⑨換気設備計画:平成15年の建築基準法の改正で、住宅
には機械換気設備の導入が義務付けられました。しかし、自立循環型住宅の基準となる2000年頃の住宅には、機械換気設備が義務付けられていません
。そこで、機械換気設備のエネルギー削減基準は(1)第1種ダクト式換気方式となります。
第1種ダクト式換気方式とは、いわゆる前回の記事で説明したセントラル式空調システムと同じか親戚みたいな関係にあります。つまり、小屋裏などに大元となる換気扇を仕込んで、ダクトで各室を給排気するシステムです。
ですから、デメリットも似ています。換気扇本体からダクトで各室につながっているので、単純にダクトの長い短いの差があります。本体から近い部屋は換気量が多く
なり、遠い部屋は換気量が少なく
なります。よって、ダクトが曲がっている回数や実際の風量調整で換気量を均一にする事が出来るのですが、そもそも抵抗(負荷)を作りながら換気量調整をしているので、その時点で電気代
が増えている事と、使用する内に、ダクト内に埃やカビなどがたまり、風量のバランス
が崩れます。その上、イニシャルコストが高く
、機器の交換も難しい
のでメリットを感じる事ができません
。
一応メリットは、熱交換する事で冷暖房負荷が抑える事が出来るのですが、新潟市ではどんなに寒くても-2℃くらいです。室温を20℃とすればその温度差は22℃になりますが、この位の温度差であれば、実はあまり大きなメリットとは言えません
。
上記の様な理由から私の感想としては、そもそもこのシステム自体はあまり普及していないと思うので、ちょっと強引な削減目標じゃないかなとは思います。
ですが、とりあえずレベル0~3まで区分されており、換気エネルギーの削減率が0%~60%まで設定されています。
(2)高効率機器の導入:今までの換気扇はACモーター(交流電源)を使用していましたが、近年DCモーター(直流電源)を採用した換気扇が出始めました。モーターの違いで電気代が半分近く安くなります。まだ、機種的に出揃っていないので、希望する機種が出るまで待ちたいと思います。
(3)ハイブリッド換気システム:某大手ハウスメーカーが採用する換気システムが一番有名でしょうか。要は、温度差の大きい冬期について、機械換気よりも温度差換気をメインに換気を行い、ランニングコストを抑える仕組みです。
(4)換気方式の簡素化:排気だけダクト方式で行い、給気は各室に自然給気口を設ける方法です。確かに簡素化していますが、ダクトを用いる条件になっているので、排気量の確保・調整はあまり解決していません。
ということで、実はおそらく日本で一番普及していると思われる第3種の個別換気方式(トイレや洗面所に換気扇を設け、居室に自然給気口を設ける方式)は手法の中に含まれていません。間違いなく、一番コスト
がかからない方式だと思うんですけど、なぜでしょう?私にもわかりません
。
ついでに言うと、当事務所の換気方式は今までのどれにも当てはまりません。当事務所では、第1種の個別換気方式を採用しています。つまり、給気も排気も個別のパイプファンを必要な場所に設けて、24時間連続運転します。一番のメリットは、やっぱり安い事
。それと交換
が簡単な事。長く住み続けられる住宅とは、設備の交換が簡単な住宅でもあると考えています。
もう一つのメリットは、給気も排気も機械で積極的に行うので、室内で空気のよどむ場所が少なくなります。つまり、正しく換気が行われているという事です。排気だけを機械にすると、どうしても換気経路が単純になり、換気が促進されにくい
場所が多くなってしまいます。
但し、だからと言って常にこの方法を行ってくださいと言うつもりもありません。季節風
の風向き等で給気量が増えすぎる時は、一時的に且つ部分的に給気の運転を止めて
構いませんし、中間期であれば、窓を大きく開けていただきたいです。
但し、一時的に給気の運転を止める事があっても、排気は止めないでください。最低限の換気経路の確保は必要ですし、場合によっては、臭いの逆流など直接的な不具合
も考えられます。
それを踏まえると、排気用の換気扇にはシャッター付きとシャッターなしがありますが、止めない事を前提とすれば、シャッターは不要になります。実は、シャッターありなしでは、空気の抵抗によるファンの負荷に差が生じて、電気代は倍以上変わります。こういった所での省エネ
も大切です。
つづく。
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