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加地尚武の佐倉新町電気街

「福音の少年 Good News Boy」シリーズ(徳間書店 徳間デュアル文庫)著者による電脳生活と意見。

木陰で読書するには向かない本。ベスター「ゴーレム 100」

2011年09月12日 07時03分07秒 | 本のこと。



四国はうだるように暑かった。
あんまり暑いので、自転車に飛び乗って数キロ先にある公園まで走っていて、木陰のベンチに座る。涼しいのは、涼しい。暑さ寒さも観測者しだい。

分厚いし、サンリオSF文庫の「コンピュータ・コネクション」がいまいち萌えなかったのと、翻訳されたことを忘れていたので、今まで読んでいなかったアルフレッド・ベスターの「ゴーレム 100」(100は100乗の記号)を読み終えた。

・・・すげえ。

この本ほど「読書感想文」に向かない本は無い。ただ、すごい。
めちゃくちゃなようで非常にクールに計算された小説。ド・サドの「悪徳の栄え」や「ソドム150日」を連想するような淫猥なシーンがあるが、「骨格」というものがほとんどないサドの小説とは比較にならない。いや、当たり前か。

実験作のようでいて、スラディックやディレーニィやバラードよりも、ずっと古典的な「SF」の楽しさも持ち合わせている。

なにより驚きなのは、こんなすさまじい小説を「還暦」を過ぎて書いてしまう故ベスター様である。

暑いが充実した終末もとい週末になった。


ゴーレム 100 (未来の文学)
クリエーター情報なし
国書刊行会

いつか、こんな作品をものにできれば。吉村昭 「破船」

2010年07月27日 18時50分15秒 | 本のこと。
破船 (新潮文庫)
吉村 昭
新潮社


故吉村昭氏の代表的な長編小説は、ほとんどが「記録文学」「ドキュメンタリー小説」という呼ばれ方をする。
これがどうも違和感があるのだ。

いや、作品はどれも文句なくすばらしい。作家の端くれの端くれとしては、このような小説を書けるのだったら悪魔に魂を売り渡してもいいと思えることが多いのだが、「記録文学」とひとくくりにされているようで、どうも変な感じがする。

ご本人も記録文学としての自負を持っておられただろうし、それの自負があるからこそ、当時の商人の日記から事件のあった日の天気を調べるといった徹底したこだわりをもって作品に取り組んでおられたのだろう。

だが、私は、吉村氏の本質、作家の根っこにあるものは、「少女架刑」だと思うのだ。
貧しいが故に病院に売られた少女の肉体が、解剖され、最期には骨になるという課程をとうの死体である少女の視点から描いた小説、である。

私は吉村氏には過去に起きた出来事そのものが「解体されていく少女の肉体」のように見えていたのではないか、と思う。
戦艦武蔵もヒグマに襲われた村も、零式戦闘機も、長英も、みな、吉村氏のメスで淡々と解体されていく、そんな感じを抱いてしまう。

だから、吉村氏の作品のどのような主題でも、なにがしか強いロマンチシズムを感じていた。

上に挙げたのは吉村氏が「記録文学」の書き手として著名になってから発表された「異色」の小説である。
内容を全く知らずに読んでいただいた方がおもしろいので、詳しくは触れないが、これもまたすばらしく昇華された「少女架刑」だな、と思った。普段の長編とくらべて異色ではあるが、紅茶と緑茶のように、単にちょっとした課程が違うだけなのだ。

ちょっと斜めに構えた感じの紹介文だろうか。
そうとれたら、この偉大な作品に謝らなければならない。
この小説はまぎれもなく「傑作」だ。

読み終えた後、しばらく動くことができなかった。


夏休みを利用して、気力と体力を整えてから、この小説に挑んでみてほしい。

【訃報】ジェイムズ・P・ホーガン氏死去。

2010年07月13日 20時44分38秒 | 本のこと。
まだまだ死ぬようなお年ではないと思っていたら訃報に接した。ジェイムズ・P・ホーガン氏。
直球勝負というか、とにかく発想がストレートなハードSFを書く人だったように思う。

ホーガン氏といえば多くの作品があるけど、なんといってもこれ。
ハードSFにして、本格推理小説。

どのくらい「本格」かというと、全盛期のエラリー・クイーンの作品ほど本格。

冷静になって考えると、主に天文学的な、物理学的なアラもあるんだけど、読後感のさわやかさが細かなケチを洗い流してしまう。
十年に一度くらいの傑作。

とにかくご冥福をお祈りします。


星を継ぐもの (創元SF文庫)
ジェイムズ・P・ホーガン
東京創元社

本好きの女神。「闇の聖母」

2010年06月06日 10時57分58秒 | 本のこと。
わたしもまた、メリルばあちゃんとおなじようにフリッツ・ライバーを愛している。
題名を思い出したので挙げようと思ったら絶版だった。
下は古本へのリンクなので気が引けるがしょうがない。

この傑作幻想小説が絶版だなんて!

