記者)

 改めてGPIFのことについてうかがえればと思っているのですが、今後の運用改革とガバナンス改革に関してはスケジュール的にはどういうふうに。


(大臣)

 まだですね、8月の下旬から年金部会で議論が始まっていますので、そこで審議が行われている間に、こちらで順番を、あるいはタイミングを言うわけにはいかないんで、まずはそこでの議論をしっかり聞きたいというふうに思っていますし、昨日就任したばかりのものですから、これまでの省内における議論や、様々なところでの議論というものを、もう一回反芻(はんすう)して、その上で審議会の先生方の御意見もしっかり受けた上で、決めていかなければいけないというふうに思っています。しかし、いろいろ皆様方にもいろいろな関心をいただいておりますので、できる限り早く答えを出していきたいとは思っています。


(記者)

 医薬品の関係なんですけれども、かつて大臣が御就任前に薬価の毎年改定について、製薬業界のセミナーで、当たり前のようにやった方がいいというような御発言をされていまして、毎年改定には賛成の立場でありました。今後、骨太の方針を踏まえて、中医協(中央社会保険医療協議会)でこの案件が議論されるんですけれども、厚生労働大臣に就任されての現在の御見解というのをお願いします。


(大臣)

 これはこの間、骨太の方針と(日本)再興戦略と一緒に党内でも議論し、最終的な文言が固まって、それで閣議決定もされたわけでございますので、私は内閣の一員としてそれに従うというのが当然の道だというふうに考えていますので、どうのこうのという私の個人的な考え方は今申し上げるつもりはございません。

(記者)

 そうしますと中医協の議論に委ねられるということですか。

(大臣)

 これは最終的には与党の議論もございますし、中医協もございますし、政府の中でも議論がなされると思いますので、あらゆるところでの議論を総合的に勘案して最終的には決めていくということになるんだろうというふうに思います。


(記者)

 危険ドラッグについてですけれども、今、取締りがかなり強化されてきていますが、一部では徹底的な取締りのためには薬事法の改正が必要じゃないかという声もあると思うんです。今の大臣のお考えと今後の対応みたいなものをお聞かせ願えればと思います。


(大臣)

 すでに7月に緊急対策というのが発表されて、それに基づいて立入もしてきた。そして、取締りはかなり徹底してやられてきているわけでありますし、インターネット販売についても同様のことが行われてきているわけであります。そのためにもその他もありますけれども、何しろ指定薬物の迅速な指定というのが大事であるということが一番だろうというふうに思いますし、さらには今こうやって緊急対策で示したことを徹底していくということがまず最初にやっていくべきことなんだろうというふうに思います。総理もできることは全て行うというふうに言っているわけですけれども、これはまさに違法・有害な薬物の広がりをあらゆる手段を通じて実態として封じ込めていくということがまず大事なんだろうというふうに思います。


(記者)

 薬事法の改正については、法改正までは必要ないとお考えなのか、そこら辺のところをちょっと教えてください。

(大臣)

 今申し上げたように対策をまず7月に打ち出したばかりで、これを徹底的にやってどこまで効果があるかということを考えるということだろうと思います。

(記者)

 労働関係で2点おうかがいします。一つは働き方の改革なんですけれども、政府の成長戦略の中では時間ではなく成果で評価するような働き方の改革などが掲げられておりまして、すでにいろいろと対象についても議論が始まっているところではありますけれども、大臣御自身の問題意識と望ましい改革、目指すべき改革のあり方みたいなものが、もしイメージされているものがありましたらお願いしたいのと、それともう1点は労働者派遣法の改正についてです。先般の通常国会で廃案になったんですが、これは臨時国会に再提出されるという理解でよろしいんでしょうか。以上、お願いします。

(大臣)

 まず、アベノミクスで我々が取り組まなきゃいけない問題の一番の原点の問題点、日本経済の抱えている問題点というのは、やはり生産性が低いという問題だと思うんです。これは、単に生産性が低いだけでは留まらず、世界の経済が変わっていく中で、日本の産業構造が十分それに見合って変わっていっていないという、その生産性が低いままできてしまっているという問題を抱えていて、この生産性をどう上げていくか。実は生産性が低いということは企業も利益を上げられないと同時に働く人の賃金が上がらない。こういう問題ですから、我々、アベノミクスとしては、やはり賃金を上げていく。それには企業の収益力も上げていくということが大事なわけです。そうなると、何が必要なのかというと、旧来型の産業でうまくいかないで、競争力がなくて収益も上げられない企業の中で低い賃金に甘んじて働かざるを得なくなっている人たちがたくさんいる。特に卸(売業)、小売(業)なんていうのは就業者ベースで行くと全就業者の約4分の1が卸(売業)、小売(業)にいるんです。したがって、この人たちが、もちろん卸(売業)、小売(業)の中で競争力がつけられて賃金も上げられるような企業にみんな変わっていってくれればいいですけれども、必ずしもそうじゃないということはやはり新しい産業に移っていく、新しい企業に移っていくというようなこともたくさん考えていかなきゃいけないわけです。そうなると、やはり労働法制、あるいは雇用制度というのは、これまではどうしても企業の中に留て発想での制度が多かったわけですけれども、これからはむしろフレキシブルな労働移動ができる、そういうようなものでなければいけないし、新しい産業や企業の中で働いていくための新しい雇用形態というものも必要だということなので、今回、成果を評価し、単に時間だけで動かすのではない制度というものを作っていったらどうかということで、もうすでにこれは閣議決定もされて進んでいるわけでありますので、もちろん働く人たちの権利はよく守っていかなければいけませんけれども、同時に、やはり最終的に生活水準を上げるということは賃金を上げられるということですから、それに相応しい雇用制度というものを作っていくということが大事だということではないかなというふうに思っております。それから、さっきの派遣の法制については臨時国会で、この間は通常国会でうまくいかなかったので次の国会に出すということで検討しているところでございます。

