楽しそうなアベック

　最近はアベックとう単語を使うのだろうか。カップルというのかな。まあいい。このあいだ、ほほえましいアベックを見た。
　車で街を走っていると、緑色のカーデガンを着て、髪を後ろで一つ結びにしている女の子と、ブルーのカーデガンのような物を着た、彼女より二十センチ以上は背の高い彼氏の二人連れを見かけた。
　彼女の方の服装や髪型、顔の輪郭が、恥ずかしながら私好みであったので、追い抜きざまによく見てみた。
　かわいい！　切れ長の目だが睫毛が長く、丸顔の美人だ。いいなあ。うらやましいなあ。そう思いながらも、男の方も見た。彼氏はどちらかというとさっぱりしたタイプで、くやしいが、まあまあ、ＯＫだ。楽しそうに話しながら歩いている。
　天気も散歩日和で、最高だろうな。こんな日に彼女と一緒に歩くのは。
　とおりがかりのおじさん、素直に公平に評価して、さわやかなお似合いのカップルであると言わざるを得ない。年齢も、二十代の半ばぐらいのよい歳の二人だ。このまま何事もなくいくと、結婚ということになるのかな、そういう予感をさせるような雰囲気だった。
　一度通り過ぎて、仕事をすませつつ市内を走っていると、しばらく後でかなり離れた場所でまたその二人を見つけた。前に見かけたところから二キロぐらいの場所だ。市内にある二つの川の内、一つにかかっている大橋のたもと近くである。
　おじさんは、また見つけたアベックの新しいところに気づいた。おっ、手をつないでいる。きゃっ。
　ああ、うらやましいな。先ほどは人通りが少し多いところであったが、そこはやや通行量の少ない場所であった。人気のすくないところでやっと手をつなぐ二人、・・・よいよい、そういうデリカシーのあるアベックがおじさんは好きだ。最近の辺りかまわずいちゃいちゃしているガキンチョカップルは許せないが。
　よしよし、君たちはよろしい。おじさん、街で見かけただけのアカの他人だが、君たちは許可する。

　幸せになれ。