「限定正社員」制度とは 議論本格化、雇用ルールなど課題山積
産経新聞 10月29日(火)8時0分配信
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の成長戦略の一つである「限定正社員」制度をめぐる議論が本格化している。政府は「非正規労働者の正規雇用化につながる」とメリットを強調するのに対し、労働界は「解雇されやすい正社員だ」として導入に反発。着地点を見いだすことは容易ではなさそうだ。
◆正社員の33%
限定正社員とは、勤務地や労働時間、職務が限られた正社員。パートなどの非正規労働者の多くが契約で雇用期間が決まっているのに対し、限定正社員は正社員と同様、原則定年まで務めることができる。正社員と非正規労働者の中間的な雇用形態というわけだ。
厚生労働省が平成23年に全国1987社を対象に行った調査によると、51・9%の企業が限定正社員制度を導入しており、正社員全体に占める割合は32・9%。職種別にみると、運輸業や郵便業、医療・福祉などの業務に多い。
メリットとしては、正社員のように会社の都合で転勤したり、長時間残業したりせずにすむため、仕事と家庭を両立させやすいことが挙げられる。非正規労働者に比べると賃金水準も高く、雇用も安定している。政府が今年6月に閣議決定した規制改革実施計画には「正規・非正規の二極化構造の是正」「ライフスタイルに応じた多様な生き方の創造」などの観点から限定正社員制度の普及を図ることが盛り込まれた。
◆連合会長「疑問だ」
一方で懸念もある。非正規労働者が限定正社員へ移行するのは歓迎すべきことだとしても、「正社員の限定正社員化」が起きないという保証はないからだ。
「正規雇用から(限定正社員に)落ちることはないのか。そういうことも想定しているのではないか、という危うさがある。あの種の制度を国の統一的な制度として作らなければならないのか非常に疑問だ」
連合の古賀伸明会長は今月24日の記者会見で改めて制度導入に懸念を示した。
さらに、限定正社員は、導入する企業の労働契約や就業規則に雇用ルールが明記されていないケースが多く、工場などの閉鎖により契約で決められた勤務地や職務がなくなったときの対応が不明確だ。現状では多くの企業が、配置転換で新たな職場を提供するという正社員と同じ人事対応をしているというが、制度化された場合は正社員に比べ解雇されやすくなることを懸念する声もある。
◆有識者で議論も…
厚労省は今年9月、限定正社員制度の労働条件など、導入の際に企業が留意すべき点を議論する有識者懇談会を発足させた。来年中にとりまとめる報告書を基に制度普及に乗り出したい考えだが、労働界が懸念する雇用ルールなどの問題にどう踏み込むかが焦点となる。
地域を限定して規制を緩和する「国家戦略特区」をめぐっては、労働界が反発した解雇ルール明確化は見送られたが、雇用政策の規制改革には「火種がたくさん残っている」(古賀氏)といえそうだ。(松本学)
産経新聞 10月29日(火)8時0分配信
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の成長戦略の一つである「限定正社員」制度をめぐる議論が本格化している。政府は「非正規労働者の正規雇用化につながる」とメリットを強調するのに対し、労働界は「解雇されやすい正社員だ」として導入に反発。着地点を見いだすことは容易ではなさそうだ。
◆正社員の33%
限定正社員とは、勤務地や労働時間、職務が限られた正社員。パートなどの非正規労働者の多くが契約で雇用期間が決まっているのに対し、限定正社員は正社員と同様、原則定年まで務めることができる。正社員と非正規労働者の中間的な雇用形態というわけだ。
厚生労働省が平成23年に全国1987社を対象に行った調査によると、51・9%の企業が限定正社員制度を導入しており、正社員全体に占める割合は32・9%。職種別にみると、運輸業や郵便業、医療・福祉などの業務に多い。
メリットとしては、正社員のように会社の都合で転勤したり、長時間残業したりせずにすむため、仕事と家庭を両立させやすいことが挙げられる。非正規労働者に比べると賃金水準も高く、雇用も安定している。政府が今年6月に閣議決定した規制改革実施計画には「正規・非正規の二極化構造の是正」「ライフスタイルに応じた多様な生き方の創造」などの観点から限定正社員制度の普及を図ることが盛り込まれた。
◆連合会長「疑問だ」
一方で懸念もある。非正規労働者が限定正社員へ移行するのは歓迎すべきことだとしても、「正社員の限定正社員化」が起きないという保証はないからだ。
「正規雇用から(限定正社員に)落ちることはないのか。そういうことも想定しているのではないか、という危うさがある。あの種の制度を国の統一的な制度として作らなければならないのか非常に疑問だ」
連合の古賀伸明会長は今月24日の記者会見で改めて制度導入に懸念を示した。
さらに、限定正社員は、導入する企業の労働契約や就業規則に雇用ルールが明記されていないケースが多く、工場などの閉鎖により契約で決められた勤務地や職務がなくなったときの対応が不明確だ。現状では多くの企業が、配置転換で新たな職場を提供するという正社員と同じ人事対応をしているというが、制度化された場合は正社員に比べ解雇されやすくなることを懸念する声もある。
◆有識者で議論も…
厚労省は今年9月、限定正社員制度の労働条件など、導入の際に企業が留意すべき点を議論する有識者懇談会を発足させた。来年中にとりまとめる報告書を基に制度普及に乗り出したい考えだが、労働界が懸念する雇用ルールなどの問題にどう踏み込むかが焦点となる。
地域を限定して規制を緩和する「国家戦略特区」をめぐっては、労働界が反発した解雇ルール明確化は見送られたが、雇用政策の規制改革には「火種がたくさん残っている」(古賀氏)といえそうだ。(松本学)
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