(記者)

 福島の原発労働者の健康管理、被爆管理の問題なんですが、いろいろ訴訟なりあって、いろいろ議論になるところなんですが、これまでの仕組みで、もし足りないところがあればどういうところを改革していくのか、これからかなり高線量の作業というのが増えてくるんですが、どういう立場で、どういう姿勢で厚労省として取り組んでいかれるかということをお聞きします。


(大臣)

 私もまだ十分にその辺りを勉強しているわけではありませんが、どうも今まで、我々が野党の時代も含めて見ておりますと、かなり下請けも第4次、5次、6次とか、そういうようなことになっていて、労働条件の管理が本当にうまくいっているのかどうかということについての懸念は私たちもよく聞いてきた話であります。これまでの関係大臣などの努力もあり、また、田村厚生労働大臣も当然のことながら、取り組みながら今日まで来ているんだろうというふうに思いますので、この福島第一の事故を下にした過酷な労働条件については、引き続いてしっかりとまず、どういうことになっているのかということを把握し更に強化をするということと、必要があれば対策は打っていくということだろうと思います。


(記者)

 先ほどの社会保障費の所に少し戻ってしまうんですが、この医療費が40兆円に迫る勢いであって、国の財政健全化の観点からもですね、医療費、年金など社会保障費抑制というのは課題になっていると思うんですけれども、こうした状況についての塩崎大臣としての現状の認識と、そういった社会保障制度を維持していくためには、経済力のある人たちに更なる負担をお願いすることもあると思いますが、そうしたところの負担と給付の考え方について、大臣の御所見をお聞かせください。

(大臣)

 医療費が確かにですね、かなり伸びてきて大台に乗ったというかそういう感じになってきていることは事実であるわけでありますし、しかし一方で、これまで様々な努力をしてこの医療の質を確保しながら負担をどれだけ軽くするかということを考えてまいったわけであります。したがって、医療の効率化というのは当然必要だというふうに思っていますので、これはこの間通った法律に基づいて、都道府県がこれから地域医療構想とリンクした医療費水準などの目標を定めることを検討課題とされているわけでありまして、今のこの医療費適正化計画について見直しをやはりしていかないといかんだろうというふうに思います。それから負担の問題が今御指摘がありましたが、やはり保険制度というのは財源というのは三つしかなくて、保険料とそれから自己負担と税金というこの三つしかないわけでありますから、この中でどういう組み合わせでいくことが一番公平で国民の納得がいくものなのかということを考えて、この負担のあり方というものを考えていかなければいけないと思います。一番大事なことは無為に国民負担を増やすということはよくないことでありますから、これをどうやって軽くしていくかということ、あるいは負担が仮に増えるとしてもそれをどれだけ最小限に抑えていくかということが大事なんだろうと思います。


(記者)

 労働分野についてなんですが、いわゆる新しい労働時間制度について、労働組合側からこれは長時間労働を促進するんじゃないかと、助長するんじゃないかという懸念がかなり示されています。まずこの懸念についてどのように受け止めてらっしゃるか。もう1点は長時間労働の抑制そのものを政府の方でも進めていくそうだということでそうしてらっしゃるわけですけれども、具体的にどのようにすれば長時間労働というものが抑制されるのか、今の段階でどのようにお考えかを教えてください。


(大臣)

 長時間を進めるなんていうことはあり得ないわけであって、それはもう我々はみんな個人レベルで考えてみればやはり個人の生活を大事にするということが、あるいは家族とともに過ごす時間とかですね、そういうことが大事であることは間違いないだろうと思います。今、お話がございました長時間労働の話でありますけれども、我々が今、やろうとしていることはさっき申し上げたように、時間を長くすることを目的としているわけでは決してございませんで、やはりどういう働き方かというのはそれぞれ違うので、それぞれが納得できる範囲内で自分の働き方ということができるようにするということがまず第一の基本だろうというふうに思います。それで、さっき申し上げたように、この長時間労働をしてもらうための制度改正をしているわけでは全くなくて、むしろ、きちっと成果が出ることによって生産性が上がり、そのことによって自らの働いている企業の成果も上がり、なおかつ、自分も評価を受けるという中で自分の賃金というものが決まってくるということを考えての話でありますので、一応に何か決めるような話ではなくて、人それぞれの働き方に見合っていかなければいけない話だと思っています。


(記者)

 子ども子育ての政策について、うかがいします。今後、新しい制度の下で、年間1兆円超えの予算が必要な中で7,000億円しか現状確保できていないという状態が続いています。今後、地方再生にも少子化対策というのが必要だと思うんですけれども、今後どのように予算を確保していくかということと、あと大臣のお考えの中では子ども子育て支援についてはどういった分野の充実が一番必要というふうにお考えでしょうか。

(大臣)

 7,000億円では足りないという話で、我々も自民党の政調の中でも相当な議論が行われてまいりました。それはもうすでに自公民で通りました一体改革の一連の法律の中でかなり詰まった議論をした上で各項目ごとに積み上げていった上でのことでありますから、どれが大事か大事ではないかというようなことではなくて、私も個人的には例えば要保護児童の議員連盟の会長をやっていますけれども、それももちろん大事だと思っていますが、しかしそれは優劣をつけがたいぐらい全体として子育て支援、あるいは子どもを産んで育てるということの条件をよくするために必要なものとしてやはりこれは7,000億円プラス3,000億円ぐらいは必要だなというところにきているので、この財源については最大限の努力をして確保していくということしかないんだろうというふうに思います。


