七曜工房みかん島

18年間の大三島暮らしに区切りをつけ、
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『一人で建てる木組みの家』~24 内壁その4〈施工2〉

2009年01月05日 | 『一人で建てる木組みの家』
2 施工の実際

1)プラスター塗り

ラスボードの上へ石こうプラスターを下地として塗る。
昔中学校の時間に、針金の芯に 水で溶いた石こうをペタペタと塗り付けて
『スポーツをする人』 を作ったことがあるが、
プラスターというのは、あの石こうベース素材にした壁材だ。

あれを思い出して 水で練ったらすぐに固まり始めるか と思ったが、
遅延剤が入っているらしく、あわてることはない。

プラスターと砂の配合比は、袋書きによれば、
プラスター1;砂1.5となっていたが、
少し塗りづらかったので、1;1に変えてみたら 滑らかに塗れた。

塗り厚さは5㎜としたが、厚み通りに塗るのはかなり難しい。
砂の粒径や配合比や水分量によって 
塗れる厚みは だいたい決まってくるようだ。

下の方から上の方へ塗っていった。
本には、上からとも下からともどちらも書いてあるが、
下の方からの方が、やり易かった。

ラスボードが平坦なので、コテだけで充分平面に塗れるだろうと思っていたが、
細かい凸凹が出来る。
作った定規棒〈と言っても板切れだが〉で均すと、かなり平面性が出た。
ただし、動き具合を見図らないと、
定規棒でこすった時に ゴソッと塗った部分がはげる時があるので、
要注意。

左官材では、このプラスターの石こうとしっくい等の石灰がよく使われるが、
どちらも白い粉で似た様なものと思っていたが、違った。

石灰は、セメントモルタルに混ぜて 塗り易くしたりするが、
石こうは セメントと相性が悪いようで、
セメントモルタルが混ざると 硬化しないようだ。
これも要注意。


石こうプラスター塗り1
(このコーナーは、薪ストーブを置くので、耐火壁にしている)


石こうプラスター塗り2


2)しっくい塗り

調湿作用や消臭効果があると 昔からのしっくいが見直され、
新参者では珪藻土がもてはやされている。

しっくいは、消石灰にスサや糊を混ぜ込んだもので、日本特有のものらしい。
水を加えて練るだけで、すぐに塗れるタイプのものを材料店で買ってくる。
しっくいは古家のリフォームの時に初めて使ったことがある。
この時、硬化が早くてコテ跡を消そうとコテを返しても消せずに、
仕上げ面に細かいコテ跡が残った。

今度は下地のプラスター面へ充分に水を打って光る程に湿らせ、
しっくいも液状ぐらいの柔らかさで塗った。
これは少しやりすぎたか、下地が透けて、下地の凸凹をそまま拾ってしまった。
しかし、コテの作業性はとてもなめらかだった。
ただこの湿らせ加減としっくいの硬さがやる度に一定せず、
うまく塗れたかと思うと、次はダメだったりして仕上りに差が出てしまう。
水加減がとても難しい。

ただ言えるのは、今回は、1回塗りで仕上げようとしたが、
もう1回塗って、二度塗りとすれば、
また1回をできるだけ薄く塗れば、もっとキレイに仕上がったと思われる。

このしっくい塗り作業は、7月に行った。
妻壁の三角部分を塗る時は、
下の木壁や床を養生するために、ブルーシートを壁から垂らした。
ちょっとした足場板も取り付けた。

7月も半ばを過ぎると、真夏の気候で気温は30°近くあった。
熱気は天井部分に溜まる。
だが通風の窓を取り付けてあるので、風が吹けば熱気は外へ出て行く。
しかし、風が吹くと養生のシートが大きくはためいてはずれてしまう。
何度つけ直してもはずれるので、窓を閉めることにした。
すると熱気は外へ逃げないで溜まる一方。
汗は身体中からふき出る。10分ごとに下へおりてきて休憩をする。
温度計を持ってきて測れば、ロフトは40℃あった。
この時、妻側窓の通風効果を充分に体感確認することができた。

期待のしっくい壁は、満点ではないが、まあまあの出来上がりだろう。
壁へ目を近づけなければ、白の鮮やかなキレイな壁だ。

その後 大山祇神社や蔵のある民家の前を通る時、
ツルツルピカピカのしっくい壁が目に付き、
「やはりウチのとは大いに違うなあ」 とは思うのであるが・・・。



妻壁の養生

3)石灰モルタル塗り
 
しっくいに比べて,石灰モルタルについての詳細が,よくわからなかったので、
自分で試験練りをすることにした。
石灰モルタル用の石灰というのも売ってなさそうなので、
ホームセンターの肥料コーナーに置いてある土壌中和用の消石灰を買ってきた。

果たして、これで出来るのか?