闇の聖母 (ハヤカワ文庫 SF 361)
フリッツ・ライバー
早川書房

宇宙ステーションから帰る。

2010年06月02日 06時40分02秒 | 本のこと。
野口さん、2日に帰還=半年滞在、ソユーズ宇宙船で(時事通信) - goo ニュース

長期滞在クルーの野口さんは、いまごろ(午前6時)大気圏再突入に向けて飛んでいるころだ。

じつは、偶然の一致というかシンクロニシティーというか、今朝、わたしの短編、それも宇宙ステーションでの事件をあつかった小説が載ったアンソロジーの献本を開封したところなのである。
内容に触れるのもなんだけど、主人公は野口さんと同じようにソユーズに乗ってカザフスタンに降りてくる。

小説の結末は、その、あの、なんだけど、現実の野口さんは無事に帰還していただきたい。せつに祈っております。

「現代の小説 2010―短編ベストコレクション」

2010年05月30日 17時49分11秒 | 本のこと。
現代の小説 2010―短篇ベストコレクション (徳間文庫 に)
日本文藝家協会,赤川 次郎
徳間書店


うえのアンソロジーにわたしの作品「彼方から」(初出SFJapan誌)が選ばれました。

先日、二人目の日本人女性宇宙飛行士の山崎直子さんが無事帰還されましたが、この作品は、山崎さんと同じように短期滞在クルーとして国際的な宇宙ステーションを訪れた日本人女性宇宙飛行士の体験した出来事が題材になっています。べつに狙っていたわけではなく、たんにそういう話を思いついただけなんですが、発行時期と重なって、不思議な気持ちがしました。

6月4日発売です。書店で見かけたらよろしくです。

歴史小説の向かない自分。

2010年05月28日 21時56分47秒 | 本のこと。
正直にいうと、歴史小説を書こうとして、挫折したのだ。
いや、なんがだか、書いている。それがどんどんいわゆる「歴史小説」じゃなくなっていくのだ。うまく言えないな。

昔と比べて、いまは良質の資料が比較的簡単に手に入るし、歴史・時代小説は書きごろ、と思う。だけど、私の場合、書いていると宇宙方面や異次元方面から、いろいろ侵入してくる。

とにかく今書いているふしぎなものを書き上げてみよう。どんな風になるんだろう。

あ、下に挙げた本は、とても気に入った本。歴史好きな人で知らない人はいないだろうけど、一応挙げてみた。

信長の戦争 『信長公記』に見る戦国軍事学 (講談社学術文庫)
藤本 正行
講談社

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【SF Japan 2010 Sping】ひさしぶりに短編、書きました。

2010年03月13日 00時24分19秒 | 本のこと。
SF Japan 2010SPRING
SFJapan編集部
徳間書店

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3月11日発売のSF Japan 2010SPRINGに拙作が掲載されております。
このところ寒さがぶり返したからじゃありませんが、「冬のアリ」という題名の、寒冷期を取り上げた五十枚ほどの短編です。

書き上げたのは、じつは去年の夏。
高松駅のとなりにある寒々しいガラス張りの建物の中にあるベンチで、スピードメタルを聴きながら書いてました(<どんな執筆環境やねん)。

個人的には、とても思い入れのあるお話です。
本屋でみかけたら手にとってみてくださると、うれしい。

SF-Japan 2009 SPRING発売!

2009年03月11日 21時44分46秒 | 本のこと。
いよいよ発売されました。五十枚程度ですが、短篇を書いています。
よろしかったら、どうぞ。
しかし、今号は本当に豪華ですね(私以外)

SF Japan 2009SPRING (2009)

徳間書店

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【福音の少年】サイン入り最終巻プレゼント当選者発表

2008年08月16日 10時40分47秒 | 本のこと。
どもども、連日暑い日が続きますねえ。

ところで、福音の少年の最終巻「闇と光を統べるもの」のサイン入り文庫本の当選者が決まりましたので、発表いたします。すでにメールをお送りしてますが、お送り先とお名前をお知らせください。抽選はいつものようにプログラムで厳正に行いました。当たらなかったひと、ごめんさない。
また応募メールに感想やねぎらいの言葉を書いてくださった方々、ありがとうございます。ここでお礼申し上げます。

当選者(メール受信順)
詩神さん
nahsanさん
綾瀬さん
寅吉さん
TETSUさん


あと、9月上旬から、「福音の少年」を愛読いただいている読者のみなさん全員に感謝の意味を込めて、ささやかな贈り物をできたら、と思っています。

詳しくは「福音の少年」公式サイトをご覧ください。

では。

【福音の少年】最終巻「闇と光を統べるもの」サイン本プレゼント!