(記者)

 全体の抑制の圧力というか考えもある中で、どのようにしてそこは進めていくと。


(大臣)

 今回、女性の閣僚も5人ということでずいぶん増えたという中にあって、これはやはり子育て支援も、それから家庭から女性が職場に出てくるということを支えるということも大事ですよという意味での今回の5人の大臣指名だろうと思いますので、そうなると優劣をつけるとするならば、最後は政治が決着を付けるということになるんだろうと思います。

 H26.9.5(金)塩崎厚生労働大臣閣議後記者会見概要

2014-09-10 09:21:00 | 厚生労働省

(11:15 ~ 11:37 厚生労働省内会見室)

【厚生労働省広報室】

会見の詳細
《閣議等について》
(大臣)

 今日は閣議がございましたが、中身は特に皆様方に御報告する事案はございませんでした。冒頭、私の方から発言を申し上げたいことがございまして、デング熱についてでありますが、昨日、11時時点で55名の患者が確認され、感染者数が増えております。東京都においては、昨日、公園の広範囲でウイルスを保有する蚊を確認し、今後、蚊の調査の強化とともに、公園の大部分を当分の間閉鎖し、さらなる蚊の駆除を実施することといたしました。これにより、代々木公園内のウイルスを持つ蚊の減少が期待されると考えておりますが、私どもといたしましては、感染拡大を防止するため予断を持たず、様々な事態を想定して対応する必要があり、既に対応しておりまして、例えば、全国の自治体にデング熱に関する対応マニュアルをすでに配布しているところでありまして、このようなことを含めて、今後ともしっかり対応していきたいというふうに考えております。厚労省としては、国民等への情報提供、医療の確保、予防蔓延防止策、それから情報収集の徹底などを行ってまいりました。さらに、今回の代々木公園の一時閉鎖等にあたりまして、連日、関係自治体などと緊密に連携いたしておりまして、国立感染症研究所からウイルス学とか、昆虫学の専門家を10人派遣いたしまして、技術指導、これはまず第一に調査、検査、対策、これらについて支援を行ってきているところでございます。引き続いて、自治体、特に東京都と渋谷区が今のところはこの連携の相手でありますけれども、感染の拡大の防止のために総合的な対策を講じてまいりたいというふうに考えております。なお、これはすでに繰り返し申し上げているところだと思いますが、デング熱は発症しても重症化することは少ない。そして、これまで我が国でデング熱を発症されて、亡くなられた方は報告されておりません。引き続き、冷静に対応していただければというふうに、国民の皆様方には申し上げておきたいというふうに思います。引き続き、厚労省としてもしっかりと対応してまいりたいと思っております。

《質疑》
(記者)

 デング熱の件なんですが、感染者数が昨日の段階で50人を超えていて、その後、自治体から五月雨に報告があって、実際は60人近い数に現在なっているかと思うんです。今後、疑い例の人たちというか、感染者の方がどれぐらい、代々木公園に関してですけれども、増えそうなものなのか、また、今日も新たな数字が頂けると思いますけれども、ちょっと昨日になってペースというか、増えた数が少なくなってきたなという気がするんですけれども、今後の見通しというか、どのぐらいの数字になりそうなのかというのはどうでしょうか。


(大臣)

 これは当初から言われていたように、蚊を媒介してうつっていく病気だということで、その範囲は基本的には大きくないはずであり、また、気温がだんだん下がってくるということもありますから、大きく拡がる筋合いにはないというふうに思っていますけれども、しかし、今回のような例は、いったいどこからどういふうに入ってきたのかという大元の感染源は特定できないわけでありますから、我々としては水際でまず、すでに高熱で入ってくる人を抑えるとか、それと、これから医療関係者とよく相談して、今回たまたまデング熱に明るい先生が、お医者さんがおられたので、これの特定ができましたけれども、今後は全国で人の往来が国境を越えて多くなっているだけに、どこで何があってもちゃんと対応できるように医療関係者ともよく連携しながら、そういったことが仮にあるとすれば、ただちに分かるようにしていくように連携していきたいと思っております。


(記者)

 今、感染の疑いということで検査途中の方というのは、まだかなりいらっしゃるんですか。

(大臣)

 そんなに増えるという話は、私どもは聞いておりません。

(記者)

 昨日、最高裁で泉南アスベスト訴訟の上告審の口頭弁論が開かれましたけれども、改めて、国側は過去の規制について適時適切だったいうふうに主張されましたが、大臣はどういうふうにお考えでしょうか。


(大臣)

 この大阪のアスベストのケースだと思いますが、これにつきましては最高裁の判決日が指定されたというふうに聞いております。これが10月9日に行われて、口頭弁論が行われる中で、指定されたというふうに聞いておりまして、この訴訟については、この事案争点が共通する大阪高裁の第一陣と第二陣とで中身が、判断がわかれたというふうに私も聞いておりますし、これは最高裁の判断、この10月9日の判決日が決まったということでありますけれども、その判断を待つということに尽きるんだろうというふうに思いますので、その判決を受けて、また対応してまいりたいというふうに思います。


(記者)

 第一陣訴訟の控訴審で国が勝っているわけですが、その中に、経済成長と労働者の命というのをバランス、比較考量した時に、時には経済成長が優先することがあるんだというような書きぶりになっていて、それについてかなり原告側が批判しているんですけれども、経済成長と労働者の健康、あるいは命といったものが比較考量されるようなことというのがあるのかどうかということについて、大臣御自身がもし見解をお持ちでしたら教えてください。