骨材は、3㎜目以下の砂を使う。
石灰と砂の比率を変えて何種類か作り、石こうプラスターを塗って、
乾かしておいたラスボードへ塗る。

どれも付着性は良さそうだ。2~3日で硬化して乾いた。
しかし表面をこすると、白い粉が指につく。
1週間経っても白い粉はやはり指につく。
2~3日おきに指でこすって確かめる。
どの配合も同様。

その後忘れてしまっていて、
1か月程経った時に思い出して、指でこすると、
今度はほとんど指につかなかった。
硬さもかなり硬くなっていた。
これなら、使える。

試験練り後3か月程して、実際に壁に塗ることに。
配合比率は、石灰1:砂1。
適度な練り加減で伸びもよく、付着性も良い。
コテさばきがとてもなめらかで、仕上げのコテもやり易くて、
うまくコテ跡を消すことができた。
他の左官材と比べて見て、この石灰モルタルが施工性も仕上りも最高だった。

硬化性については、
塗ってから3ヶ月すると 完全に硬化して、白い粉がつかなくなった。
石灰岩から作る石灰は、水で練ると空気中の炭酸ガスと反応して硬化し、
いずれ元の石灰岩へ戻る。気硬性と言うそうだ。
水と反応して固まるセメントの水硬性とは、固まる仕組みがちがうようだ。

昔、小学校の体育倉庫の隅で、白線引き用の紙袋入りの消石灰が
セメントのようにカチカチに固まっていたのを思い出す。

本によれば、この気硬性は、1年経てば90%が完了し、
100%硬化が完了して、元の石灰岩に戻るには、100年かかるらしい。


石灰モルタル試験練り
石灰と砂の比率が違えてた5種の石灰モルタル


4)セメントモルタル塗り

セメントモルタルは、
石積みやブロック積みの目地や土間モルタルに使っているが、
壁面へ塗り広げるとなると、これまでとは違う。
やはり、これもセメントと砂の配合割合や水加減で 
施工性は大きく違ってくる。
施工性が良いと、概して仕上りも良い。

今回は、風呂場のタイル下地として、
セメントモルタルを3回ほど塗り重ねた。
何度も失敗したのは、コンクリートブロックの表面への一層目。
塗り終えたと思ったら、部分的に大きくはがれしまうのだ。
セメント量が少なかったのと、塗り厚が大きかったのが大きな原因だ
と思われるが、注意しながらやってもうまくいかないものだ。

快調に左官作業をしている写真を撮ってもらおうと
妻に来てもらったら、
写真を撮り終えたところで、大崩落が起きた。

塗った壁の3分の1程がはがれて落ちてしまった。


ア然とする妻

「風呂に入っている時に、タイル壁が崩れてくるのではないか」
と心配する妻には、応えずに、

セメントを効かせたモルタルを持ってきて、
再びひたすら塗り続ける夫ではあったが・・・・・。



下地セメントモルタル塗り


5)白セメントモルタル塗り

白セメントでしっくい壁程の白さを出そうとすれば、
白セメントの量は、かなり多く必要だ。
普通セメントでは、セメント:砂は、1:3~1:2程だが、
白セメントなら1:1.5程になる。
しかし、これで練って塗ると伸びは悪く、早く乾きすぎ、
厚塗りになってコテ跡が消えなかった。
そこで、消石灰を白セメントの7割量を加えたら、
とても具合良く仕上がった。

セメントと石灰は、相性が良い。



6)タイル張り

タイルを張ろうとすれば、最初からタイルの大きさを考えて
タイルをできるだけ切らないで割り付けられるように、
壁や床地の下地の寸法を決めると、とてもキレイに仕上がる。

実際は、このことをあまり気にしなかったため、
特に風呂場は失敗が目立っている。
また風呂場は、下地のモルタル塗りの平坦性がよくないので、
タイルも凸凹と並び方が行儀悪い。

台所や洗面所の下地をケイカル板でやったところは、
とてもキレイに張れている。
タイルの仕上りは、下地さえ平坦性がとれていれば、
ボンド張りの場合は、素人がやってもとてもキレイに仕上がるものだ。
水糸を張って、十字の目地スぺーサーを使えば、
目地幅はキッチリと揃うようになっているところも、素人向きだ。

