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黛信彦の時事ブログ

5大紙社説に見る、09年の憲法記念日

2009年05月04日 | 政治・政局
3日の憲法記念日、5大紙は社説で憲法論議した。
産経は9条改正を訴え、読売とともに憲法審査会の機能不全を咎めた。
日経は自衛隊の海外派遣の一般法制定を唱え、次の総選挙で決まる政権は、憲法にせよ、安全保障にせよ、最も重要な国政上の論点であるから、有権者に説明すべきと書いた。
朝日は9条・自衛隊派遣などの議論を避け、世界の転換期に「25条と向き合おう」とした。毎日は意味不明だ。

以下、各紙から抜粋
■朝日新聞(社説) 憲法記念日に―貧困、人権、平和を考える
「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」。憲法25条のこの規定は、連合国軍総司令部(GHQ)の草案にもなかったものだ。後に文相を務めた森戸辰男議員らの要求で加えられた。
右肩上がりの経済成長が続いていた間、国民はほとんど憲法25条を意識することなしに生きてきた。そんな幸福な時代が過ぎ、そこに正面から向き合わなければならない時がきたということなのだろう。

こんなしんどい時だからこそ、憲法の前文を思い起こしたい。「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
転機を迎えているのは日本だけではない。世界の戦後秩序そのものが大きく転換しようとしている。そんな中で、より確かな明日を展望するために、やはり日本と世界の大転換期に誕生した憲法はよりどころとなる。

■産経新聞【主張】憲法施行62年 脅威増大を見過ごすな 9条改正し国の安全を守れ
憲法施行から62年が経過した。その間、大規模な戦争に巻き込まれなかったことをすべて「平和憲法」の恩恵と考えるのは幻想にすぎない。

問題の根幹は、自衛隊を軍隊と認めず、国家の防衛を抑制してきたことにある。憲法9条がその限界を作っているのは明らかだ。確実な脅威の高まりに、憲法見直しを避けてはなるまい。自らの国を自分で守れず、国際社会の共同行動にも参加できない日本でよいのか、である。国民の生命と安全を守るためには憲法9条の改正こそ急務であると強調したい。

憲法問題の混迷を象徴しているのが、憲法改正のための国民投票法に基づき、一昨年8月に衆参両院に設置された憲法審査会の扱いだ。野党のサボタージュでいまだに始動できていない。
自民、民主両党などは、憲法見直し案をまとめ、それで国民の信を問うことが求められている。

■日本経済新聞(社説)日本国憲法を今日的視点で読み返そう(5/3)
 憲法記念日のたびに様々な角度から日本国憲法を考えてきた。ことしは現在の国際社会での日本の立場と憲法の関係に焦点を当てる。集団的自衛権をめぐる憲法解釈を見直し、そのうえで自衛隊の国際協力活動を包括的に規定した一般法の制定が要る。そんな結論になる。

(日本が)PKOなど国連ミッションに参加する自衛官は39人。世界で80位だ。「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」とする憲法を持ち、安保理の常任理事国を目指す国とは思えぬ数字である。安倍政権が検討し、福田政権が無視した集団的自衛権をめぐる解釈見直しは当然だろう。

 現在ある非現実的な制約を除去すれば、国際社会の安定のために日本が能力の範囲内で活動できる場は広がる。39人、80位という主要国のなかで最低の数字は、経済力では世界で2位を自負する国にとってはあまりに不釣り合いであり、返上を急ぎたい。

 秋までには衆院選挙がある。その結果、次の政権が決まる。憲法にせよ、安全保障にせよ、最も重要な国政上の論点である。各党とも考えを有権者に説明してほしい。それを聞く側は、62年前のきょう施行された憲法を当時ではなく、今日の視点で読み返してみよう。

■毎日新聞(社説)憲法記念日に考える もっと魅力的な日本に 軍事力の限界見据え
 日米同盟の維持には、日本の「集団的自衛権の行使」が不可欠という考え方を米国は鮮明にしている。ナイ教授も講演で「ミサイル防衛で日本に向かっているミサイルは撃墜するが、アメリカに向かうミサイルは黙って見送るというのではアメリカの世論が許さない」と述べている。日米同盟は難しい局面に差し掛かっている。
 
米国で「G2」論が台頭していることにも注目すべきだ。米中による世界経済運営論である。米国のアジアにおける2国間関係で優先順位ナンバーワンは日本から中国に移ったのではないか。北朝鮮が核とミサイル開発を手放そうとしない現状では、米国との同盟が日本の安全に不可欠なのは明らかだ。しかし、追随するだけでは日本は国際政治の脇役に追いやられ国益を守れない。
 
どこまで、日米同盟を拡張し強化していくのか、危険な任務も多い平和構築にどこまで踏み込んでいくのか、日本は自分の頭で考え国民的合意を形成しなくてはならない。
 その場合、ソフトパワーを重視し戦略的に位置づけるべきだ。

■読売新聞(社説)憲法記念日 審査会を早期に始動させよ
 2年前、憲法改正の手続きを定めた国民投票法が成立した。国民の手で憲法を改正するための画期的な法律である。
ところがその後、憲法改正論議は失速した。参院選後生まれた「ねじれ国会」は、与野党の不毛な対立を呼んだ。世界的な経済危機は、日本政治に何よりも、迅速果敢な対策を求めている。国会は、改正論議を、サボタージュし過ぎているのではないか。

与党は先月、衆院議院運営委員会に、規程案をようやく提示したが、野党は乗り気でない。
民主党は、規程案の審議入りを「強引だ」「憲法を政争の具とするもの」などと批判した。
これはおかしい。国民投票法は、自民、民主の両党案を合体して作成したものだ。当時、参院選をにらんで政略的観点から反対したのは民主党である。

審査会は、すでに2年を空費してしまった。18歳投票権に伴う関連法整備など積み残しの懸案も、検討を急ぐ必要がある。
与野党ともに、憲法審査会を早期に始動させるため、取り組みを強めるべきである。

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