(大臣)

 それはどこでの表現ぶりについて、判決ですか。

(記者)

 判決の中に確かにそういうふうに読める書きぶりがあるんです。

(大臣)

 判決でありますから、それは司法の判断なので、我々行政側が司法の中身について、コメントするのは差し控えた方が良いと思います。ただ、我々基本的なスタンスは、やはり命は何よりも大事だということであるというふうに思います。ただ、一方で、経済成長はおろそかでいいのか、これもないことでありますので、そういうことに尽きるんじゃなかと、私は思います。


(記者)

 原爆症の認定についておうかがいしたいんですが、昨年の12月に新基準ができまして、認定件数自体は増えていると認識しているんですが、一方で、新基準でも対象外とされる人が地方で認定されるというケースも出ていることで、それに対して被爆者団体から批判もあると思うんですけれども、来年は被爆から70年という節目になると思いますし、被爆者の方も高齢化してらっしゃると思うんですが、その節目に向けてですね、救済対象の拡大に向けて新基準を見直したりとか、そういった考えを大臣御自身はどのように考えてらっしゃいますでしょうか。


(大臣)

 今の新基準を昨年の12月に策定された、大幅な見直しを行われたわけでありますが、これにつきましては被爆者代表の方にも御参加いただいた、この原爆症認定制度のあり方に関する討論会でこの見直しが行われてきた議論を重ねた結果だというふうに理解しております。この結果、新しい審査方針の下で非がん疾患の認定数も5倍に増えているということで、見直しをしたことによる結果も出ているというふうに思っています。今、お話がありましたように、今年に入ってから3件の地裁判決がありまして、一部の事案において国の敗訴となっているのがあったり、新しい審査方針では認定できない事案について、高裁に控訴されているというふうに聞いております。これらの事案で、負けているものについて申し上げると、一つはこの改定前に結審しているということもあった、それから、なかなか一般的な科学的知見では放射線による健康被害かどうかということの判定が難しいということが考えられるということでありますので、これから申請がさらに増えていく中にあって、その認定の審査をなるべく早くやって、そして、これが十分なものかどうかということを積み上げを見ながら考えていきたいというふうに思います。


(記者)

 賃金についておうかがいします。大臣就任前の(9月)2日の毎月勤労統計で、7月の名目賃金が非常に大きな伸びになっている一方で、実質賃金はずっとマイナスが続いています。昨日、日銀の黒田総裁は、実質賃金のマイナスはだんだん影響は小さくなってくるというふうな御発言をされていましたけれども、大臣として、現在の賃金動向をどういうふうに見てらっしゃるのか、また、今後の景気への影響というのをどう考えてらっしゃるかを教えてください。


(大臣)

 これは基本的には総理がおっしゃっているように、この賃金と、いってみれば経済成長の好循環というか、そういうものが基本的には進んでいるというふうに私も思っています。2.6パーセントというのは、これは実は5か月連続、なおかつ、2パーセント台の水準というのは9年8か月ぶりということで、かなりの伸びになっているわけでありまして、それも特に御案内のように所定内が0.7パーセント増えているというのが私はとても大事だと思います。今まではどちらかというと所定外、それからボーナスですね。これは増えているというのが特徴だった。問題はやはりいつもいわゆる所定内の賃金が上がっていくということが大事であって、最初はボーナスにきて、それから時間外にきて、どちらが先か両方あり得ますけれども、時間外がきて、ボーナスにきて、それで所定内ということですけれども、今回はいずれもいい数字で所定内が0.7パーセント、そして所定外が3.3パーセント、そしてボーナスが7.1パーセントということで、実質賃金はマイナスの1.4ということで、今までずっと3パーセント台が2、3か月続いていましたから、そういう意味ではよかったと思います。基本的には雇用情勢はもちろんこの有効求人倍率や失業率の低下に見られるように需給はタイトになりつつあるということでありますので、あとは実質賃金も上がっていくようにするということに心砕いていくということも大事だし、今のこの需給がタイト化して全体として賃金が上がっていくような労働市場の環境というものを持続的に続けられるようにしていくということのために、実は産業構造改革の転換とか、あるいは企業の統治の仕方とか、そういうことを徹底的にやるという、今回、成長戦略で出したそのメニューをきちっと確実にやるということが大事だというふうに思います。


(記者)

 デング熱についてなんですけれども、今の都の現時点での対応が十分かとお思いか。

(大臣)

 どこの。

(記者)

 東京都です。東京都の駆除作業であったりとか、そういう対応は十分なのかというような評価と、あと厚労省が今後、感染拡大を防ぐために具体的な何か対策というのはあるのかということをお聞かせください。


(大臣)

 東京都はその時点時点でですね、得られた情報に対して対応しているというふうに思ってはおりますが、今般、さらに新たな事態が判明をしたということで迅速に対応したんだというふうに理解をしております。大事なことは今申し上げたように、渋谷区だけとかですね、そういうことで安心をするんではなくて、いかなることがあってもいいようにしないといけないほど人の出入りは多く、激しくもなっているわけでありますから、厚労省としては、やはり常時何が起きてもいい体制を作るために医療界との関係も、より緊密にしていくということ。そして、国民の皆様方、もちろんお医者さんもそうですけれども、こういった外から今までなかったいろんなものが入ってくる可能性や、あるいは少し地球温暖化で今までの天候では考えられなかったようなことが起こりうるということを頭の中にしっかりと入れていくということが大事なんではないかなというふうに思って、心して、厚労省としても対応するように私も事務方に指示をしているところであります。