2008年08月10日 13時47分48秒 | 本のこと。
お待たせしました!

みさなんのおかげで、とうとう最終巻までこぎ着けることができました。ほんとうに感謝しています。

さて、恒例の、「福音の少年シリーズ」としてはこれが最後の、サイン付き新刊本のプレゼントです。例によって計五冊。

ご希望のひとは、alchemy1104@gmail.com へ、件名に「本希望」と入れて送ってください。

(1)申し込みが五名を超える場合は抽選とさせていただきます。
(2)申し込みはハンドル名・ニックネームでかまいません。
   件名とニックネームだけのシンプルなメールでぜんぜん結構です。
   ただ返信用アドレスは間違えないでね。
(3)お送りできる場合、こちらからメールをさしあげますので、そのとき住所氏名を教えてくださって結構です。
(4)送料は当方が負担します(徳間書店さんに感謝)
(5)言っておきますが、わたしはサインがヘタです。
(6)転売できないようにあなたの名前を書いておきます(けけ)
(7)当選者のハンドル・ニックネームは公表します(五名に満たなくても)。
(8)いままで当たったことのない方のみ、ご応募ください。

プライバシーの考え方:送り先の住所氏名は送付後直ちに消去します。
(発送者は徳間書店編集部となります)

【申し込み締め切り】2008年8月15日(金)の夜11:00までに届いたメールまで。

 ふるってご応募ください。

 いやー。思いつきで始めた読者プレゼントですが、なかなか楽しいものでした。なので、福音の少年に限らず、今後、本を出すことがあったら、その都度やりたいと思っています(いつになるかわかりませんが)。

 それではみなさん、もういちど、ほんとうにありがとうございました。
 では。

【福音の少年】中臣さんからイラストをいただきました。

2008年08月08日 23時21分48秒 | 本のこと。
どもども。福音の少年公式にはすでに載せてるんですが、中臣さんからイラストをいただきました。表紙もいいですが、これもなにか胸にくるもんがあります。

あ、読者プレゼント、忘れてるわけじゃありません。肝心のブツが届いていないのです(汗)。あ、だから、わたし、自分の最新刊見たことありません。明日広島に行くので本屋で見てみよう。

では。

【福音の少年】最終巻、アマゾンの画像を張ってみる。

2008年08月05日 20時03分02秒 | 本のこと。
福音の少年 闇と光を統べるもの
加地 尚武
徳間書店

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めずらしくアマゾンに画像付きコーナーが早くから用意されたみたいのなので、張ってみる。中臣さんの表紙を見てると、なにかこう胸にくるものがあって、思わずしんみりしてしまう。

さようなら、みんな。登場人物たち。


あ、愛読者プレゼントの応募はまだです。もうしばらくお待ちください。

ギャグマンガの巨星墜つ。赤塚不二夫先生を悼む。

2008年08月03日 01時12分40秒 | 本のこと。
バカボン・おそ松くん…「ギャグの神様」赤塚不二夫さん死去(読売新聞) - goo ニュース

赤塚不二夫さんは天才だったのだ。全盛期の「おそ松くん」のおもしろさといったら、もうこの世のものとは思えないほどだったのだ。小学生だったワシは、少年サンデーをむさぼるように読んだのだ。

いまでも思い出すのは週刊誌に初めて「50ページ」という大長編ギャグマンガを掲載されたこと。あれはほんとに面白かった。

先生はどんどん時代を突き抜けていって、70年代、ワシの記憶の中に鮮明に残る雑誌「まんがNo.1」を創刊されたのだ。
この雑誌に連載されていた「クソばばあ」という漫画の過激さ、おかしさといっったら!
強烈な母親を憎みつつ依存さぜるをえない中年独身男と、クソばばあである母とのかけあい。少年誌ではとても無理なギャグに笑わせてもらったのだ。

長谷邦夫先生とともに、赤塚先生はワシのアイドルであったのだ。

まだまだお元気で、いてほしかったのだ。
これでよくないのだ。
ご冥福をお祈りするのだ。

『音少年 魔法使之徒』出版! 女朋友身高只有15Cm

2008年06月15日 08時37分26秒 | 本のこと。
台湾の東立出版公司というところから「福音の少年 魔法使いの弟子」が中国語(繁体字)に翻訳のうえ出版された。

朝からなんとか読もうとしているのだが、書いた本人にも何が書いてあるのかわからない(笑)。装丁がほとんどデュアル文庫と同じなので、並べてみてなんとか意味をつかんでみる。

ああ、なるほど。文中の固有名詞には訳注がついていて、丁寧な翻訳じゃないだろうかと思う。


台北の人々はこの本をどう読むのだろうか、そう思うと感慨深い。