ただ、タイル切りは少し難しかった。
量が少ないため、タイルのカッターは購入せずに、〈結構高くつくので〉、
手元にあるガラス切りと喰い切り〈これは、新たに買った〉で、切ることにした。

使用したタイルは、壁用が陶器質で、床用が磁器質。
焼成温度のちがいで、陶器質は軟らかく、磁器質は硬い。
陶器質の方は、ガラス切りですじをつけたら、
板切れのかどに、すじのところをのせて、上から板切れをあてて、
押えた手に体重をかけるとコクッと、簡単に割れる。

磁器質の方は、1個のタイルが小さくて厚いこともあって、
陶器質のようにはいかず、喰い切りで少しずつ噛みとって整形した。

最後に一つ大事なことを言い忘れていた。
コンクリート面に水糸を張るにはどうするか?
誰かが、小さなコンクリート釘を打つのだと言っていたので、
試したがうまく行かない。

以前 現場で見た時には、千枚通しを突き差していたようだったので、
手元にある千枚通しを突き差したら先が曲がってしまった。
道具店やホームセンターで訪ねても、よくわからないと言う。
島外へ出た折りに、そこのホームセンターをのぞいてみたら、
ステンレス製の中通し千枚通しというのがあった。
コレだった。先が鋭利なので、正確に位置が落せる。
コレは、かなりのスグレモノだった。


タイル張り道具


タイルのカット カット面を砥石で磨く


タイルの接着剤塗り 
櫛の歯型のコテは普通の左官ゴテをグラインダーで加工したもの


台所のタイル張り ステンレス製千枚通しで水糸を張っている


風呂場タイル張り


7)杉板張り

杉板は、幅120㎜ 長さ2mのものを400枚程張った。
最初の方は、色々試しながら張ったので、柱との間のすき間が目立ったが、
次第に方法も定まり、慣れてくると、うまく収まるようになった。
杉板張りは、柱とのすき間をいかにゼロに近づけるかで、出来栄えが決まる。

板は、相欠きの機械加工した幅の一定のものを使う。
先ず壁の高さを測り、杉板が何枚要り、端数がいくら残るかを計算する。
この端数が1cm未満であれば、張り始めの板の幅を少し狭くして、
端数が最低でも3cm程になるように調整する。

板の張り始めは、下からでも上からでも良い。
1cm角ぐらいの細い棒2本を定規にして柱間の寸法をとり、板へ写す。
一枚ごとに寸法を測る。
柱は垂直ではないため、上下で数㎜の誤差が出るからだ。
厳密に見れば、板の両サイド線も、木端に直角ではない筈だが、
そこまでは気にせず、曲尺で直角をとれば良い。

次に寸法通りに電動丸ノコで切る。
この時、寸法より、0.5㎜とか1㎜を短めに切るということはせずに、
キッチリ寸法通りで切る。
そして次に仕上げカンナでこの木口を削る。
これで、結構キレイに収まる。

 付記:妻・ひろより

またしても、夫は、
「写真が撮れていない」
「しっくいを塗っているとこは?」
「養生テープを、張っているところは?」
妻が、”写真を捨ててしまった” と疑っている。

しっくい も 石灰モルタル も 白セメントモルタル も
下地セメントモルタル も 下地石こうプラスター も
全く、区別がつかず、何も解からない妻である。

夫は、なにをどう撮ってほしかったのか?
『一人で建てる木組みの家』の左官工事現場は、
ブルーシートや新聞紙で、覆われていて、
夫は、セメントやしっくいまみれの泥だらけの汗だらけで
絵になる、格好いい 場面など、なかったんだけれど。




『一人で建てる木組みの家』 21 22 23 24 内壁その1~その4 まで

作業期間 2007年4月下旬~8月下旬

所要日数 左官の所要日数〈風呂場は除く〉 10日間
       杉板張りの所要日数       18日間




 『一人で建てる木組みの家』の 家作り の様子 のこれまでは
    こちらをごらんください。


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2 コメント

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Unknown (??)
2016-06-11 02:33:50
石灰モルタルを作り方で石灰1:砂1というのはグラムの比率ですか?
また水は、どれくらいの比率で加えたらいいですか?
返信する
石灰モルタル (七曜工房)
2016-09-15 12:44:15
容積比です。
水は塗りやすい硬さで、セメントモルタルぐらいです。
返信する

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