(記者)

 デング熱に関連して、現時点で代々木公園周辺以外でデング熱に感染している疑いがある方というのは、今情報として入ってきているんでしょうか。


(大臣)

 まだ聞いておりませんが、そういうことがあってもいいように我々としては対応していかなきゃいかんというふうに思います。


(記者)

 GPIFの運用の件でおうかがいしたいのですけれども、現在、運用の大部分が外部に委託しているということについて、過去の報道の中でも塩崎大臣自身は、全部外任せではよくないという趣旨の御発言をされています。今は債券の自家運用に限られていると思いますけれども、この自家運用の範囲というものを例えば株式に広げていくとか、そういった形の運用の見直しというのは考えられるのかどうか、教えていただけますでしょうか。


(大臣)

 これは私は私なりにもちろん考えが今までありましたし、発信もしてきましたが、これはまず年金部会で議論を始めていただいてますから、そこでしっかりと議論していただかなきゃいかんなというふうには思っております。今のところはこの間のスチュワードシップ・コードでも、アセットオーナーとしての立場からの発信をしているというふうに思いますので、これをアセットマネジャーになるかどうかということも含めて、これは議論を重ねていかなければいけないのではないかというふうに思っております。


(記者)

 この運用のあり方というのは年金部会で議論をしていくのか、運用委員会の方でやっていくのか、それはどちらなんですか。

(大臣)

 制度はやはり年金部会で議論していただくということであって、運用委員会というのはGPIFの中の、いっていみれば理事長の諮問機関みたいなものですから、それは全然レベルの違う話だと思います。


(記者)

 この冬、年末にかけての年金部会の中で、自家運用なり、外部委託のバランスをどうするのかということはその資産も含めて検討していかれると。


(大臣)

 GPIFの法律がどこまでの範囲の資産の運用の仕方を許すのかということについて、我々は議論しなければいけないんじゃないかと私はずっと思っていますので、そういったことは法律に基づいて動いているGPIFそのものが、ものを決めたりするということはないんだろうと思います。制度を作るのは、法律を作るのは最終的には国会ですけれども、行政としてどういう提案をしていくかという時にこの審議会で議論していただくということが出てくるんだろうし、もちろん当然我々も中で議論を鋭意やっているということであります。

(記者)

 関連ですけれども、今は自家運用は国債だけだと思うんですけども、株の自家運用に関しても今後の検討対象になり得るという理解でよろしいんでしょうか。

(大臣)

 それはこの間のように申し上げているように、強固なガバナンスの下で、どういうリスク分散をしながら分散投資をすることが、全体として、年金掛金を安全かつ効率的に運用できるのかということを我々はこれから詰めていかなきゃいけないと思うんです。それは繰り返して申し上げますけれども、最終的には国民の皆さん方がそういう運用の仕方ならば、そしてそういう運用の体制の下で、ガバナンスの下でやるんだったらば安心できるな、任せてみないなというふうに思っていただくようにしていくことが大事なんではないかと私は思っています。


(記者)

 デングのところで確認なんですけれども、そんなに増えるという話は聞いていないということだったんですが、具体的な数字というのは何かお持ちなんでしょうか。それとあわせて、以前は感染が拡大するという見方はないという見方だったんですけれども、その見方は変わっていないんでしょうか。

(大臣)

 急拡大するというふうには認識しておりません。

(記者)

 昨日、副大臣と政務官の人事が決まったわけですけれども、大臣は新たに設置できます大臣補佐官についてはどのようにお考えでしょうか。

(大臣)

 元々、これは我々、第一次安倍内閣で始めた公務員制度改革の中から出てきて、公務員制度改革基本法に入れ込んだものでありますが、第一次安倍内閣の哲学がそこに出てきているということなので、当然、これは官邸主導、政治主導の政策決定をやる一つの手段ということで考えているわけであります。私も個人的には是非、積極活用してみたいというふうに思っています。

生命力を高めるための教育、鍛錬が不可欠

2014-09-10 08:13:56 | 受けとめる力
生命力=生き抜く力
21世紀のキーワードは、「生命力」
2014年版「自殺対策白書」によると、2012年も20~39歳の死因の第1位自殺。
統計を開始した2006年から7年連続。
自殺が若者の死因の第1位を占めるのは先進国7か国では日本だけ。
政府は、自治体の自殺対策事業を支援する「地域自殺対策緊急強化基金」を設け、地域の実情に応じた対策を促している。
結局、生命力を高めるための教育、鍛錬が不可欠。

治療しなくとも治るがんもあるはず

2014-09-10 07:15:08 | 雑記・断片・映像
先週の金曜日、朝目覚めたら舌が痛い。
以前もそんなことがあったが、痛みが段々増してきた。
左腕が痛んだこともある。
そして筋肉が腫れてきたこともある。
それでも放置している。
額にできた黒いホクロのようなものが段々大きくなってきた時には、息子も家人も「皮膚がん」だと言ったが、数か月で血が流れその黒い大きな塊が落ちて、その痕もきれいに消えた。
自然治癒である。
左肘も時々痛む、痛みは体の異変の信号とも言える。
舌の痛みは毎日、酒を口に含んだり、熱いお茶を口に含んで痛みを和らげた。
熱いお茶を口に冷めるまで含むことを100回数ほど繰り返すと痛みが和らいだのだ。
喋るのも痛い、食べるのも痛かったことが嘘のように痛みが和らいだ。
がんになっても病院にいかない覚悟だ。
治療しても治らないがんもある。
治療しなくとも治るがんもあるはず。

梅村さとしの『今の医療政策で満足ですか』

2014-09-10 00:13:41 | 医療と介護
ドイツの医療、行ってみたら本当はこんなだった(その3)
「誰も開業医にならない」時代が来る?


