七曜工房みかん島

18年間の大三島暮らしに区切りをつけ、
滋賀大津湖西で、新たに木のクラフトと笛の工房
七曜工房を楽しみます

「一人で建てる木組みの家」~⑲階段他

2008年06月08日 | 『一人で建てる木組みの家』
1  階段は難しい!

 部屋のスペースを広く使うためと動線の関係上、
ロフトへ上る階段は直角に折れ曲がったカネ折れ階段とした。
また構造は、階段下のスペースを有効に収納として使えるように、
裏板や側板のついた箱階段とした。

最近よく住宅雑誌等で紹介されている裏板や
側版のないはしごのような階段(力桁階段)は、
軽快でオシャレなのだが採用しなかった。

 箱階段は直線ならそれ程難しくなかったと思うが、
直角曲がりはとても難しい。
図面を描こうとして、頭の中で立体をイメージするのだが、
なかなかイメージできない。
側板を柱に固定して踏板をとり付けたら、
裏板をうちつけて完了というぐらいのものなのに、
側板の図が描けない。
やはり、手と頭で考える方が早いと現場であれこれ考えるのだが、
どうしても詳細がつかめない。

結局、ベニヤ板で型板を作って、現場の柱へ墨付けしていくと、
ようやく立体がつかめてきた。
立体が頭の中で描ければあとは早いもの。
側板の墨付けから加工へと一気に進む。
木組みの仕口や家具の設計をする時、
平面図、正面図、側面図以外に姿図を描くようにしている。
姿図なら立体感そのものだ。

階段寸法は、踏幅245㎜、蹴上げ187.5㎜、13段である。
13段とは13階段を思わせて、あまり気持ちの良い段数ではないが、
住宅の階段はどうしてもこの段数になってしまうものだと、
知人の建築士が言っていた。


側板の加工


側板の取り合い部分


踏板の取り付け


踏板の取り付け


2 階段の加工、取付け

 側板を取付けるには、柱が不足するので,1間の中間に半柱を入れた。
側板は厚さ40㎜、幅315㎜のベイマツ、踊場の上下各2枚ずつ、計4枚。
 側板の加工は、柱への取付け部分の切り欠きがとても大きい。
丸ノコで何本も切れ目を入れて、ノミで切り欠いていく。
済めば裏返して次は踏板を入れ込む切り欠きを同じ様に作る。
丸1日近くかかって、側板1枚の加工が終わる。

 踏板は厚さ30㎜のヒノキ。
後ろ側の木端面は階段勾配に合せて、鋭角に削る。
削るのは大変だから、丸ノコ盤で切ろうとするが、
45°以下の鋭角には切れないので、
45°に切っておいてあとで残る部分を手ガンナで削る。
 加工が済めば、4枚の側板を柱へ釘留めする。
側板と側板の取り合い部分の相欠きが,
すき間なくうまく収まるかどうか心配したが、
まあまあの出来栄えだ。
踏板をうしろから差し込んで釘留めする。
最後の裏板は、
内壁用の幅120㎜、厚さ15㎜の相欠きしたスギ板を釘止めして、完了。
 苦労した階段が出来上ると、嬉しくて何度も上ったり下りたりした。

踏板を入れ込む切り欠きが少し大きかったようで、
何枚かの踏板がパタンパタンと音がする。
小さなクサビを作って、切り欠きと板のすき間へ打ち込むと
パタンパタンという音は消えて、
あの階段特有のギシギシという音に変わった。


側板と踏板


側板と踏板


側板と踏板


踊り場


階段出来上り


3 階段を上ると貫だった。

 出来上った階段を上ると、ロフトへの進入を妨げるように、
小屋貫が横一文字に通っているので、ロフトへ入るには、
これをくぐらなければならない。

 妻からは、大不評である。
 
  茶室のにじり口だと思えば良いのだとか、
  めったにロフトへ上ることはないのだから、とか,
  慣れれば気にならなくなるものだ、とか、
  妻を説得する。

 しかし、「できるものなら、切り取ってしまいたい」と、
  一番気にしている本人が言っても、
   説得力は全くないのだが。
 
 小屋束を組む時に、途中で気が変わって取り付けることにした貫だが、
小屋組がほどけて崩れてしまいそうで、
  今もって取ってしまうことができない。 
 「今後どのように対処するのか」 解決を迫る妻へは、
 はっきりした返事はしないことにしている。



階段を上ると貫だった。


4 柵はなかなかなものだ

 転落防止のための柵を設ける。
子供の転落やすり抜けを防ぐことも考えて、
高さ770㎜、立子のあき寸法150㎜とした。
 組み方は、地覆を切り欠いて、床板の端に釘止めし、
笠木は蟻枘で親柱へ固定。
その後、立子は、地覆側へは枘で、
笠木側へは枘穴をあけた板を笠木へ釘止めして固定。
 
柵が出来上ると、室内空間に立体感や動きが出て、
木組みの家が一層強調される。
なかなかのものだ。


ロフト手摺

5 キャットウォーク

 東妻面の2階部分にある3つの小窓は、どうして開け閉めするのか。
当初からの悩みの種だった。
はしごをかける。下からヒモを引っぱれば開閉できる仕掛けを作る。

どちらも却下して、結局は歩み板を渡すことにした。
そうすれば、小窓の開閉以外に小屋空間の保守管理用にも使えるから。
気軽に渡れるように、幅60㎝程の広い物を考えたが、
幅が広いと下から見上げた時に不細工なので、狭くして30㎝とした。
これなら足場板と同じだ。
ロフトから窓に向かって1本、窓の下に1本、計2本をT字形に置いた。
床板を加工して、取り付けた板はまさにキャットウォーク。
猫のようにソロソロと渡る。少し緊張するが、子供の気分になれる。
 
 しかし、やはり妻には不評だった。
「なぜ、窓の開閉器を作らなかったのか。こんな板は下から見て不細工だし、ジャマだ」
「キャットウォークなんか年をとれば渡れなくなる」と。

妻は、今もって一度もキャットウォークウォークを歩いたことがない。
窓の開閉作業は、私が一人占めさせてもらえるようだ。


キャットウォーク

 工事期間2006年12月~2007年1月

 付記 妻:ひろより
 
 骨組みではなく、家らしくなってくると、
 妻;ひろは、ひんぱんに様子を見に行った。

 そして、「妻の家作り実況版」を、アップするようになった。
 夫が、「あっ~、とっておきの秘蔵写真を、先に使うなんて」と 
 落胆するのもかまわず、
 家作りの見せ場を写し、ドンドン先取り&横取りした。
 
  「妻の家作り実況版」2007年1月23日も、あわせてをごらんください。
 
 そして、現在は
 ロフトに上るたびに、夫を問い詰める。
 1間の貫が、ロフトを区切るように、4,5本もあるのである。
 「この貫、1本だけでも切ったらアカンの」と。
 
 が、今、冬物の洗濯をしています。
 大きな炬燵布団や敷物、そして毛布を、
 カラカラになるまで、乾かすのに、
 この4,5本もの貫が、
 意外にも、”立派な物干し竿”として 
 すご~く便利で、フル活躍している。

 ”災い転じて福と成す”
 

 
  一人で建てる木組みの家の 
家作り の様子のこれまでは、こちらをごらんください。
 


 『一人で建てる木組みの家』の記事が、
読売新聞愛媛版 6月6日付朝刊に掲載されてます。