日経メディカル2014年9月5日 コラム
梅村さとし※
 前回も述べましたが、2011年データによると、ドイツ国内で就業している医師(約34万2000人)のうち、外来業務に携わる医師(開業医)は約14万3000人。このうち契約医(公的医療保険の保険契約医)は約12万2000人。その内訳は家庭医が約5万7000人、専門医が約6万5000人となっています。

 約1944億ユーロ(約27兆円)あるドイツの公的医療保険給付総額のうち、各州保険医協会を通じて開業医に支払われる診療報酬(公的医療保険給付)は約300億ユーロです。その内訳は専門開業医へ約180億ユーロ、家庭医へ約120億ユーロとなっています。近年、これとは別に新たな診療報酬の支払いルートが確立してきました。保険医協会とは別組織の「家庭医協会」を通じたルートです。

外来受診患者数を制限する必要なし
 家庭医協会も、医師会、保険医協会と同様、「連邦家庭医協会」と「州家庭医協会」の2層構造になっているのですが、各州の家庭医協会に属している家庭医の数は約3万人。家庭医全体(約5万7000人)に占める家庭医協会の加入率は50%を超えています。家庭医協会を通じて家庭医に支払われる公的医療保険給付額(診療報酬)は、保険医協会を通じて家庭医に支払われる診療報酬総額の約1割程度の規模(10億ユーロ以上)と言われています。

 この支払い方式がスタートしたのは2008年のバーデン=ヴュルテンベルグ州であり、以降、他の州に広がりをみせています。家庭医協会を通じた新たなルートで診療報酬を受け取るには、被保険者(国民)の登録が必要となります。診療報酬の支払い方法(一例)は以下の通りです。
(1)受診回数にかかわらず、患者1人の年間登録で65ユーロ
(2)受診回数にかかわらず、次の四半期(3カ月)ごとに40ユーロ。年3回まで請求できる
 【注】最初の四半期が65ユーロで、第2~4四半期はそれぞれ40ユーロ。同一四半期に何回受診しても定額制
(3)慢性疾患に対する報酬は四半期ごとに25ユーロまたは30ユーロの定額制。年に4回まで請求できる。技術アシスタントがいない場合が25ユーロ、いる場合が30ユーロ
(4)緊急往診、簡単な外科処置、予防接種等の特別加算

 この支払い方式による家庭医にとってのメリットは以下のようなことがあります。
(1)もらえる診療報酬額が予想しやすくなった
(2)20%程度、以前より診療報酬額が増えている
(3)診療報酬の請求事務が簡素化し、楽になっている

 一方で、患者(被保険者)側のメリットは
「家庭医に患者を診察する義務が生じた」
ことが挙げられます。

 保険医協会を通じた診療報酬支払いにおいては、診療件数が増えると、件数当たりの単価が減額されるルールになっています。よって、これまで開業医の多くは四半期ごとの外来受診患者数を制限していました。しかし、新しい家庭医への支払い方式ではそのような制限をする必要はなく、むしろ登録することによって家庭医側に「診療する義務」が発生するルールとなっているのです。

 ただ、登録されている被保険者の人数は減少傾向にあります。現在の登録被保険者は、ドイツ全体で約330万人。2010年調査団報告書には「約400万人」と記載されているので、4年前と比較してやや減っていることになります。

 減少した理由は、この制度に登録された被保険者(国民)には、必ず自分の担当の家庭医を受診する義務が生じるからです。これは登録した国民側からみれば、明確なゲートキーパー方式になります。一方で登録されていない被保険者(国民)は、家庭医でも専門開業医でも自由に選択して受診することが可能でフリーアクセスが認められています。

収入の低さが若い医師の家庭医離れの一因に
 家庭医を希望する若い医師も明らかに減っています。その一因は、金銭的なインセンティブの少なさです。収入の伸び率は家庭医が専門医を上回っていて、両者の差は徐々に縮まってきてはいますが、開業医の収入(収支差額)は「専門医>家庭医」となっており、家庭医クリニックの収入(収支差額)は循環器専門クリニックの3分の2くらいのイメージになっています。

 家庭医の得る報酬の約70%が包括化されたもの、約30%は出来高によるものとなっています。開業医の報酬の一定部分を家庭医向けに確保しようとする動きがありますが(政治側でも、家庭医側でも)、このことが専門医に不安を与え、「専門医」対「家庭医」の対立構造にもつながっています。

 ドイツ国内において、家庭医制度の推進で医療費を抑制できるという明確なエビデンスは存在しないと言われています。イギリスやオランダのように家庭医のゲートキーパー機能を国民に強制すれば抑制できるのかもしれませんが、ドイツでは「強制」ではないからです。

医師の定年制を廃止する苦肉の策
 開業医になる際には、大部分の医師が専門医資格に基づいた保険医認可を受けます。この認可を受けなければ、公的医療保険の患者を扱うことはできません。しかし、その地域で保険医として開業できるか否か(保険医認可を受けられるか否か)は、各診療科における需要計画に沿って決定されます。自分の希望する診療科の空きがあれば、保険医認可が受けられる形です。

 ドイツ国内では2007年まで、保険医は「68歳定年制」でした。定年制は2011年改革で完全に廃止されましたが、その理由は、若い医師の「開業離れ(特に家庭医離れ)」でした。特に地方での家庭医の開業医不足は深刻になってきており、これが「68歳定年制」を廃止するきっかけとなりました。

 これまで数回にわたって、ドイツ国内の専門医研修・保険医契約や開業事情、家庭医の現状について述べてきました。日本でも新たな専門医制度が検討され始め、「総合診療科」という新たな専門医資格も創設されることが決定しました。それらをどう生かしていくのかはまだほとんど判明していませんが、その制度設計を間違えれば、「誰も開業医にならない」という時代が到来するかもしれません。その意味でも、ドイツの状況はとても参考になると思います。
※梅村さとし(前参議院議員、元厚生労働大臣政務官、医師)2001年阪大医学部卒。阪大病院、箕面市立病院などを経て、07年参院議員に当選。12年厚労大臣政務官に就任。13年7月の参院選で民主党から出馬も落選。現在、再び国政を目指して在野で勉強中。

梅村さとしの『今の医療政策で満足ですか』

2014-09-10 00:13:41 | 医療と介護
ドイツの医療、行ってみたら本当はこんなだった(その3)
「誰も開業医にならない」時代が来る?


日経メディカル2014年9月5日 コラム
梅村さとし※
 前回も述べましたが、2011年データによると、ドイツ国内で就業している医師(約34万2000人)のうち、外来業務に携わる医師(開業医)は約14万3000人。このうち契約医(公的医療保険の保険契約医)は約12万2000人。その内訳は家庭医が約5万7000人、専門医が約6万5000人となっています。

 約1944億ユーロ(約27兆円)あるドイツの公的医療保険給付総額のうち、各州保険医協会を通じて開業医に支払われる診療報酬(公的医療保険給付)は約300億ユーロです。その内訳は専門開業医へ約180億ユーロ、家庭医へ約120億ユーロとなっています。近年、これとは別に新たな診療報酬の支払いルートが確立してきました。保険医協会とは別組織の「家庭医協会」を通じたルートです。

外来受診患者数を制限する必要なし
 家庭医協会も、医師会、保険医協会と同様、「連邦家庭医協会」と「州家庭医協会」の2層構造になっているのですが、各州の家庭医協会に属している家庭医の数は約3万人。家庭医全体(約5万7000人)に占める家庭医協会の加入率は50%を超えています。家庭医協会を通じて家庭医に支払われる公的医療保険給付額(診療報酬)は、保険医協会を通じて家庭医に支払われる診療報酬総額の約1割程度の規模(10億ユーロ以上)と言われています。

 この支払い方式がスタートしたのは2008年のバーデン=ヴュルテンベルグ州であり、以降、他の州に広がりをみせています。家庭医協会を通じた新たなルートで診療報酬を受け取るには、被保険者(国民)の登録が必要となります。診療報酬の支払い方法(一例)は以下の通りです。
(1)受診回数にかかわらず、患者1人の年間登録で65ユーロ
(2)受診回数にかかわらず、次の四半期(3カ月)ごとに40ユーロ。年3回まで請求できる
 【注】最初の四半期が65ユーロで、第2~4四半期はそれぞれ40ユーロ。同一四半期に何回受診しても定額制
(3)慢性疾患に対する報酬は四半期ごとに25ユーロまたは30ユーロの定額制。年に4回まで請求できる。技術アシスタントがいない場合が25ユーロ、いる場合が30ユーロ
(4)緊急往診、簡単な外科処置、予防接種等の特別加算

 この支払い方式による家庭医にとってのメリットは以下のようなことがあります。
(1)もらえる診療報酬額が予想しやすくなった
(2)20%程度、以前より診療報酬額が増えている
(3)診療報酬の請求事務が簡素化し、楽になっている

 一方で、患者(被保険者)側のメリットは
「家庭医に患者を診察する義務が生じた」
ことが挙げられます。

 保険医協会を通じた診療報酬支払いにおいては、診療件数が増えると、件数当たりの単価が減額されるルールになっています。よって、これまで開業医の多くは四半期ごとの外来受診患者数を制限していました。しかし、新しい家庭医への支払い方式ではそのような制限をする必要はなく、むしろ登録することによって家庭医側に「診療する義務」が発生するルールとなっているのです。

 ただ、登録されている被保険者の人数は減少傾向にあります。現在の登録被保険者は、ドイツ全体で約330万人。2010年調査団報告書には「約400万人」と記載されているので、4年前と比較してやや減っていることになります。

 減少した理由は、この制度に登録された被保険者(国民)には、必ず自分の担当の家庭医を受診する義務が生じるからです。これは登録した国民側からみれば、明確なゲートキーパー方式になります。一方で登録されていない被保険者(国民)は、家庭医でも専門開業医でも自由に選択して受診することが可能でフリーアクセスが認められています。

収入の低さが若い医師の家庭医離れの一因に
 家庭医を希望する若い医師も明らかに減っています。その一因は、金銭的なインセンティブの少なさです。収入の伸び率は家庭医が専門医を上回っていて、両者の差は徐々に縮まってきてはいますが、開業医の収入(収支差額)は「専門医>家庭医」となっており、家庭医クリニックの収入(収支差額)は循環器専門クリニックの3分の2くらいのイメージになっています。

 家庭医の得る報酬の約70%が包括化されたもの、約30%は出来高によるものとなっています。開業医の報酬の一定部分を家庭医向けに確保しようとする動きがありますが(政治側でも、家庭医側でも)、このことが専門医に不安を与え、「専門医」対「家庭医」の対立構造にもつながっています。

 ドイツ国内において、家庭医制度の推進で医療費を抑制できるという明確なエビデンスは存在しないと言われています。イギリスやオランダのように家庭医のゲートキーパー機能を国民に強制すれば抑制できるのかもしれませんが、ドイツでは「強制」ではないからです。

医師の定年制を廃止する苦肉の策
 開業医になる際には、大部分の医師が専門医資格に基づいた保険医認可を受けます。この認可を受けなければ、公的医療保険の患者を扱うことはできません。しかし、その地域で保険医として開業できるか否か(保険医認可を受けられるか否か)は、各診療科における需要計画に沿って決定されます。自分の希望する診療科の空きがあれば、保険医認可が受けられる形です。

 ドイツ国内では2007年まで、保険医は「68歳定年制」でした。定年制は2011年改革で完全に廃止されましたが、その理由は、若い医師の「開業離れ(特に家庭医離れ)」でした。特に地方での家庭医の開業医不足は深刻になってきており、これが「68歳定年制」を廃止するきっかけとなりました。

 これまで数回にわたって、ドイツ国内の専門医研修・保険医契約や開業事情、家庭医の現状について述べてきました。日本でも新たな専門医制度が検討され始め、「総合診療科」という新たな専門医資格も創設されることが決定しました。それらをどう生かしていくのかはまだほとんど判明していませんが、その制度設計を間違えれば、「誰も開業医にならない」という時代が到来するかもしれません。その意味でも、ドイツの状況はとても参考になると思います。
※梅村さとし(前参議院議員、元厚生労働大臣政務官、医師)2001年阪大医学部卒。阪大病院、箕面市立病院などを経て、07年参院議員に当選。12年厚労大臣政務官に就任。13年7月の参院選で民主党から出馬も落選。現在、再び国政を目指して在野で勉強中。

薬局なんでも相談室

2014-09-10 00:09:06 | 医療と介護
デング熱疑いにはどの解熱鎮痛薬を薦めるべき?
日経DI ONLINE 2014年9月4日
【質問】
8月末からニュースになっているデング熱について、来局した患者や家族から質問を受けます。デング熱の治療にはどのような薬が使われるのか、また患者にアドバイスすべきポイントを教えてください。(東京都、50代女性)

【回答】
デング熱の疑いがあればアスピリンは禁忌


回答者 ◎ 笠原 英城(日本医科大学武蔵小杉病院薬剤部)
________________________________________
 デング熱は、デングウイルスを持った蚊に刺された後、2~15日(多くは2~7日)の潜伏期を経て発症します。38~40℃程度の熱が5~7日間持続し、頭痛、関節痛、筋肉痛、発疹を伴いますが、軽症で済む場合がほとんどです。マラリアのように重症化して致命的な経過をたどることはまずありませんが、まれにデング出血熱、デングショック症候群という重症な疾患になる場合があり、死亡率は1%以下であると推測されています。

 デング熱に対する特別な治療薬や予防薬はなく、通常であれば対症療法としてアセトアミノフェンの内服と輸液の投与が推奨されています。また、アスピリンなどサリチル酸系の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、出血傾向やアシドーシスを助長するため、禁忌としている論文があります。

 従って、もし薬局で解熱鎮痛用に一般用医薬品(OTC)を販売する際は、安全性の観点から基本的にアセトアミノフェンを薦めるのが正しいといえるでしょう。また、アスピリンを含有する感冒薬を飲むのは避けるようアドバイスすることも重要です。

蚊に刺されないことが唯一の予防法

 デング熱の予防方法は化学的には一切なく、蚊に刺されないことが唯一の予防法です。

 屋外では、(1)長袖・長ズボンを着用し、シャツはズボンに入れ裾を縛る、(2)防虫スプレーをこまめにつける(2時間ごと)、(3)蚊は黒いものに集まるため、明るい色の服を着る――などに留意することが大切です。蚊がいるところで車の窓を安易に開けて風を入れると、蚊の侵入を助長するので注意が必要です。

 屋内でも、風呂場、洗面所の物入、壁掛けの絵や時計の裏、垂れ下がったシーツの裏やソファの下、窓のカーテンなどに蚊が生息していることがあります。また、蚊帳を過信しないことも大切です。というのは、蚊帳の中で蚊を飼っていることになりかねないためです。

 デング熱は東南アジアの病気というイメージがあるせいか、森や林、ジャングル、田舎で感染すると誤解されていることがありますが、デングウイルスを媒介する蚊はヒトの住環境で生息しており、都市部で流行します。

 そして、デングウイルスを媒介するネッタイシマカとヒトスジシマカは、東北地方以南に生息し、夏季には活発に活動していることが明らかになっています。最近の日本は亜熱帯地域のような気候ですから、今回のような事態は半ば予想されていたともいえます。

 実は、日本では1940年代に神戸・大阪・広島・呉・佐世保・長崎などで約20万人に上る温帯地域最大のデング熱流行が発生しています。当時は衛生状態や住宅事情も悪く、広まりやすい条件が整っていましたが、今回はすぐに収束していくかどうか、注意しておかなければなりません。

 通常の感染症は、一度かかると免疫を獲得して次回以降、感染しづらくなりますが、デング熱は免疫があると逆に重症化しやすくなることが知られています。

 なお、デング熱と同様に、蚊に刺されることで感染する病気にマラリアがあります。現在、輸入マラリア(海外で感染した人が日本で発症するマラリア)は年間100人程度報告されています。マラリアは全世界では毎年100万人以上の死亡者が報告されており、感染する可能性のある国は100カ国以上に上ります。これらの国を訪れる際には、くれぐれも蚊に刺されないように注意しましょう。